sevendays23
2024-01-06 15:51:00
4908文字
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こんなことはなかった話

おでっせのキャラがでてますが、
・このキャラは子供っぽい
・記憶をキューブにしたものを読めてその世界に連れてける
・家族が大事
だけ知っていただけていれば読めます

大きなキューブを一つ見つけた。けれど、なぜかとても嫌な予感がして仕方がなかった。

「どうしたの、サンジ?なんでこんなところに呼び出したの?ルフィたちは?」

だから、黒髪おかっぱの少女リムに質問攻めにされながら、キューブのところまで彼女を招いた。

「なんでこれがここに?それにキューブの色がヘン……

「見たことねぇキューブか?」

「うん。こんな色のみたことない」

どうやら、見たことがない初めてのキューブのようだ。

「サンジ、これどうするの?」

「分からねぇ。けど、どこの歴史か知りてぇ。わかりそうか?」

「わかると思うけど……ルフィたちには言わないの?」

「リムちゃんも知ってるだろ。メモリアの冒険は、いいことばかりじゃねぇって。だから、聞いてから知らせ方を判断する」

その言葉を放ると、それもそうねと固まってしまった。まだ子供だからか、はたまた。そのあたりの順応は素直で早い。

「で、どこなんだ」

「ええと、ホールケーキアイランドってところ!おいしそうな名前ね!サンジが作ってくれるケーキみたい!」

「!」

キラキラした顔で言われて、料理人は固まってしまった。嫌な予感が、的中した。頭の中で、騒ぐ。何かが、騒ぐ。

「リム、ちゃん」

「どうしたの、サンジ……!?」

料理人は決意した顔で彼女の肩を掴んだ。驚いた顔。記憶を読む暇すら、与えない。

「一人がメモリアに行ってる間は、誰もメモリアに行けねぇよな!」

「え、えぇ。私がついていっていないもの」

「じゃあ、今すぐメモリアに連れて行ってくれ!おれ一人だけを!」

料理人は強く言った。リムはその青い目に困惑した顔を浮かべる。

「ど、どうして?」

「これは、おれだけの歴史なんだ。本当はリムちゃんも巻き込みたくねぇくらい、誰も巻き込んじゃいけねぇ。おれと、おれの………

ぐっと唇をかみしめて、ポツリと付け足した。

「家族の、歴史」

……家族」

ぼんやりとアディオの顔が浮かんだ。料理人は真剣な顔で言った。

「サンジは、ひとりで、家族に、会いたいの?」

「あぁ……、ひとりで、ぜったいに、ひとりで!!」

純粋無垢な少女には、言えなかった。その家族がどれだけ、酷いかを。どれだけ、辛かったかを。だから、そこだけ繰り返して言った。

「わかった」

リムはその想いをどう受け取ったのだろうか。真剣な顔をして頷いた。ゆっくりとキューブに触れる。メモリアの世界に、彼を導く。彼は唇をぎゅうと噛んで、踏み出した。

――――――――――

『危ないから、ここにいろ。倒し終わるまで、絶対に出てこないでくれ。絶対に!』

『サ、サンジ!でも……

『家族のことなんだ。頼む……頼むよ』

しっかりと、口止めをした。少女が『家族』というワードに弱いのを知って、わざと言っで、そこに押し留めた。
この世界に入った瞬間、何故か目的ははっきりと分かっていた。

『この世界の敵は、一人。もうわかってるから』

猫車が配備されている。そして、部屋ではきっと、出掛けの準備をしているはずだ。彼のターゲット。
彼を、死なせないこと。彼を、止めること。だから、走った。服を盗んで、着替えて、走った。
わざわざあの時と同じ服に、着替えて、走った。

「てめぇのことはいちばんおれがわかってる」

戸を開けて、ギロリと睨む。記憶世界にいる、目の前の敵を。
もとい、目の前の記憶世界の自分を。

「おま、え?おれ……じゃねぇか」

予想通り、まだ記憶世界の彼は部屋を出る直前だった。約束の場所に行くまでに押し止めることができるタイミングで、よかった。

「お前がこれからやろうとしてることは、絶対に許されねぇことに繋がる」

「なに、いって」

「間抜けなお前は最大の罪を犯すことになる」

戸惑ううちに、料理人は目の前の自分を煽った。すべて知っている。頬の下が惨めに傷ついていることも、手につけられた枷が偽物なことも。あのときはどうしようもなかったことも。
けれど、けれども。

