Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
いを
2023-07-11 20:29:42
6610文字
Public
タグ、掌編、その他
Clear cache
タグまとめ1
刀神、櫻神学園。
それぞれフォロワーさんのお子さんお借りしています。
勇魚(葵衣さんと鳴弦)【刀神】
いまわたくしがそれを夢でないと考へて
あたらしくぎくつとしなければならないほどの
あんまりひどいげんじつなのだ
感ずることのあまり新鮮にすぎるとき
それをがいねん化することは
きちがひにならないための
生物体の一つの自衛作用だけれども
――
玉梓鳴弦という男の頭の一角には、いつもいつぴきの魚を飼っている。
悠々と泳ぐ、巨大な魚である。
かぁん、と高い音をたてて木刀が天井に舞う。
鳴弦はそれを鯨とした。
鯨が落ちてくる。
水中、海底に。
何キロも落ちてゆけば、地底の砂は舞うのだろうか
――
。
そう考えると、鳴弦のくちびるの端が上がった。
けれど勿論それは幻覚であり、鳴弦が見た鯨はどこにもいない。
宙を泳ぐ52ヘルツの鯨など、この世にありはしない。
「馬鹿、木刀を落とすんじゃねェ」
がらんと音がした。
鳴弦ははたとその声を拾って、落ちた木刀を持ち上げた。
「お前の全力じゃ、俺なんか秒でとられるの分かってたけどさぁ」
ここに52ヘルツの鯨なんていない。
孤独な鯨はここにはいない。
「なあお前」
木刀を見下ろして、しびれる手のひらを握りしめる。
「夢って見る」
明るい桃色の髪の毛が風にのってゆれた。
「俺ね」
びりびりと、皮膚の中にいかづちが走るような感覚は嫌いではない。
「鯨の夢見るんだよ」
月のあかりはしみわたり
それはあやしい蛍光板になって
いよいよあやしい
苹果
りんご
の匂を発散し
なめらかにつめたい窓硝子さへ越えてくる
――
。
風に流るる(埜真樹さんとナルミ)【桃ゑ鬼】
電線と恐ろしい
玉髄
キヤルセドニ
の雲のきれ
そこから見当のつかない大きな青い星がうかぶ
(何べんの恋の償ひだ)
「恋」
ナルミはふと声を出した。
いつものテーブルいつもの椅子
――
にもにた、ソファ。
青い表紙の古い本。
眼鏡の奥の透明なほどの
黄金
きん
の瞳。
肩に大きいストールを羽織っているその手から伸びる白い手。
「こい?」
彼女は瞳をこちらに向けた。
「いえ
――
」
いいように笑む。
いや。
なにも咎められることもあるまい。なにも罪悪ではない。
「恋愛という意味での恋、です」
彼女は細く息をついた。
「藪から棒に」
「そうです。藪から棒に。思いだしたことがあったんです」
白い手が本の表紙をなでる。
「こころというものは誰にでもありますが、恋に使うこころというものを、誰しも持っているわけではないのでしょうね」
「恋に興味がないと」
「ないわけではないのですが
――
いずれ」
くちびるを持ち上げ、そっと微笑む。
月はいきなり二つになり
盲
めし
ひた黒い
暈
かさ
をつくつて光面を過ぎる雲の一群
(しづまれしづまれ五間森
木をきられてもしづまるのだ)
冷やかし多く(首切さんと白映)【刀神】
そらにはちりのやうに小鳥がとび
かげろふや青いギリシヤ文字は
せはしく野はらの雪に燃えます
「首切殿」
黄金色の髪の毛が頭の上のてっぺんで揺れる。
これは、まるでどこぞで見た植物のようだった。
外はぼんやりと暗い。雨が降りそうでもあった。
目を遮るように隠した髪。どんな景色を見ているのだろうかと思うけれど、それは彼にしか分からないものなのであろう。
「これは少し、派手すぎやしませんか」
「そーか? 俺的にはアリアリのアリってやつだぜ」
主から賜った金銭で服を買おうにも白映では分からないものだから、友人である首切に頼んだのだ。
あてられたものは柄物のシャツ。
