しろくまたたくはくしゅんさん
2018-10-16 21:08:09
1699文字
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新世界より②

ktdkかもしれない。※死ネタです。

祈りを込めて。

 爆豪勝己が死んだのは、2年も前のことだ。

 雄英高校ヒーロー科を卒業した者の多くは進学を選ばず、そのままヒーロー事務所に所属する。サイドキックとして下積みを得た後、自分の事務所を開設し顔として活躍、あるいはヒーローチームを組んでもいいだろう。一時的な契約としてチームアップすることもある。これはセオリーであり、勿論例外も存在する。
 その例外が緑谷出久であった。彼は引く手数多を蹴り、卒業後「修行に出る」とそのまま日本を発った。アメリカに渡りしばらくフリーで活動していたのはよく知られている。高校時代から有名であった彼の動向は注目され、向こうでニュースになればヒーローニュースでも取り上げられる。日本のファンは「いつ帰ってくるんだろう」と勝手に期待していた。きっと彼は強くなって日本に平和をもたらしてくれるに違いない──しかし彼は1年ほどアメリカで活動した後、次はロシアに渡った。半年後には中国、半年後にオーストラリア、次は中東地域、そしてアフリカ大陸へ。中東からアフリカにかけてはほとんど情報はなく、コアなヒーローファンが記録した動画はあるがニュースになるほどはっきりとしたものではないので徐々に日本国民のそうした勝手たる期待は薄れていった。
 しかし「ヒーローデク、ついに帰国!」とヒーローちゃんねる掲示板でスレッドが立ち上がるや否や、与太話に尾ひれはひれが付き、再び国民の期待が高まった頃、公式SNSアカウントにて「帰国します」と正式発表があった。彼が帰るのは実に3年半ぶり(正式には、オーストラリアに入る際一度ビザが下りなかったことがあったため、数日日本に帰国していたことはあったのだが)のことである。
 出久が空港に降り立った瞬間、「おかえり! ヒーローデク!!」と横断幕が掲げられ、警備員を導入し人垣を抑えるようにして帰国の道が作られていた。フラッシュが眼球を焼き尽くす前に、彼は迎えの車に乗り込んだ。
「すごい熱烈な歓迎っぷりだ!」
「そりゃな。お前結構期待されてたのに、卒業してすぐメジャーに行っちまったろ? んでいつまで経っても帰ってこないしさ。俺たちもお前が帰って来てくれてうれしいぜ!」
 迎えに来ていたのは出久のかつての級友である瀬呂範太だ。今日たまたま休みだから、という理由で出久に付き合っている。俺たち、というのは雄英高校で3年間を共にした仲間をはじめとする、日本に居る彼の友人たちも含めている。既にメッセージで帰国を通知しているので、その喜び様は知っていたが、今日からとうとう間近で会うことができる。出久は考えるだけでうれしくなった。今日の夜も居酒屋で彼のお帰り会が開かれる予定だ。
 追いかけてくる報道陣とカーレースをする訳にもいかず、のろのろと車を走らせた先は雄英高校だ。二人は既に校長の根津に許可を取っているため、門を車ごと抜けた。報道陣は許可が無ければその先どうなるかを知っている。数年前セキュリティが一層強化された雄英高校の門に近づこうものなら、問答無用で追い出され取材用機材も謎のテクノロジーで破壊されてしまう。帰国の挨拶のついでに雄英セキュリティで撒くなんて酷い、と女性キャスターが報道裏でひとりごちた。
「やぁよく来たね! 紅茶をいれよう!」
 根津は校長室に来た出久を見て手を広げた。出久はそのまま根津を抱きしめるとそのまま無意識に頬ずりする。「今日の毛並みは最高さ!」と根津が朗らかに笑う。続いて「まさか抱きしめられるとは! 向こうの挨拶が染み付いたんだね!」と頷いた。
「そういえば瀬呂君も来ていたはずでは?」
「彼は授業の様子を見に行きました」
 車を駐車場に停めた後、瀬呂は出久と分かれグラウンドβの方にふらふらと歩いて行った。瀬呂は1年前特別講師として呼ばれてから、こうして時折授業の様子を見に来ているというのを、出久は車の中での会話で知った。
 出久は根津としばらく向こうでの活動の話をしていたが、紅茶を一杯飲み終わるころふと窓の外を見つめて、また出久に向きなおった根津が告げる。

「八木君のお墓には、いつ参りに行くんだい?」