腕の中で背中を預けて眠るハルオは昔から変わらなかった。簡単に宇宙人であるメトフィエスを信用するなと同胞である地球人から注意を受けていただろうに、そんなことは知らないと近くに寄ってきては無防備に背中を預けて穏やかな吐息をつく。
その信頼に応えたいと思うのと同時に、この少年が欲しいという欲求を抑えることができなくなった。メトフィエスにとって人間など取るに足らない存在だったはずなのに、ハルオと出会ったことで感情を知り、愛を知った。そして同時に、愛おしい相手を自分のものにしたいという独占欲も知ったのだ。
ハルオの身体を抱え直して膝の上に乗せる。さらりと流れた髪を指先で払い除けると現れた白いうなじに唇を寄せた。軽く吸い付いて舌で舐める。くすぐったいのか身をよじるハルオを抱き締めて首筋を強く吸えば、小さな赤い花びらが散って綺麗に残った。それを何度も繰り返すうちに眠っていたはずのハルオの声が漏れ始める。
まだ夢の中にいるような甘い声色に誘われるようにメトフィエスはそっとベッドへ押し倒した。横向きになっていた身体を仰向けにすると寝間着代わりにしているTシャツに手をかけてゆっくりと捲り上げる。露わになった胸に手を当てれば、とくとくと早い鼓動が伝わってきた。
胸の中心にある突起に触れるとぴくりと反応を示す。優しく撫でているうちにぷっくらと勃ち上がってきたそれを口に含むと、頭上からくぐもった声が聞こえた。
片方の乳首を舌先で転がしながらもう片方を親指で潰すように弄ぶ。口内に含んだほうには歯を立てて甘噛みし、強く吸い上げながら時折軽く噛んでやると徐々に硬くなっていく。口に含んでいるのとは逆側のそれも同じように刺激を与えて可愛がっているうちにハルオの腰が小さく揺れ始めた。
寝起き特有のぼんやりとした表情を浮かべていた顔は次第に紅潮していき、薄く開いた口から熱い吐息が零れる。緩慢な動きでシーツの上に投げ出されていた手が何かを探すように彷徨い始め、やがて目的の物を見つけたのかぎゅっと掴むとその手に力がこめられた。
――気持ちいい? ふと、そう問いかけられた気がした。
顔を覗き込むようにして視線を向けると熱に浮かされたような瞳とかち合う。頬に触れようと伸ばされた手を絡め取って掌にキスを落とすと、そのまま下肢へと導いてズボン越しに触れた。そこは既に張り詰めていて苦しげだ。
少しの間躊躇うようにそこに留まっていた手が意思を持って動かされる。布地の下で脈打つ陰茎の形を確かめるかのように撫でられ、形に沿って指先が這っていく。拙い動きだったがそれが逆に興奮を煽った。
下着ごと脱がせて性器に直接触れてやる。既に先端からは先走りが溢れており、上下に擦ってやるとくちゃくちゃと濡れた音が響いた。
――もっと……っ 切なげな声で求められてメトフィエスは思わず苦笑した。これはきっと夢の続きなのだ。メトフィエスが見ている都合の良い妄想に過ぎないのだろう。
だがそれでも良かった。たとえこれが夢でも、いつか醒めてしまうとしても今はこうしてハルオを感じたい。
メトフィエスはハルオの両足を大きく広げさせるとその間に割って入った。膝裏を押さえつけて秘所を曝け出す。固く閉ざされた蕾はまだ何も受け入れたことがなく、色素沈着のないピンク色をしていた。そこに指をあてがい、ゆっくりと中に押し入れる。、
潤滑油となるものがないので滑りが悪く、ぎちぎちと音を立てそうなほど狭いそこは侵入してきた異物を拒もうとする。痛みを感じているのかハルオの顔が苦痛で歪んでいた。
宥めるように前への愛撫を再開する。快感を与えるというよりは緊張を解すために竿の部分を握って強弱をつけて扱いていく。同時に後孔に入れた指も動かして少しずつ奥まで進めていった。ようやく人差し指が全て埋まる頃にはハルオは汗まみれになっていて、額に浮かぶ玉のような汗を拭ってやったメトフィエスはそこへ軽く唇を押し付けた。
根元まで入れた指を慎重に動かす。少しでも楽になるように前を弄って意識を逸らしてやりながら内壁をなぞるようにぐるりと円を描く。ある一点を掠めた時、ハルオの反応が変わった。それまでとは違う反応を見せた場所を重点的に攻め立てる。すると次第に内部が柔らかくなっていき、二本目の指が入っていった。