どこかで見た。こういった、柄の
――
。
ああ、主がよく着ている。
けれど主だからこそ似合うもので会って、白映は似合わない。
「冒険しちゃえよ」
「衣服では冒険しない主義なので。お気持ちだけ頂きます
……
。というか首切殿のほうがお似合いなのでは?」
彼が持っていたハンガーを取り去り、あててみせる。
シャツの地の色は紺青。柄は星座の柄。北斗七星は分かるがあとはてんでわからない。
「そうかぁ?」
「うん
……
。もっと派手な方が」
みんなは生ゴムの長靴をはき
狐や犬の毛皮を着て
陶器の露天をひやかしたり
ぶらさがつた
章魚
たこ
を品定めしたりする
あのにぎやかな土沢の市日です
泥岩(夜露さんと兜羅)【櫻神学園】
……
ところがおれの右
掌
て
の傷は
銅青
かうじやう
いろの等寒線に
わくわくわくわく囲まれてゐる
……
兜羅の右てのひらには一閃の傷がある。
傭兵時代の傷痕だ。
今更できた傷など、どうということもない。
死んでこいと言った親父のいうことも聞かず、外国から帰ってきて人殺しと後ろ指をさされ
そうして櫻神にやってきた。
首元のドッグタグが月の輝きに照らされた。
「おっと」
ふっと黒い髪の男が兜羅の前を横切ったと思いきや、そのままドッグタグを見つめた。
「お前、それはなんだ?」
「これはドッグタグ。名札みたいなもんだよ」
「銀色に光っているな」
「烏みたいなことを言うね」
夜空のような目をした
――
神であろうそのひとは、くちびるをへの字に曲げた。
「おっと、無礼でしたか。これは失礼」
「分かればいい。ところでその手に持っているものはさては酒だな?」
「半年に一度の楽しみでしてね」
「俺は夜露。お前は?」
「夜露殿。科戸兜羅といいます。どうです、記念にご同伴してもらえませんかね」
「いいだろう。ところでどうしてドッグタグというのは2枚あるのだ」
興味がおありで、なにより。
兜羅は笑い、俺が死んだ時、1枚は家族へ、もう1枚は死体と一緒に埋めるんですよ。と言った。
その時の夜露の顔は、なんとも言えない顔をしていた。
……
ところがおれのてのひらからは
血がまっ青に垂れてゐる
……
明るい日時(優蓮さんと蓮)【刀神】
畢竟
ひつきやう
あれは水と空気の散乱系
冬には稀な高くまばゆい積雲です
とは云へそれは再考すれば
やはり同じい大塔婆
いたゞき八千尺にも充ちる
光
厳浄
げんじやう
の構成です
蓮が下緒院に異動になってから、和佐に会うのは初めてだったかもしれない。
「優蓮さん」
白い羽織。一房の三つ編みがゆっくりと揺れる。
「あら、玉匣様。
下緒院
こちら
に異動なさったようですわね?」
「
……
はい。一度くらい挨拶しておかないとって思ったん、すけど
……
。あとになってしまってすいません」
「しかたありませんわ。あんな任務のあとですもの」
ふふと笑う和佐に安堵して、蓮は自身の羽織の裾を掴んだ。
「よい守りがついたようね。安心しましたわ」
彼の目は蓮が着込んだ羽織に向かっていた。守り。非常に簡素で簡潔であるから、ある意味突破口を見いだしやすい衣装だけれど、前のものよりは大分
――
ましなのかもしれない。
廊下のリノリウムが影を落とした。天照の外は曇りかかってきた。巨大な雲が、仰け反るように横たわっている。
「こちらでも、しっかりね」
「もちろん、そのつもりです。
……
学ぶつもりです。ここで、いいことも悪いことも」
和佐は目を細め、「ええ」とほほえんだ。
摩利支天のお守りをもらったことを、決して忘れない。あれがあったから、柊は救われたのだから。
「あんたの力になれることがあったら、っていう約束まだ有効なんで、よかったら呼び出してやってください」
「あら。楽しみにしておりますわ」
なにを運んでもらおうかしら、と彼は笑う。荷物運びくらいが丁度いいのかもしれない。
