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しろくまたたくはくしゅんさん
2019-12-21 07:27:45
1571文字
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映画後勝デク小説 (ネタバレ有り)
手セックスが忘れられない勝の話
指先からまた恋をして
指が触れた。
あの暖かい島から帰ってきた。本州は本格的な冬の時期だ。さむい、さむいと身をふるわせながら、今日も今日とて演習な訳で。
「うわー、さっむい!」
一際ウゼェ声が聞こえた。ナード臭い声が聞こえた。振り向けばヤツは、あまりの寒さに手がかじかむのか、わざわざ手のサポーターを外し「はぁーっ」と湿る吐息をかけている。
その指先は真っ赤なまま変わらない。
かっちゃん
……
!
不意に聞き覚えのある声が頭の中に響く。聞き覚えっつーか、デクの声だ。苦しそうにもがき、俺に向かって紫に変色し、指先を紅く染めたデクの手。OFAを譲渡される前の記憶
……
らしい。その前後の記憶が曖昧で、思い出そうとしても霞みがかかる。
まあ、後で聞かされて相当怒り狂った。よくわからんが、怒りが腹の底から湧き出て、しかし上手く言語化できない。俺の力が未熟だと馬鹿にされた気がした?オールマイトの力を安売りされた?いや、表しようのない喪失感があった。かけがえのない何かを無くしたような、それに対して俺が責任を取らなければならないような──とにかく、腕が治癒した後思いっきり殴り「もう二度とすんじゃねーぞ!!」とクソナードに言い聞かせた。
デクは殴られた頬をなぜか嬉しそうにさすりつつ、「うん」と大きな目を細めて頷いた。本当にわかってるんか?もう一度殴ろうとした手は切島に遮られた。クソが!
その後、どういうわけかデクの指先が気になる。個性譲渡には遺伝子を混ぜるということを聞いていたから、あの場で俺は自分の指先の傷とデクの指先の傷を合わせた、ということになる。ぶる、と嫌悪が背中から脳天を突き抜けた。
「今日も寒いね、かっちゃん」
その震えを寒いからだと捉えたらしいデクが近寄ってきた。まだ赤い指先を思わず掴みたくなるような衝動に、唸る。
「うるせぇ!近寄んな!!」
ばっ、と距離を取る。なにを考えた?俺は今、なにを考えた?
「班わけするぞ、みんなこっちへ!」
クソ眼鏡の一声でデクの視線は俺からずれていった。駆ける足、全員がわいのわいのいう間も、手袋に包まれていないデクの指にばかりを見ていた。
「いたっ」
その日の夜だ。
夕食後のキッチンで包丁を扱っていたらしいナードが小さく悲鳴を上げた。リビングではTVが流れており、笑い声に混じってその小さな悲鳴は掻き消されたらしい。俺の耳にしか届かなかった。
包丁で手を切ったのか、不器用なヤツ。と視線を向ければ、デクの人差し指の先から紅が滴っていた。既視感と奇妙な飢えに、体が揺さぶられた。
と、とつ、と足が進む。デクが俺に気づき、「あっ、かっちゃん、できれば後ろの救急箱とって欲しいんだけど──」と言葉にしているのが耳を通り抜けた。
手を伸ばす。掴まれようとした指先が、ゆっくりと逃げた。追いかけて、掴んで、それから血の流れる指先と、指先を絡める。水よりも少しだけぬるつく体液。何度もさすった指の腹が、同じ色に染まっていく。
「かっちゃ、っ、ぁ、その
……
もう、譲渡はしないよ?」
目の前のそばかす顔が困り、耳の端を赤くさせていた。恍惚から覚めた俺は、ぎゅっとデクの指の根本を掴み流水にかけ、救急箱から絆創膏を取り出し傷口を適切に処理した。
「あ、ありがとう
……
」
ぽかんとしているデクから逃げるようにしてキッチンからリビングへ、リビングからエレベーターへ、エレベーターから部屋へ、扉を閉めてそこへずるずると床へ崩れた。
なんだ、これは。
どくどくと血潮が熱く上下左右狂うように蠢き、ふと立ち昇る鉄の匂いに思わず鼻を寄せる。クソナードの体液。触れた温度の名残。全てが残る指先を一瞬でも愛おしい、と思う思考回路を、誰でもいいから爆散してくれ!
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