呪いを掛けられた。呪いを掛けた方に、深い意図などない。面白半分か、試してみようという気持ちだったのだろう。しかしその作法は正しかった。正しかったせいで、本当に呪いがかかってしまったのだ。
しかも掛けた人間には解き方がわからないときている。理不尽だ。
呪い返しをして保身に走ってもいいのだが、それでは死者が少なくとも一人は出てしまう。だから私は根本的な解決をするために、密林の奥に向かった。
呪いを掛けた側にも掛けられた側にもどうしようもないというのなら、別の手段を取るしかない。専門家に助けを求めるのだ。人里離れた山奥に賢女がいるという。しかし訪ねて行った私は予想外のものに出迎えられた。
庭付きの豪邸である。そこには犬が寝そべっていて、私が訪ねて行くと鉄柵越しに威嚇の声を上げた。
賢女は白い髪の毛を結い上げて、エキゾチックな柄の組み紐の髪留めで飾っていた。海外旅行にいったときにお土産で買っただけで、特に呪術的な意味合いはないという。
「来るならアポイントメントを取ってもらわないと困る」
賢女はパイプでいい匂いのする葉をふかしながら、そう言った。本来ならば飛び入りは受け付けないが、遠路はるばるきてくれたのならこちらもそれに応えなければ、失礼だろう。
そういう理由で彼女は私を、リビングに案内してくれた。
リビング一つで、私の家よりも広い。もしこの家を見たら、きっと羨んで、私に呪いを掛けた人間も彼女の方に呪いを掛けたのだろう。最新の家電を揃えて、不自由のなさそうな近代的な家だ。
「信頼できるのかって顔だね」
唇の端を持ち上げてニヒルに笑いながら、賢女はいう。
「心配しなくていい。偽物ならこんな贅沢な暮らしはできないからね。人を恨む人のおかげで、私は休暇のたびに海外旅行に行く余裕があるし、家も広くなった。助かっているよ」
つまり実力に見合うだけの、対価を求められるということなのでは。
私は報酬の金額に怯えながら、呪いの話を切り出した。
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