「それじゃ。俺、挨拶回りしてるんで
……
。ちょうどあんたに会えてよかった」
和佐は一度、胸のあたりで手を振った。
窓を見ると、雲はいつのまにか去り、晴天が広がっていた。
ひるの十四の星も
截
き
り
アンドロメダの連星も
しづかに過ぎるとおもはれる
病床にて(清司郎から紫さんへお手紙)【刀神】
病の床を起き出でよ
そのアツシシユの仮睡をふりすてよ
されど眼に見ゆるもの今はみな狂ほしきなり
藪内 紫様
これがきみの手に渡ったということは、言うなれば俺が死んだということなんだと思う。
俺が死んだことはきっと誰かの悲しみになるかもしれないし、無意味なものだと思うのかもしれない。
けれどきみは強い子だからきっと乗り越えられるのだろう。
刀遣いは多かれ少なかれ、こうした別れが多い。多いからといって、その死を正当化するわけではない。
でもその生きた軌跡を、どうか否定しないで。俺だけじゃない、誰かものでも。
俺はね。
家族を殺してばかりだ。みんないなくなってしまった。
だから、もしかするとと思って、筆をとりました。
俺の死をどうか踏み台にして、強くなってください。
そしてやがてくるその時に、後悔しないように。
俺のように、後悔ばかりの人生にならないように。
神様に祈っています。
藪内くんに、幸せがありますように。
きみが、悔いのない人生を送れますように。
阿伽陀 清司郎
わがこころは温室の草の上
うつくしき毒虫の為にさいなまる
こころよ こころよ
しづかなよる、月明かりにて、うつくしいものを見るもの(彩女さんと兜羅)【櫻神学園】
この静寂は私の
生命
いのち
であり
この静寂は私の神である
しかも気むつかしい神である
ざわりと長い髪が風にのっている。
俺はそれを見た。
何も、そんな畏れることはない。畏れ、恐れ、怖れ。おそれにもそれぞれ意味があるけれど、きっと人間の中身は皮を剥けば同じ。血が通い、臓器があり、生暖かい。そして白い珊瑚のような骨があるのだろう。
神という存在を、守らねばならないというのだが
――
いや、俺もそうは思うのだが
――
これが信仰心というものなのか。
神はすべからく美しいものであるなどと。
月光に反射するような白い肌が、俺には眩しく見える。目が潰れるほどに。
戦場で昼夜問わず戦ってきた俺の肌などとはかけはなれたうつくしいものだ。俺などは神にしてみれば取るに足らない、存在なのだろう。信仰心を搾り取り、吸収し、生きていくのだろう。何百年も、あるいは何千年も。
傲慢。
だがこの神
――
彩女という女の神は、それ相応に神らしさがあるものの、白餡大福に目を輝かせたりする、稚い部分も見えた。
ふ、と笑う。
「なにを笑っている」
「いーえ。なにも」
また生きてこの神に会う日がきたら、白餡大福でも持ってこようか。そしてそのうつくしい顔を見て笑ってやるのだ。
夏の夜の食慾にさへも
尚ほ
裂
はげ
しい
擾乱
じょうらん
を惹き起こすのである
ウウロン茶とたこ焼きは合うのだと知った(鴇羽さんと小夜子)【刀神】
それが世の中だ
心に多くの俗念を抱いて
眼前咫尺
がんぜんしせき
の間を見つめている厭な冷酷な人間の集いだ
それ故 真実に生きようとする者は
――
むかしから 今でも このさきも
――
却て真摯でないとせられる
わたしはほとんど氷が溶けてしまった、ストローが回るウーロン茶を見ている。
彼女は「ウーロン茶でいいの?」と言っていたけれど、わたしはウーロン茶が好きなのだ。
こうしてみると廃れ始めた喫茶店でも、若い男女が多い。その理由は知らないけれど、流行っているのだろう。
今まで見向きもしなかった喫茶店や、古い外見の店が今こうして注目を集めていると思うと、面白おかしいものがある。
「ねえ見て。ここたこ焼きあるよ」
「喫茶店にたこ焼き?
