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2023-11-19 16:50:17
1387文字
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祝福の花束
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無題という名を冠して
アンヘル・ハーヴェスト。
・(姿だけ)サヴァさん【gatewale2】
お借りしています。
アンヘル・ハーヴェストの母親は瓶の中に体を詰められて殺されていた。その二年後に父親は鉱山で岩の下敷きになって死んだ。
ハーヴェストの家で残ったのは幼い妹とアンヘルだった。
鉱山で働かなければならないくらい家は貧しかったし、食い扶持にも困っていた。鉱山が閉山するとき、岩のなかに隠していたみっつの宝石をこっそり懐に入れて、アンヘルは旅に出た。妹はその時にはもう死んでいた。
古いトランクに宝石が詰められているのを発見したのは、旅に出る一日前のこと。おそらく父親が貯めていたものだろうと考えられた。トランクが父親のものだったからだ。中には珍しい宝石も詰め込まれていた。これをもう少し早く見つけていたら、妹は死なずにすんだかもしれない。アンヘルは少しの間そう考えていたが、死んでしまったものはもう蘇ることはないと知っている。たとえ魔法使いでも、きっと蘇らせられないだろう。そう思うことができるくらい、諦めは早かった。
トランクに蓋をして、鍵をかける。鍵はなくさないように首にかけて、服の下に隠した。
「それじゃあ、行ってくるよ。あのひとを探しに」
庭の粗末な墓に語りかけて、アンヘルは旅に出た。
アンヘルを救ってくれた魔法使いだ。彼を見つけて、生き抜く術を教えてもらおう。母のように殺されないように。父のように、妹のように死なないように。
冬の国は植物が育たない。それでも他の国に移住できるほど、裕福ではなかった。旅をしている間、食べるものは冬の国の街や月の国に寄って、宝石と食物を交換してもらっていた。
アンヘルは月の国に近い場所の鉱山で働いていたから、足腰は自然と丈夫になった。雪をいくら踏んで歩いても、疲れることはなかった。寒さに強いということも味方したのだろう。どれだけ寒くても凍死することはなかったし、足や手が腐って壊死することもなかった。一日中歩いていたから、眠ることもあまりしなかった。
そうして探し訊ねて、どれほどたっただろう。
黄金
きん
色の美しい長い髪を見た。目が覚めるようなその色に、アンヘルは二十年も前のことを思い出した。
人間に羽を千切り取られたときに、彼が助けてくれたのだと、はっきりと明瞭に思い起こされた。
見紛うはずはない。
名前も知らないが、髪の色と目の色、声色を、目と耳が憶えている。
彼を見て、少しだけ泣いた。
この数年間は無駄ではなかったのだと。家族の死を、もう誰かのせいにしたりはしないと誓った。
どれだけ邪険にされても彼の弟子になりたい。
生きるすべを教えてほしい。アンヘルを生かしたその魔法で。
――
あなたが俺を生かしたんです。
あの時死ぬはずだった俺を。
喉の奥でそう、呟いた。
ちゃり、と腰につけた宝石が鳴る。これは父と母、そして妹だ。彼らを糧に生きていこうとアンヘルは思っている。
もう決して諦めない。
家族の死を諦めたときのような、無様な真似はしない。
だから、もう泣かない。
涙は流さない。
これが、最後。
こんなところで涙を流し続けていたら凍ってしまう。水滴をぬぐって、木々の茂みの中で彼を見かけたアンヘルはそのあとを着いていった。気づいていますようにと願いながら。
――
昔、宝石を砕く音をよく聞いていた。
彼からは、それと似たような音が聞こえた。
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