ほうじゅ
2019-02-01 02:22:18
3997文字
Public ファルルのおはなし
 

【SQ5】ファルルのこと

『三つのしっぽ』の小さな獣。りんごがとっても大好きな、ハーバリストの女の子。


 りんごがとっても大好きで、いつでも元気いっぱいな、ハーバリストの女の子。
 ブラニー族特有の子どものような低身長で、ふわふわの桜色の髪に、りんごのような赤い左目と、お月様のような右目をしている。
 カタコトのような拙い口調で一生懸命おしゃべりし、子犬のようにぴょこぴょこ跳ねる。
 そんな見た目や挙動に反し、意外にもしっかりとした薬草の知識を持っていて、いつもケガをするみんなのことをたくさん癒してあげている。
 ファルルがいつも持っているとても大きな鞄には、大きなボタンがついていて、たくさんの草と花と、とても分厚い薬草図鑑と、おいしそうな赤いりんごと、黄色いりんごが入っている。
 今は『ファルル』と呼ばれているが、二年より前の記憶が無いため、ファルルの正確な名前や年齢は、名付けの親であるシリャーナを含め、周りにいる誰もが知らない。
 しかし、そんな謎は気にも留めず、小さなファルルは今日も元気に、誰かにりんごをねだっている。
「りんご、ふぁるるのっ! りんご、ふぁるるの。りんご、おいしー、しあわせゆった!」

■森のおうちに住んでいた頃
 ファルルは冒険に出るまでは、アルカディアのとある森の中の、草原の隅に建っている、古ぼけた小屋で暮らしていた。
 古ぼけた小屋の住人は、ファルルの名付けの親であるルナリア族のシリャーナと、小さなファルルの二人だけ。
 草原の小屋を訪れるヒトは、犬のシエナを連れたブラドと、馬車を連れたカザンだけで、滅多に他の客人は来ない。
 そんな、人里離れた森での暮らしは、いつもとても穏やかで、とても静かなものだった。
 日々に必要な糧だけを、木々や動物から分けてもらい、シリャーナと二人で食事を済ませる。
 シリャーナが地下室に閉じこもり、一人きりになってしまうと、何度読んだかわからない、分厚く重い薬草図鑑を、飽きもせずにめくり続ける。
 陽が落ちて光の無い夜は、子犬のように丸まって眠り、朝、鳥の声で目覚めると、また静かな一日を始める。
 時たま、狩人のブラドから肉や野草を分けてもらい、商人のカザンから生活に必要なものを受け取り、少しの間遊んでもらうと、また静かな生活に戻っていく。

 優しく穏やかな森での生活は、きっと、幸せなものだった。
 けれど。
 ──草原を吹き抜ける風の音は、いつも少しだけ、寂しい。
 森の木々の向こうには、大地に根を張り葉を茂らせる、巨大な世界樹の姿がある。
 広がる緑の草原で、遠く聳え立つ樹を見上げると、なぜか、なぜだかわからないけれど、……ほんの少しだけ哀しくなった。
 
 そんなファルルの生活に、“懐かしい”胸の鼓動が蘇ったのは、旅をする四人の冒険者が、森を訪れた日のことだった。