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いを
2023-10-17 20:57:30
1583文字
Public
ブツメツフツマ
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露呈
邂逅。
・崩さん【_XwX_tm】
お借りしています。
「話を聞かせてよ。返してやるから」
邂逅はそう言って笑った。男は背の高い
――
聞けばゴミ箱
――
を頭に被っていた。
「昔の話。坊ちゃん、お前が小さい頃の話。そう、おれが視力を取った時の、もうちょっと大きくなった頃の話、それよりまだ小さい頃の話。語るには時間がないかい?」
それから男は邂逅を小脇に抱えて、小学校という場所を訪った。陽の落ちた頃が小学校。学校。邂逅が行こうにも行けなかった場所は、大きい建物だった。これほど大きい建物に、小さな子どもが詰められているのかと、邂逅は思う。
「お前もここ通ってたんだ」
「そう」
「いいなあ、楽しかった?」
まあ、普通?という返答だった。そうか、普通なのか。邂逅自身、覚えもないし分からないけれど、通った人間がそう言うのだからそうなのだろう。
それからプールという大きな水たまりのような場所をこっそりと訪ねた。海は何度も見たことがあるが、こんなに透明な水たまりは見たことがなかった。ここはなにをする場所なのか聞くと、「泳ぐんだよ」と彼は言った。
「泳ぐ? なんのために?」
泳がなければいけない理由があるのだろうか。邂逅には分からない。
「さあ
……
? 授業だったから?」
「ふうん。そうか」
かしゃりと、音をたてさせながらフェンスに指を絡める。プールという場所は、どこか邂逅を不安定にさせた。完全に陽が落ちたら、きっと墨みたいになるのだろう。真っ黒い水。冬の海のような。
からだが焼かれるとき、水があんなにも恋しかったのに今見ると少し怖い。
「あと、どこか案内してくれねぇの?」
「じゃあ、うさぎ小屋」
「うさぎ飼ってるのか。食べるの?」
「食べないよ
……
」
男の背中を追いかけながら、背の小さい小屋があった。ここもフェンスで囲われている。うさぎたちは小屋の奥で、黒っぽい目を光らせていた。手のひらに収まってしまいそうなほどの大きさだった。
すると、一匹
――
と呼ぶのだったか、一羽、と呼ぶのだったか邂逅は一瞬考えて、まあいいや、と思う。うさぎがこちらに跳ねてやってきた。フェンス越しに見ながら、口もとだけで、邂逅は笑った。人差し指をフェンスに差し込むと、男は邂逅の隣に立つ。しゃがんでいる邂逅は顎をあげて、再度笑った。彼が考えていることが正しければ、こういうのが正しいだろう。
「安心しなよ。動物のは取らない」
「人間のは取るのに?」
「そう。人間のは取るんだ。でも、犬とか猫とか
……
うさぎからは取らないよ」
男の目が「どうして」と言っているような気がした。
「どうして、俺の視力を取ったの?」
「聞きたいの? まあ、それもそっか。お前から取り上げてもう結構たつもんな」
そっと立ち上がる。男の顔は翳っていた。陽が出ていないからか、それとも邂逅の目がおかしいのか、分からないが。
目を伏せて、斜め下を見下ろす。
どうしよっかな。別に、隠すこともないのだけど。
――
そう思っていると、口の中に甘いものを押し込まれた。
「むぐ」
「昔話にはお菓子が必要不可欠でしょ」
栗まんじゅうだった。邂逅は一口では食べきれずに、指先でそれを持った。とても甘い。
女郎花が足もとでゆらりと揺れてくるぶしをくすぐった。
もう一口くらいで食べきれそうだ。そのまま栗まんじゅうを口の中に入れて咀嚼する。ほっくりした食感だった。こんなおいしくて甘いもの、はじめて食べたかもしれない。思わず、くちびるの端が上がる。
「アハハ! いいよ、教えてやる。面白かったし、栗まんじゅうおいしかったし。その前に、お前の楽しかったことと嫌だったこと教えてよ。そしたら教えてあげる」
――
俺は、聞き役に徹しよう。
風が、ざっと吹く。冷たい乾いた風だ。
「七億不思議からの約束だぜ。破ることはない。おれは嘘をつかない、正直者だからな」
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