ひろか
2022-10-01 23:37:24
1640文字
Public 観劇録
 

*観劇録*『舞台 アオアシ』(再演) 感想と考察。

漫画原作舞台『アオアシ』(再演)感想と考察です。
⚠︎内容に関するネタバレ・深読みを含みます。

*観劇録*『舞台 アオアシ』(再演)感想と考察。

⚠︎内容に関するネタバレ・深読みを含みます。


大人気漫画が原作の舞台の再演。
私は原作を知らずに観に行ったのだが、なるほど、人気が出るのめちゃくちゃわかるなと思った作品だった。
今作で舞台化されたのは漫画でいうところの最初の部分、主人公・青井葦人が福田に誘われてエスぺリオンユースの選抜を受け、仲間たちとの衝突やポジション替えの試練に向き合いつつ切磋琢磨し、仲間の一人である橘総一朗の古巣・武蔵野ユースと試合をするところまで。


スポーツ漫画原作の舞台はこれまでそれなりに観てきたけれど、ボールの実物が出てくるのを観たのははじめてだった。もちろんボールが出てこないすごさというのもあって、照明やプロジェクションマッピングでスポーツ特有のスピード感を表現するのは舞台ならではの工夫だと思う。しかしアオアシはそこに実物のサッカーボールも混ぜ込むことでよりリアルになっていたように感じた。

葦人を演じていたあおいさんは、最初笑顔がかわいらしい人という印象だった。葦人としてサッカーを楽しみ、チームメイトたちとの切磋琢磨を楽しむ。少年漫画の主人公がだいたいそうであるようにわがままで周りを見ないプレーをするところもあった彼が、浅利くんと黒田くんにブチ切れされた意味を考えて大きく成長していく姿をしっかりと魂込めて演じられていたからこそ、そのあとポジション変更を受けて打ちひしがれる場面では思わず私も監督ひどいなと思ってしまうほどだった。とにかくあおいさん演じる葦人は表情がくるくる変わり、そして物語を通して凛々しくなっていく。それを見守るのもスポーツ漫画の醍醐味だと思うので、舞台でもそこがしっかり味わえたのはすごくよかった。


物語の流れ上、もう一人大きくスポットが当たるのが橘総一郎。ユース入りを果たしたはいいもののなかなか戦績が伸びないという悩みを抱えながらも、彼が葦人たちの前で弱音を吐くことはほとんどない。ずっと穏やかな笑みを浮かべ、チームの潤滑油の役割を果たしていた彼に訪れる古巣との対決でようやく橘くんの人間性が見えたような気がする。
ここは鈴木祐大さんの細かいお芝居が生きたなと思うのはジレンマを抱えた状態で佐竹監督と会話する場面。久々の再会を喜ぶ監督とのやりとりの中で、いつのまにかリスクを冒すことに怯えていた自分に気がつく橘くんの繊細なお芝居に彼の揺れ動く心情が表れていたように思う。だからこそ武蔵野戦で一点入れた時の「入ったのか、」からの雄叫びがなんかもうとても感動して。うっかり涙ぐんでしまった。対戦を終えた橘くんがとても清々しい顔をしていてほっとしてしまった。同じ選抜を突破した仲間の中で唯一Aチームへの昇格がなかった彼だけれど、きっとこの後も腐らず真面目に頑張っていくんだろうと応援したくなる余韻が残る。


私はサッカー(というかスポーツ全般)に疎くて、ポジションの名前に代表されるような専門用語はまったくわからない。舞台となる"ユース"なるものの存在もアオアシを観るまで知らなかった。それでもここまで引き込まれたのは、やっぱりサッカーにかけるキャラクターたち、そして彼らにかける役者さんたちの熱量がとんでもなかったからだと思う。劇場の後ろの方で観劇していても伝わってくるあの熱量は、本当に目の前でサッカーの試合が行われているかのような高揚感だった。


ところで、観劇していて昇格組尊いなと思ったのだが、序盤あれだけクールに決めていた浅利くんが途中から同期組の彼らに完全にいじられていてかわいかった。浅利くん困ってるじゃんやめてあげなよ。


〈『舞台 アオアシ』(再演) 公演情報〉
※敬称略
原作:小林有吾「アオアシ」
製作:amipro
公演期間:2022年5月18日〜5月22日
会場:こくみん共催coopホール/スペース・ゼロ
脚本:伊勢直弘
演出:鄭光誠