Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
しろくまたたくはくしゅんさん
2017-02-26 22:41:23
2150文字
Public
Clear cache
「身から出た嘘、 」
「 」
http://privatter.net/p/2219161の岩融視点。トゥルーエンド
狐は、人を騙す。
たった今、満場一致でひとつの案が通された。主はこのままでは死んでしまう。それと同時にこの本丸は無くなる。産まれくる赤子と、壊れゆく本丸を救おう、と言い出したのは誰だったか。噂で誰かがささやいていた。この本丸は無くなってしまう。なぜ。だって主が死んでしまうから。そうか。死ぬのか。まるで決定事項のような予想。待て、誰からそんな話が出た?
「それでは。子は、この小狐が」
狐は、子育てがうまい。
これは野生の狐のことであるので、この小狐丸という刀剣に当てはまるかはわからないが。産まれてくる子は、神性を持って生まれてくる。吸わせる気は、父である三日月に近ければ近いほどいい。そうなると必然的に三条派がその気を、養分としての役目を担うこととなろう。だのに、小狐丸は必要なしと我らを一蹴した。これは本丸を守るための「影の世界」に関係する。一度構築されれば、解除はそう簡単ではない。解除したとて、立て続けに構築するのも難しい。であれば構築できるのは一度きり。その中に残るのは赤子と養分たる小狐丸のみ。
「それで、よいのか」
「ええ。この身に代えても。ぬしさまとそう約束したので」
笑う顔は嘘を隠すためか。真を受け入れた強さか。俺にはどちらとも分からぬ。分からぬのでどちらともとれる。しかし皆が受け入れるのであれば、後者として認める他あるまい。
狐は、魂を分けることができる。
今、俺の目の前で小狐丸は消え去った。新しい主は立派に育ち、最初の役目として刀解という責務を果たした。和紙に散らばった茶色い粉。小狐丸だったもの。これでは素材に還るまい、焼却してしまおう。和紙を折りたたもうとした時、主が「ちょっと待ってくれ」とすぐそこの棚を探り出した。そして取り出した小さな物いれに、小狐丸の欠片を収めた。砂のような、中にはぶつぶつとした塊もあるそれを、大事に仕舞う。取っておいてなにになるでもあるまい、と言ったところでその桐箱を離さないのは分かっておった。残りを薪と一緒に燃やせば、その錆も焦げも一緒に、空へと昇っていく。ま、大部分は地に還るであろうが。泣いて清々したこともあってか、別れはあっけなく終わるものだ。どうせまた新しいのがやってくる。それに前の記憶がなくとも、幾ばか主の心が軽くなるであろう。
狐は、人を化かす。
新しい主になってしばらく。主の元に時の政府から二振りの刀が贈呈されたのには驚いた。一振りは三日月宗近。もう一振りは、小狐丸。主にとっては複雑な心になるかと思いきや、新しく本丸に加わる刀剣に関しては記憶が更であるのだ。それを主も十分に理解している。していて、二振りに以前のことを話した。いや、この奇妙な関係を話しておかねば、本丸でややこしくなることは必須。こうして主から話を聞いた三日月と小狐丸は、それぞれ狐につままれたような顔をしている。ともかく失われた二振りが戻ってきたのはよいことだ。えんやこら、祝えや、踊れや、飲めや、歌えや。
三日月も、小狐丸も、しこたま酒を飲まされた。主は二人に挟まれて幸せそうに笑い、酒を飲んで泣き上戸になり、そのままぐうと寝てしまった。
「ぬしさま、こんなところで寝ては身に障ります」
「ん、ぐぅ・・・・・・すぅー」
「今日はこれでお開きにしましょうか。私はぬしさまを部屋に運びます」
小狐丸は酒に強い。主をお姫様抱っこすると、心配ない足取りで席を立ち出ていった。
「おや」
と、三日月がその後に小狐丸の席から何か拾い上げた。黒い布。おそらく、小狐丸の髪結であろう。追いかけようとした三日月の足取りは、だいぶん危なっかしい。
「ああー、よいよい。俺が持って行こう」
「はは、すまんな。小狐丸によろしく言っといてくれ」
そして、主の部屋に向かう。どうせ主はつぶれて寝ているのだが、起こさずにこっそりと歩く。
そして、主の部屋を伺い、声をあげそうになった。いや、平常心でみればなんともないのだが、展開についていけず驚いたのだ。
「小狐丸!?」
小さな声で呼びかけると、もぞりと白い髪が揺れる。
「岩融ですか。ふふふ、困りましたね。ぬしさまが離してくれず、このような形に」
考えてみれば、その行動は必然だったのかもしれない。我々はなにが起こったかすべてを把握していないが、主によると、眠るときは必ず小狐丸と添い寝していたという。懐かしくなって、こうして酔ったことで甘えにでているのかもしれない。
「髪紐を忘れておったぞ。縛ろうか」
ひらひらとたなびかせれば、小狐丸はこちらを見ることなく、こう答えた。
「いえ、そこの机に置いてくだされ。
――
どうせ朝にはぬしさまに乱されるので」
「がはは、お主も難儀よ、の・・・・・・」
どくり、と心臓が嫌な音を経てた。
そういえば、聞いたことがある。
天狐は、千里眼を持っている。
「まさか・・・・・・な」
「そのまさかだったら、どうします?」
小狐丸は、手で狐を作りこちらに向けた。その目は、その目は、「遊んで満足した」という目だ。
もう一つ、俺は大事なことを思い出した。
狐は、人を騙す。
「身から出た嘘、から出たまこと」
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内