
りんごがとっても大好きで、いつでも元気いっぱいな、ハーバリストの女の子。
ブラニー族特有の子どものような低身長で、ふわふわの桜色の髪に、りんごのような赤い左目と、お月様のような右目をしている。
カタコトのような拙い口調で一生懸命おしゃべりし、子犬のようにぴょこぴょこ跳ねる。
そんな見た目や挙動に反し、意外にもしっかりとした薬草の知識を持っていて、いつもケガをするみんなのことをたくさん癒してあげている。
ファルルがいつも持っているとても大きな鞄には、大きなボタンがついていて、たくさんの草と花と、とても分厚い薬草図鑑と、おいしそうな赤いりんごと、黄色いりんごが入っている。
今は『ファルル』と呼ばれているが、二年より前の記憶が無いため、ファルルの正確な名前や年齢は、名付けの親であるシリャーナを含め、周りにいる誰もが知らない。
しかし、そんな謎は気にも留めず、小さなファルルは今日も元気に、誰かにりんごをねだっている。
「りんご、ふぁるるのっ! りんご、ふぁるるの。りんご、おいしー、しあわせゆった!」
■森のおうちに住んでいた頃
ファルルは冒険に出るまでは、アルカディアのとある森の中の、草原の隅に建っている、古ぼけた小屋で暮らしていた。
古ぼけた小屋の住人は、ファルルの名付けの親であるルナリア族のシリャーナと、小さなファルルの二人だけ。
草原の小屋を訪れるヒトは、犬のシエナを連れたブラドと、馬車を連れたカザンだけで、滅多に他の客人は来ない。
そんな、人里離れた森での暮らしは、いつもとても穏やかで、とても静かなものだった。
日々に必要な糧だけを、木々や動物から分けてもらい、シリャーナと二人で食事を済ませる。
シリャーナが地下室に閉じこもり、一人きりになってしまうと、何度読んだかわからない、分厚く重い薬草図鑑を、飽きもせずにめくり続ける。
陽が落ちて光の無い夜は、子犬のように丸まって眠り、朝、鳥の声で目覚めると、また静かな一日を始める。
時たま、狩人のブラドから肉や野草を分けてもらい、商人のカザンから生活に必要なものを受け取り、少しの間遊んでもらうと、また静かな生活に戻っていく。
優しく穏やかな森での生活は、きっと、幸せなものだった。
けれど。
──草原を吹き抜ける風の音は、いつも少しだけ、寂しい。
森の木々の向こうには、大地に根を張り葉を茂らせる、巨大な世界樹の姿がある。
広がる緑の草原で、遠く聳え立つ樹を見上げると、なぜか、なぜだかわからないけれど、
……ほんの少しだけ哀しくなった。
そんなファルルの生活に、“懐かしい”胸の鼓動が蘇ったのは、旅をする四人の冒険者が、森を訪れた日のことだった。
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