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2023-06-24 20:18:51
1814文字
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櫻神学園
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春より出でて青と消ゆ
真珠のこと。
(お名前、台詞のみ、台詞は珪素さんから頂いたものをお借りしています)景山さん【gatewale2】
(ふわっと)美綴くん【yasuinokikaku】
お借りしています。
真珠はきれいなものが好きだけれど、それはきっと自分が醜い化け物だからかもしれない、と思っている。
知ってしまっても、けれど真珠はその気持ちを押し留めるように胸にしまっておいた。
真珠が生まれてから数百年たち、やしろから逃げて櫻神にたどり着いたのが100年前。
春に閉じられたこの山中は閉じ込められていたときを思い出すけれど、今のほうがよっぽど自由だった。
学園という名にふさわしく、ここには授業があった。真珠は偶にしか出ないけれど、透司は真面目に出ているようだから、透司のクラスに忍び込んで、教室のすみで授業を受けている。
すうがく、というものや、げんだいぶん、というもの、ぶつり、というもの。さまざまな授業をそれぞれの教師が教鞭をとっていた。
とても合理的なその授業は、きっときれいなものだっただろう。
透司と真珠の部屋、それぞれの寝室。
真珠の寝室の床に落ちた折り鶴一羽二羽。黄色いもの、青いものがある。
鶴という生き物は実際に見たことがなかったけれど、図鑑の写真を見ると白と赤、そして黒い色でできているようだった。
きれいな生き物だった。きれいな鳥だった。真珠はすこし憧れた。
折り紙が入っている袋に1枚の金色の紙。
銀色の折り紙も入っているけれど、真珠はそれにあまり興味がなかった。
金色はきれいな色だった。
黄金
きん
。頭の片隅にこびりついている記憶。一度だけ見たことがある。金色に輝く夕日を。どこで見たのか、いつ見たのかさえ忘れてしまったけれど、確かに真珠は見た。
それがとてもきれいで、似た色だった金の折り紙を、同じ色だというのに蒐集してしまうようになった。
自分のものにしたかったのかもしれない。あの、誰のものでもない太陽を。誰のものでもないから、よかったのかもしれない。青ざめた空に浮かぶ月だって、誰のものでもない。だから好きなのかもしれない。太陽も、月も。
もしかすると、集めても集めても満たされない思いになってしまっているのだろうか。真珠は。
もし、太陽をあげますといわれてしまったらきっと、金色の折り紙に興味をなくすのだろうなと、真珠は思っている。誰かのものになっても、同じだ。きっと。
景山という神に「鶴って白で折るもんじゃないの? どうして金色なの?」と尋ねられたことがある。真珠は「金色だったらすごくきれいだと思うから」というようなことを答えた気がする。
真珠にとっては金色というものは憧れで、きれいなもので、きれいなものだからよいものだと浅はかに、単純に考えていた。
金色の折り紙ならば、手に取れる。太陽に近づくとと溶けてしまうらしいけれど、折り紙なら。
いきいきとした、生命力を感じられるその色は、今も真珠の心を掴んで離さない。
透司がそうであるように。
透司は金色ではないけれど、金色の折り紙に対する感情に似たものを、彼に見た。
たとえるなら、透司は真珠にとっての太陽だった。
あたたかい日の光だった。
彼は、真珠の体温だった。
海底で生きていた頃、冷たさは感じなかった。それが普通だと思っていたからだ。人間の皮膚は火傷するほどにあたたかかった。驚いて距離をおいてしまうほどに。
真珠の体温はとても低いということを、ここにきて初めて知った。
昔は体温なんて知らなかったし、気にもとめなかったから。
透司は真珠の手にふとふれて「つめてぇな」と言った。「寒いのか?」とも。
真珠は寒くはなかったし、暑くもなかったから「ううん」とだけ言った。
透司にとっての「神様」になれているのだろうか。
醜い化け物の姿をした自分は。けれども、透司の力になりたいのは本当だ。外見を見て嫌いになったりしないということを、真珠は信じている。
――
嫌われてもいいとも思っている。
真珠は、神たちは人間に重要なことを隠しているのだから、嫌われても当然だ。不信感をつのらせるのも当然のことだ。
けれどそんな薄皮さえ隠して、人間のそばに在る。
人間。
人間とは一体なんなのだろう。
強い願いがある。強い感情がある。
真珠はまだ知らない。
人間という生き物のことを。
けれど理解したいのだ。せめてとなりにいる彼のことを。だから今、もうすこしだけそばにいることを許してほしい。
真珠はふと窓の外を見た。
太陽が沈もうとしていた。
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