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いを
2023-07-03 22:05:45
1611文字
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櫻神学園
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神様たちの残り香
【幻影の針】
真珠のこと。
・美綴くん【yasuinokikaku】
お借りしています。
真珠は利口ではないから詳しいことはなにひとつ分からないけれど、この状況はとても危険だということは本能が告げている。
「真珠!」
いつもとはちがい、透司の声が下から聞こえてくる。
それと同時に、腕に不気味な痛みを感じた。
コピーが真珠の腕を槍で突いた。その姿は透司ではない、見知らぬ生徒だった。
同じ槍でも違う装飾をしているから分かる。
透司がそのコピーを背後から刺した直後、爆風が襲う。
彼は腕で顔を覆い、赤い長い髪の毛が激しく揺れた。ここがグラウンドでよかった。グラウンドではなければ、きっと硝子やコンクリートの破片が飛んできただろう。
からだが大きいことはそれだけ標的になる。
けれど、透司が真珠を守るように、真珠も透司を守りたかった。
その実がこの力
――
盾、なのだろう。
棺桶という不穏なものだったが、こんなものでも透司を守れるならそれでいい。
この姿を見た透司は驚いただけのようだった。それだけでありがたかった。
透司の後ろから刀を持ったコピーが絡みつこうとしている。真珠は6本あるうちの手を振り上げ、そのコピーを握って足止めをした。
はるか上空には、巨大な堕神が浮いている。真珠の姿以上に気味の悪い姿形だ。
真珠の体が勢いよく沈んだのは、その堕神を見上げたあとだった。
腕を3本、とられた。
人間か、神の力か。見ていなかったせいで分からないが、真珠はぶざまに地面に倒れ落ちた。
魚の形をした体が痛んだ。
とーじ、と言葉を発しようとしたけれど、声がでない。
透司が周りに盾をふたりの周りに建て、横たわった真珠を守っている。
何度目かの熱をもった爆風が盾の合間から吹き荒れた。
「真珠
……
」
グラウンドの砂が真珠の目の前を通り過ぎた。軽いちいさな石がころころと地面を転がる。
「
……
」
このからだでは、満足に言葉さえ発せない。
ごめんね。
「治せるやつ、探そう」
――
ごめんね。
不気味な体が一瞬霧になる。海で見える不知火のように揺らめき、そして真珠は左腕を失った姿となった。
出血はない。ただ、傷口は
鋸
のこぎり
で無理やり斬ったかのようにがさがさとしている。
一度、咳をする。
腕1本ないと、うまくバランスがとれない。よろよろよろめく体を、透司の手が真珠を支えてくれた。
ぽたりと切断された腕から一滴、海水が流れた。もしかすると幻かもしれないが、そう感じる。
弓から放たれた矢が、音をたてて盾を貫いた。だが盾の分厚さが幸いして、途中で矢は止まった。
「ごめんね」
「
……
痛くないか」
「痛くないよ」
かぶりを振ると、髪の毛についていた珠が2個、3個、落ちた。
こおんと音がする。
幻聴か。
そうかもしれない。
真珠は一度目を閉じた。ほんのわずかに潮のにおいがする。それもここにあるはずがない。幻だ。
あるいは腕から落ちた一滴の海水から匂っているのかもしれない。
透司は自身の槍を持って、真珠を守るように前を歩いていた。
コピーから与えられる攻撃は盾で防げるけれど、すり減るものは体力だけではない。気力だってそうだろう。
透司は疲れていないだろうか。
「とーじ
……
」
「どうした?」
「つかれてない? だいじょうぶ?」
腕が1本たりないせいか、いつもよりも舌足らずな言葉を透司に向けた。
「こんなとこで負けてらんねぇからな」
じき、腕1本で歩くのも慣れた。コピーからの攻撃は相変わらず激しいけれど、透司は器用にそれを盾で躱し、槍で薙いだ。
まるで無傷ではないが、おおきな怪我はないようだった。
「おぼえてる?」
翡翠
かわせみ
の羽みたいな目が、真珠を見た。
「ぼくがとーじの名前、かんがえるね。わすれないで」
ぼくとやくそくをして。
す、と真珠は右の小指を出した。
透司は眉根をさげながらも、真珠の指に小指を絡めた。
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