しろくまたたくはくしゅんさん
2018-10-15 22:02:17
1252文字
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新世界より①

勝デクだと思っていればいいよ。※死ネタ。
見切り発車だ~い。タイトルもカッコカリです。エッチはしません。
愛をこめて。

 死者が生き返ることなど有り得ない。だが翡翠色の英雄がその敵の目の前に立った時、彼の背後に出た選択に、嗚呼、と天を仰いだのだ。

 『■■■■ OR 世界』

 雲一つない晴天であった。目の前の敵がくったなく笑う。彼にはその選択肢は見えていない。その目に映るのは、翡翠のヒーローの周りに倒れ逝ったヒーローたちである。彼らの多くは、己の命か愛する者の命か、どちらかの死を迫られたのだ。そして自己犠牲精神のまま、自らの命を落としていった。残るは平和の象徴たる英雄ただ一人。もう一度言う。敵名「オア・キリング」その人には、背後の選択肢が見えていない。そういう個性なのだ。もっと言うなれば、現在上空でバラバラと旋回しているTV局のカメラはその文字をはっきりと映し出していた。日本全国放送? いやその敵は国際指名手配犯である。故に世界各所に中継されていた。既にネット回線はパンクしており、正常な回線は緊急国際電話くらいである。米国大統領は既にWORNINGと書かれたボタンを持ち出し、日本に向けて軌道計算を始めていた。そうしているうちに、宙に浮いていた「OR」の文字が消えて、「30」「29」「28」とカウントダウンが始まった。
 ヒーローの二の腕に装着している連絡機器が震える。気づいた彼は敵の目前というにも関わらず機器を取り出す。網膜認証で開かれた画面には、彼の高校時代の級友たちが送ったメッセージだった。
「どうゥした。別れの言ヴぁでも来でるかァあ?」
 酷い訛りのロシア語であった。しかし優秀な発明家が開発した翻訳つきイヤフォンを通った音声は正しく言語化され、英雄の耳に届く。彼は頷き、スーツと同じ色味を持った瞳を歪ませた。
「うん。皆が僕にお別れする言葉だ……
 ──残り20秒
 その言葉も優秀な──割愛するが、敵に正確なロシア語で伝えられた。敵は肩を揺らし、愉快だと笑い始める。やはり己の個性は無敵だ。平和の象徴が屈するまであと数秒もあるまい。伏せられていた翠の目と口が開く。敵はその口から目の前に佇むヒーローが己の名前を叫ぶ様子を今か今かと待ちわびた。世界中の人々もまた、信じていた。だってTVの中に映るその人は、英雄で、ヒーローで、今まで幾千と人々を救ってきた、「真の」英雄である。子ども好きで、日本ではおろか世界のヒーローランキングでも1位を取る、平和の主なのである。だから彼の口から出るのは自分たちだと、そう信じていた。そもそもこれは戦いになっていない。だって、選択肢の片方は既に「死んでいる」のだから。
「考えたことは無かった?」
「ぁン?」
「貴方の個性は選択しなかった方を殺す個性じゃない」
 一歩、一歩とヒーローは進んでいく。──残り10秒。
「選んだ方を、生かす個性だ……って」
 彼は息を吸い込み、その名を呼んだ。ずいぶん懐かしく、それでも毎日胸の内側で呼び続けた名前だ。──残り3秒。

「かっちゃん」

   ◆ ◆ ◆

 爆豪勝己が死んだのは、2年も前のことだ。