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そら
2018-03-07 23:32:02
1687文字
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【刀剣乱舞】カウントダウン【加州清光】
季節感のない本丸も三周年を迎えようとしていた。近侍である清光は……。
この本丸には季節感がない。
いつでも緑が茂っていて、池には鯉が泳いでいる。
変わり映えのない景色の中に、清光も含まれていた。
初めて顕現してから、そろそろ三年になろうとしていた。
その時から、ずっと定位置にいる。
初期刀にして近侍。
清光より優れた刀剣がいても、近侍の任から解かれることはなかった。
理由は知らない。
そもそも、初期刀として選ばれた理由も分からない。
どんな答えが返ってくるか、怖くて訊けなかった。
特別扱いされている。
それだけで充分、だった。
清光は必要最低限しか物がない部屋に日めくりを飾った。
「これは?」
審神者は尋ねた。
「もうすぐ就任三周年!
俺と主が出会いまで十日間をカウントダウンしようと思って。
作ってみました」
清光は笑顔を浮かべる。
審神者は不思議そうに飾りを見上げた。
「加州が作ったの?」
「毎日、めくってね」
清光は言った。
本丸に訪れたささやかな変化だった。
審神者は律儀にも、毎日、日めくりをめくってくれている。
近侍として、部屋に入ると日付がどんどん迫ってくる。
人の子の成長は早い。
頼りげないのは変わらないが、女性らしい丸みを帯びた曲線が加わってきた。
清光の外見は変わらないというのに、審神者の姿かたちは変わっていく。
いつかくる別れの予行演習をしているようだ。
日めくりを見上げた清光は思った。
付喪神として過ごした三年は短かった。
毎日、発見をくりかえした一年目。
毎日、充実感を味わった二年目。
これからやってくる三年目はどんな驚きをもたらしてくれるだろうか。
「主。おはよう。
開けるよ」
閉じられた障子に手をかける。
寝巻き姿の主に驚き、あわてて閉めた。
「ごめん、着替え中だった?
朝食持ってきたから、置いておくね」
早口で言う。
清光は逸る鼓動を落ち着かせようとしたが無理だった。
シルエットが目に灼きついて、頭から離れない。
「加州」
審神者が呼ぶ。
「これ、加州が書いてくれたの?」
内側から障子が開かれる。
あと四日という半紙を手にした審神者が顔を出す。
「そうだけど、変なところあった?」
一昨年も、去年も、作ったものだ。
毎日が記念日のような本丸の中でも、特別な日だった。
「赤くなったから、本当にもうすぐなのね」
「え?」
清光は顔に手を当てる。
だが、審神者が言っているのは違うことだとすぐに分かった。
日めくりの数字が赤くなったことを言っているのだ。
今日は調子が狂う日だと思った。
「ありがとう」
審神者は言った。
白い面に、うっすらと笑顔らしきものが浮かぶ。
「こっちこそ。
選んでくれてありがとう」
清光は真っ直ぐ伝わるといいなと願いながら言った。
「大好きよ。
私だけの初期刀」
白い手が伸びてきて、清光の頬をそっとなでる。
まるで春風が吹いてきたようで、心の中の桜が散る。
「うん」
言葉が上手く使えなかった時のように、清光は硬直した。
これでは顕現したばかりの刀たちを笑えない。
心というのは本当に不自由なものだ。
身体を支配して、とんでもない影響を与える。
就任日までに平気になっておかない、と。
清光は大きく息を吸って、吐き出した。
季節感のない本丸にも、わずかずつ変化があるようだ。
離れていった手が恋しくなりながら、清光は主を見つめる。
黒い瞳は、三年前よりも強くなっていた。
「食べ終わる頃に、お盆を下げにくるね」
と言い訳のように朝食の載ったお盆を押しつけると清光は来た道を引き返す。
障子がパタンと閉じられる音を聞いて、ためいきをついた。
蕾だった少女も、華やかな年頃になった。
清光は時間が流れ去っていくものだということを再認識した。
変わっていく審神者をいつまで見ていられるのだろうか。
時間遡行軍との決着がつくのが先だろうか。
それとも、清光が折れるのが先だろうか。
もう一つの可能性は考えないようにした。
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