……っ、お前に、何が!」

「だから、おれが」

料理人が彼自身が許せなかった。
これは、彼が、彼自身のあのときの決断を罰する絶好の機会。

「おれ!自身が!!!」

罪人を焦がす赤い炎が足に点った。
周りになにか防壁のようなものが現れる。記憶世界の戦いはなぜか自分たちと敵以外を干渉できなくさせてくれる。
とても都合がいい能力だった。

「お前を罰して、止めてやるよ!!」

目の前の間抜けな自分を、完膚なきまでに罰するにはちょうどいい能力だった。

「何が罰する、だ」

眼の前の自分もまた、脚を構えた。
知っている。退けない。彼もまた。

「おれは……!!」

だから、同時に駆け出す。燃える足と足がぶつかり合う。料理人と記憶世界の彼。見た目は同じ。実力は。

「がは!!」

料理人が勝っていた。容赦なく記憶世界の彼を弾き飛ばすと、さらに脚を捻る。

「そのままで居てくれると助かる」

「っ、あ!」

「そした、ら」

倒れ込んだ体。腹から容赦なく炎の脚を見舞う。かはり、と血を吐いた、記憶世界の自分の肢体。

「すぐに、終わるからよ!」

だが、その体は二撃三撃食らうことなく、すり抜けた。カウンターの一撃を見舞ってくる。防げたはずの一撃。しかし、腹から吹き飛ばされた。

「っ、う」

「だれが、このまま、おわら、せるか!」

感情をむき出しにした獣のように息を切らしながら、記憶世界の彼は料理人と対峙してくる。

「おれ、は……!!!」

「っ!!!だま、れ!!」

料理人は、明らかに金髪の下に脆い顔を隠していた。彼は、優しいコックだ。本当は記憶世界の自分自身を傷つけたくなんか無かっただろう。
けれど、このままだと、仲間が傷ついてしまうから。この世界の船長が、傷ついてしまうから。
それなら、自分自身を止めなければならなかった。

「き、……ろ」

足と足とがぶつかり合う。
ここは、記憶世界だ。捻じ曲げられた記憶世界の彼の罪を捌いても、決して罪は消えないし止まらないのに。

……き、えろ」

感情と痛みをごまかす荒れた息とともに足技を振るう、振るう。赤マントがバサバサと揺れる。
このあと何をするか知っているからこそ。崩れ落ちてなお立ち上がる自分自身を、罰すために。