時間をかけて三本目が収まったところでゆっくりと引き抜く。ちゅぽんという淫猥な水音と共に引き抜かれたそれは赤く充血していて、ひくつく穴から透明な液体が流れ落ちた。
十分に慣らすことができたと判断したメトフィエスは己の前を寛げた。取り出した陰茎はすっかり上を向いており、血管が浮き出る程膨張している。それを目にしたハルオがごくりと喉を鳴らした。
――挿れてもいいかい? 再び問われてハルオはこくりと首を縦に振った。それを了承と受け取ったメトフィエスは陰茎の先端を宛がうと一気に貫いた。
メリッという肉の裂けるような感覚とともに激痛に襲われる。あまりの質量と圧迫感に呼吸をすることすらままならず、はくはくと口を動かして酸素を取り込もうとする。そんなハルオの様子に気付いたのか、メトフィエスが動きを止めて心配そうに見下ろしてきた。
――大丈夫? 労わるように髪を撫でられる。気遣ってくれるのは嬉しいが、中途半端な状態で放り出されるのも辛い。
――平気だから……続けてくれ。
途切れ途切れになりながらも伝えると、メトフィエスは再び腰を進め始めた。ゆっくりと確実に埋め込まれていき、やがて全てが収まりきった時にはお互い息も絶え絶えだった。
しばらく馴染ませるようにそのままの状態でじっとしていると結合部からじわりと熱が広がっていくのを感じる。それにつれて痛みも和らいできて、ようやく落ち着いてきたハルオはおずおずと口を開いた。
――動いて、いいぞ。
その言葉を待っていましたと言わんばかりに腰を揺らされ始める。最初はゆっくりとした抽送だったがすぐに速さが増して、肌のぶつかり合う乾いた音が部屋に響き渡るようになった。
――あっ、あぁっ、や、あんっ! 律動に合わせて声を上げる。揺さぶられているうちにだんだんと思考が霞んでいき、ただひたすら快楽を追い求めることしか考えられなくなる。
――ハルオ、ハルオ……っ 耳元で名前を呼ばれるたびに胸が高鳴る。メトフィエスの動きが激しくなるにつれ、限界が近づいてきた。
――メト……ッ絶頂を迎える寸前、ハルオは無意識のうちに名前を呼んだ。それに呼応するように最奥を突かれて目の前が真っ白になる。
腹の奥に熱いものが広がるのと同時に、ハルオもまた達していた。
***
翌朝、ハルオが目を覚ますと見慣れない天井が視界に入ってきた。一瞬どこにいるのか分からなくて混乱したが、すぐに昨日の出来事を思い出して飛び起きる。
慌てて隣を見るとそこには誰もいなかった。ベッドにも、床の上に置いてあったはずの布団の中にもいない。まさかあれは全て夢だったのかと絶望しかけたその時、部屋の扉が開いてメトフィエスが姿を現した。
ほっと安堵の息をつく。
メトフィエスはこちらを見て優しく微笑んだ。
おはよう、ハルオ。
メトフィエスはそう言ってハルオを抱き締めると触れるだけのキスをした。
今日は何をしようか。
メトフィエスに問いかけられてハルオは少し考えた後、そうだな、と答えた。
お前と一緒にいられたらそれで良い。
何とも抽象的な答えだったが、メトフィエスには伝わったようだ。嬉しそうな笑みを浮かべると再びキスをされた。今度は深いもので、舌を絡め取られて吸い上げられる。――好きだよ、ハルオ。
何度も繰り返されるキスの合間に囁かれる。
――愛している。
メトフィエスの言葉に嘘偽りはない。だがそれでもハルオは思うのだ。
果たして自分は本当にこの男のことを好きなのだろうか、と。
好きとか嫌いとか、そういう感情はよく分からない。
だがメトフィエスが傍にいると安心するし、求められれば応えたいと思う。
これが愛というものなのか、それとも別の何かなのか、今のハルオには判断できなかった。
だが、それでも。
――俺も、愛してる。
メトフィエスの背中に腕を回しながらハルオは心の中だけで呟いた。
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