……
なぜ?」
「なぜって
……
なんでだろ? 変わってるね」
彼女は「はいっ」と元気な声を出して、細い腕を伸ばした。
同じ師をもつ鴇羽は、たまにこうして連れ出してくれる。ありがたいが、わたしのような面白くもない地味な女を、鴇羽はどう思っているのだろうか。
「緋咲さん、変わってるわね」
「え? そう?」
きれいな目玉をしている。すこし垂れ目がちの目玉だ。わたしはそれを見る。
同じ
師匠
せんせい
を持っているからだろうか。それとも、友人として接してくれているのだろうか。わたしに友人と呼んでも差し支えのないひとは、そうそういない。わたしがこんな性格だから仕方のないことだ。
透明な灰色の煙を天井にのぼっていくのを見る。彼女が頼んだたこ焼きがテーブル席に置かれた。
「食べよ!」
「わたしも?」
「もちろん。あっつあつだから気をつけてね」
その後、わたしは無事に舌を火傷したのだった。
さあ
又銀座で質素な飯でも喰ひませう
本を見つつ(翅影さんと双一)【刀神】
あたたかいガスだんろの火は
ほのかに音を立て、
しめきつた書斎の電燈は
しづかにやや疲れ気味の二人を照らす。
書類精査もたしかに刃佩流の仕事ではあるだろうけれど、目の奥がじんじんと痛む。
眼鏡を上げ、眉間に指を当てた。
翅影は部屋の隅で本の背表紙を見ている。なにか面白い本でもあったのだろうか。
窓などこの部屋にはない。部屋の中の部屋。まるで本のための牢獄である。
「主、少し休んだらどうだ」
暗い虚から差し込んできた声に、双一は顔をあげた。
分かるものなのだなと思い、近くにあったパイプ椅子に坐った。きしんだ音をたてたそれは年季が入っていて、錆びも見られる。
「捜し物は見つからない」
部屋の隅から足を踏み出した翅影は、手元にあった本を見下ろした。
「人間はたくさんの書物を書き、読むんだな」
「それが歴史なんじゃないのか」
ゆらりと蝶を模した耳飾りが揺れる。ほこりまみれのしめった部屋に、それだけが生きている気がした。
「外に出よう。すこし休憩する。ほこりっぽくてたまらない」
「それがいい」
部屋から部屋を出、暗やみの窓の向こうを見上げる。
丸い月。
朧夜。
雪をよろこぶ。
雪も深夜をよろこんで
数限りもなく降りつもる。
あたたかい雪、
しんしんと身に迫つて重たい雪が
――
みどり(稲月堂さんと蓮)【刀神】
世界がわかわかしい緑になつて
青い雨がまた降つて来ます
この雨の音が
むらがり起る生物のいのちのあらはれとなつて
いつも私を堪らなくおびやかすのです
眼鏡のつるが壊れたので、足がよろめいた。黒いスーツのようなものが、蓮の視界に映ったが、なんだったのか分からなかった。
「大丈夫ですか」
整ったトーンの声が耳に届く。暗がりの中でふいに見つけた月のような声だった。
「すみません」
眼鏡、もとい度のついたサングラスを押さえながら見下ろすと、足もとは階段だった。もう少しですべり落ちるところだったかもしれない。階段の踊り場にいるその人は、よく見ると黒いスーツを着ていた。先ほど見たものはこのひとだったのであろう。
「怪我がないならなによりです」
「足をひっかけただけなんで
……
」
もう一度眼鏡をおろす。つるが根元から折れている。これには易々とした事情があるのだが、つるがなければ耳にかけられないわけなのだ。眼鏡をかけているこのひとなら分かってくれるだろう、きっと。
「初対面ですみませんが」
「はい」
垂れ目がちの黒い目が蓮を見上げた。
「あ、いや
……
。高いところからすみませんが、と言うべきですかね」
窓が開いている。ざ、と強い風が押し寄せてきた。
その拍子に蓮の手から眼鏡が放り出されるように離れた。
「どちらでも構いませんよ」
そのひとは言う。こつんと階段を上る音が聞こえた。極度の近視でぼやけた視界に、黒い姿が目の前に現れる。
「どうぞ。気をつけて」
蓮の目の前に差し出されたのは、紛れもない眼鏡だった。風は止み、暫く緑の匂いが濃くなった。
「ありがとうございます」
ふと通り過ぎたそのひとからは不思議な匂いがした。
青葉のさきから又も若葉の萌え出すやうに
今日もこの魂の加速度を
自分ながら胸一ぱいに感じてゐました
そして極度の静寂をたもつて
ぢつと坐つてゐました
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内