ひさね
2024-01-06 23:26:47
1327文字
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秘密が齎すものについて

カキ誕生日ss。憐憫か驕りか。カキとマコトの関係性が少々。

「その、ええと」
 ぽつぽつと意味をなさない言葉を零しながらマコトが紙袋を差し出してくる。無地の袋には金のシールで青く、短いリボンが留められていた。
 今日にだけ贈られるものの、特別な包装を見るのは嫌いではなかった。一日の終わりがけに見られるのであれば、尚の事。
「有難う」
 差し出されたものを受け取れば、マコトは眉を下げてへなへなと笑う。彼は青年と言うよりも少年らしい人だった。
 名実揃うことはないのだろうと考える。
 処刑人という彼の伏せていた職を知ったとき、さらにその秘密に埋もれた事実に勘付いた。彼の些末な話を辿って、如何してもその職の年齢規定に引っかかると気がついてしまった。秘密を掘り起こした後ろめたさと同時に惨い事だ、と感じた。この憐憫を意識することなしにマコトと対面する事が全くできなくなった。
 秘密の存在を秘匿して断頭台に立つ彼がどんな人物なのか。秘密を覗いた自分には最早見ることは叶わない。
 それが惜しい、と思う。
「開けてみても良いだろうか」
「勿論」
 こくこくと頷くのを確認してから、紙袋の口を留めるセロハンテープを割く。がさりと手を入れればさらりとした感触がした。出して見れば、ハンカチだった。黒で細い格子柄だった。
 実用的で、何より器用な選択に彼らしくはないと思った。不平等な偏見が篭った所感である自覚はあった。
「おれの好みだ。大事に使わせて貰う」
「気に入ったんなら良かった」
 安堵からか、更に緩む表情を見つめる。そこに子供らしさを垣間見る。選択との微妙な不調和を再認識する。
 誰の助言があったのかを考えてから口を開く。
「ところで、これは誰かと選んだのだろうか」
「ああ。シオンに少し、手伝ってもらった」
 予想通りであったはずの名前に、動揺した。大概彼女への恋慕に毒されているのだと改めて感じる。
 シオンの名前を出したマコトはやや俯いて手をしきりに組み直す。大した事ではない仕草だったが、ふと自分の不安を口にする時の助走のようなものだとシオンから聞いていた事を思い出し、急速に意味を持つような気がした。
「その。余りプレゼントとか、選んだことなかったから。喜んで貰えるか、不安だった」
 彼女の言葉に確かに間違いはないようだった。シオンの高い観察力を特別一身に受ける彼の事を羨ましく思う、と同時に。
 マコトの仕草の意味を自分が一番に見つけたかった、と思った。
 重大な秘密を見た勢いなのか、憐憫の情を醸造した結果なのか。彼女が選ぶ人間への信頼故か。あるいは、秘密を暴いたことを彼に秘匿して優位に立ったつもりの己の驕り故なのか。
 如何いった感情かは分からないまま胸中が蟠る。
 だが、確かにそう思ったのは事実だった。
……改めて有難う。そこまで悩んで選択した物を嫌う筈がない。寧ろ時間を割いてもらえて光栄だ」
「急に小っ恥ずかしいこと言うなって。よく素面で……
 言われた言葉にはて、と首を傾げる。
 結局感じたことが全てなのだから、仕方がないのだと思う。
 ばりばりと後頭部を掻くマコトを見つめる。
 そういえば以前、全く同じ趣旨の言葉を言われたときも同じ仕草をしていた事を思い出した。