「お前、が」

ふらふらと血まみれで立ち上がり、足技を精一杯振るい返してくる、記憶世界の彼。仲間のために、大事な養父のために、覚悟を邪魔する自分を追い払うために。

「きえ、ろぉ!!!」

どちらも、自分以外の誰もが傷つかないようにするために。

「やめろ!」

だが、両足が受け止められた。じゅうっと音を立てるゴムの手。入ってきた邪魔。
きっと真剣な顔。荒い息。

「る」

「ふぃ」

唖然とした顔2つ。どちらも、何故と言わんばかりの顔。だが、それをきっと睨み返し、船長はその力を持って彼の足を地に下ろした。

「なんで……?」

「そんなことはどうでもいいだろ!!」

声がシンクロした。それを同時に、彼は言葉で薙ぎ払った。

「なんで!サンジとサンジが戦わなきゃいけねぇんだ!」

この船長は、本物の船長だとわかった。つまり、記憶世界の住人でない船長だ。こんなところに記憶世界の住人の船長がいるわけないから。
だから、全て知っている。

「わかってんだろ!!ルフィ!!」

……なんで」

「こいつは!いや!おれは!!」

まだ慄く記憶世界の彼を無視し、料理人は金髪を振り乱しながら言った。

「おまえを、このあと、きずつけ、るんだ!」

「!」

「おれの犠牲程度じゃ、誰も助からねぇのに!!そんな事も知らねぇで!」

「っ!!」

「だったら!!おれは、おれの、することを見過ごせ、ねぇし、みすごしちゃ、いけねぇ!!」

料理人は、ぐっと足に力を込めた。記憶世界の彼の顔が脆く揺らいだ気がしたが、どうでもよかった。

「だか、ら、どけ、よ!」

「っ」

「おれ、に罰を、あたえ……

「ちがうだろ!!!」

船長は呆然と立ち尽くす記憶世界の彼を守るように立ちはだかった。料理人は怒りと困惑が入り混じった顔を浮かべるも、船長は真正面から言葉を伝えた。

「サンジをバカにすんな!!!それに!!」

彼はいつだって真っ直ぐだ。だから、目を離せなくなる。

「おれは、決闘を受けたんだ!!」

……!!」

「だから!!」

料理人はピタと足を止めることしかできない。ここで船長を蹴ってしまっては、また同じことになる。それに、

「お前に罪なんかねぇ!!!」

船長の真っ直ぐな瞳には、何一つ敵わないからだ。

「なに、かってに、はなし、すすめてんだ」

だが、料理人が揺らいだ隙に、今度は。

「ほんもの、じゃねぇんだろ。いまなら、だれも、いねぇ、から」

ふらりと立ち上がった、記憶世界の彼。

「いますぐ、かえ、れ!!」

必死にがなるように、言った。そろそろ行かないと怪しまれると、焦りに満ち溢れた顔で言った。

……サンジ」

船長はくるりと振り返った。息を荒げ、ぼろぼろな、記憶世界の彼の方を向いて、静かにいった。

「おれたちは、帰るけど」

「な……

「ここのおれたちは、諦めねぇからな!」

「おい、る……

「絶対に、絶対に!!諦めねぇからな!」

船長は料理人をひょいと抱えて、消えた。残された記憶世界の料理人は固まる。まるで、夢でも見ていたように、固まる。

「くそっ……なんだったんだ」

傷口が消えていく。夢幻と消えていく。
けれど記憶世界の彼から、ズキズキと襲い来る心の痛みは消えなかった。

――――――――――

「おい、どうすんだ!」

「リムが言ってたんだ。このキューブは、この世界の誰かと会うだけで出れるキューブなんだって!」

「なんでそれが……

「知らねぇ!でも!帰れるようになってるからいいだろ!!」

……っ」

船長の正論に、料理人は押し黙った。彼をぎゅっと肩に抱えて降ろさないまま、リムのところに連れて行く。

「サンジ」

「何だよ……

「何回も言うけど、ここの世界のお前も、ここの世界のおれたちが助けるからな」

……っ」

「だから、そんな顔すんな」

彼の顔は、ぐしゃぐしゃに歪んでいた。頭の中に、これから記憶世界の彼が起こすことが巡っている。彼が船長を痛めつけ、航海士を怯えさせ、闇の中に落ちていく。
けれど、この世界の彼も、自分もきっと最後には。

「だいじょうぶ!!」

この光に、救われることは、もうわかっていた。
だから、少しこぼれた熱いものを拭いて、小さな声で言うのだった。

……ありがとう」

―――――――――

「サンジ、家族に会えた?」

「あぁ……会えた。ありがとうな」

「ううん、よかった!」

リムはニッコリと笑った。島に戻ってきた後、あの不思議な色のキューブは消えた。いや、彼らの体に戻ったと言うべきだろうか。

「にしても……なんであいつは入ってこれたんだ?」

「それが聞いてよ!一緒にメモリアに入る時、ルフィが私の肩掴んでたの!!」

「はぁ??」

「サンジそれ聞く前に言っちゃうんだもん!怖かった!!無理やりメモリアにゴムの体ねじ込んで入ってくるルフィ!」

「うるせぇな!!あぁいうときは二人でいっちゃだめなんだ!!おれがお前ら助けれねぇだろ!!」

「何よ!なんかあったら私だって!!」

「だとしてもダメなんだ!!!」

船長はふくれっ面でぎゃーぎゃーと怒鳴り返した。リムもギャーギャーと怒鳴り返す。子どもと子どもの喧嘩。先程の大人びた船長の姿はどこへいったのだろうか。

……ったく」

ぱくりと煙草をくわえて、火を点ける。ほうっと煙を吐き出して、料理人は二人の子どものような喧嘩を見守るのだった。