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ひろか
2022-10-01 23:42:29
2474文字
Public
観劇録
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*観劇録*『御縁記念日』感想と考察。
おぶちゃさん『御縁記念日』感想と考察です。
⚠︎内容に関するネタバレ・深読みを含みます。
*観劇録*『御縁記念日』感想と考察。
⚠︎内容に関するネタバレ・深読みを含みます。
そのタイトルにかけてチケット代5円、という一日限りのトンデモ公演。こういうことをし始めるのはおぶちゃさんしかない。
というわけでおぶちゃ5周年当日限りの上演となった『御縁記念日』は、主催のおぶきょさんこと大部恭平さんのご両親の話だった。おぶきょさん曰く「大部家ができる話」。実は現場にご両親がいらしていたそうで、お二人の目にこのお芝居がどう映ったのか気になるところである。
物語はこの脚本を書くために大部さんがお母さんの元を訪れるところから始まる。
現代のお母さんをおぶちゃではお馴染みtamico.さんが、若かりし頃のお母さんを凪原せいらさんが演じていた。これはお芝居を観ていくうちにものすごくしっくりくる配役だったなぁと思っていて、さばさばしていて友人の恋バナをはいはいと聞いてくれる明るいせいらさん(=ミヨコ)が、紆余曲折を経て肝の座った明るいtamico.さん(=ミヨコ)になるの、とてもわかる。お母さんの回想の中で物語が進んでいくので、その時の出来事をリアルタイムで経験してリアルタイムに感情を動かしているせいらさんと、どんなに大変な出来事でも極力明るく、でも時折神妙な顔で語るtamico.さんの対比が良かった。
せいらさん、陣痛から出産というお芝居、体力使っただろうなぁ。でもあのお芝居があるからこそ作品全体がすごくいいものになっていたと感じる。あと、私自身の職業柄、キョウヘイを産んだ後の「私がちゃんと産んでれば」の言葉は胸に刺さるものがあった。もちろんお母さんに非はなくて、それでも体を痛めて産んだ身としては罪悪感が残る。その気持ちの重さは計り知れないけれど、ミヨコの悲痛な表情と絞り出すような叫びに彼女の感じた罪悪感がダイレクトに伝わってきた。
ところで主役は鈴木雅也さん演じるおぶきょさんのお父さん(=タツヤ)なわけだが、冒頭で「とにかく真面目な熱い男」と語られていた通りの男がそこにいた。馬鹿にされたくないからと勉強に励み、親友オグリ(演:髙畑岬さん)とロックしようぜと楽しそうに語り合う姿は紛れもなく好青年で、そんな彼が恋愛には奥手だというのだから好感度しかない。仕事にしろ趣味にしろ、なんにでも全力な彼がミヨコの出産時に御百度参りをする場面がこの作品中一番好き。本来喜ばしい知らせであるはずの我が子の誕生が夫妻にとっては不安の始まりになるわけだけど、自分も不安になりながらも必死でミヨコを支える姿は本当にいい旦那さんだった。
人間って面白いなと思ったのは、タツヤは最初からミヨコが気になっていたけれどミヨコは「どちらかといえばオグリくん派」だし、ミヨコの親友であるレイコの方がタツヤにお熱だったのに、結局ここがクロスしてくっついているところ。後から配信でも観ていて思ったのは、オグリはたぶん最初からレイコが好きだったのでタツヤの恋の後押しはちょっとだけ私情も絡んでいただろうなと。そんなちゃっかりしたところもありつつ、物語の中でずっとタツヤとミヨコの味方であり続けてくれるオグリ、めちゃくちゃいい男だった。タツヤとの絡みは軽快かつ安心感があって、スプサプでの鈴木髙畑
…
おっとリダリンモテリンの掛け合いが最高に好きだった私としては見応えがあったし、レイコとのやり取りは逐一可愛くて好き。オグリとレイコの間には最初から気の置けない雰囲気が漂っていて、独特のやり取りやその場の勢いで結婚を決めてしまうところにも二人の間のいい関係が表れているなと思った。絶対レイコの方がオグリを尻に敷いてると思う。
レイコといえば、演じていた田中菜々さんのお芝居がどストライクだった。ミヨコやオグリとの掛け合いも、看護師(別役)としてミヨコに声をかける時も、二役演じ分けるの大変だったはずなのにちゃんと別人だった。セリフの言い方かな
…
とにかくめちゃくちゃ良くて。ミヨコにタツヤの良さを語ったかと思えば「恋したいだけだから誰でもいい」という潔さも、「おぬしまさか??」とか「ハッハーつまんない!」とか「世界征服(どやぁ)」とか。レイコの時はどのセリフにも彼女の愛らしさが詰まっていた。一方看護師さんの時は、職務を全うしようとする責任感と優しさがすべてのセリフと動きから滲み出ていて、だからこそ辞めさせられてしまうのが切ないなって。たとえそれが事実じゃなかったとしても看護師という立場は医者よりも弱いし、彼女本人にも罪悪感があっただろうし。せめてキョウヘイの無事を祈りたいからと木の苗をミヨコに渡すシーンで一気にせつなくなった。
……
なのにその後tamico.さん演じる現代のミヨコが「枯らしちゃってやっべぇ!!って」と言うのでせつなさなんて吹っ飛んでしまったのだけど。
そしてそんな個性豊かな面々を迎え撃つ、個性豊かな面々を演じる(この時点でもう面白い)優太さん。一人何役やった?ってくらい色んな役で登場した優太さんがいないと『御縁記念日』は成り立たなかったと思う。名バイプレーヤーとはまさにこのこと。
全役ツッコミどころが多くて面白いんだけど、それでいてラストに「人間って不思議だなぁ、すごいなぁ」というある意味作品のまとめみたいな重大なセリフを任されているあたり、おぶきょさんからの信頼を感じた。このセリフは優太さん演じるお医者さんが、出産時に潰れてしまったキョウヘイの肺に機能が戻ってきた"人体"についての不思議やすごさを語る場面だけど、作品のまとめとしての観点から見ると"御縁"というものが繋がってこの世の中ができていることへの感嘆のようにも聞こえる。特に『御縁記念日』をここまで観てきた私には、このセリフがそんな響きを伴っているように聞こえた。
〈『御縁記念日』公演情報〉
※敬称略
製作:おぶちゃ
公演期間:2022年6月30日
会場:MsmileBOX渋谷
作・演出:大部恭平
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