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2023-06-19 22:34:22
1699文字
Public
櫻神学園
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美しい色だけを知りたい
【第1イベント】
真珠のこと。
・美綴くん【yasuinokikaku】
お借りしています。
小さくて丸い堕神が、集まっていく。
場所は、第一グラウンド。
巨大な、巨大な堕神だった。
慌てた様子でグラウンドに走っていく生徒や神たちがいる。
服はいつの間にか戻っていて、透司も調子をとり戻したようだった。
あの真綿でできた綿菓子ような感覚はすこし心地よかった。
阿古屋
あこや
貝の内側のような髪の毛がちりりと感覚をもつほど、外の堕神は敵意を持っているようだった。
「行くぞ、真珠」
「うん」
ぺたり、と床を踏む。
駆けだした透司の背中を追って、真珠もあとを追った。
第一グラウンドに出ると、「黒い人」がたくさん、あった。
ざわめきの中から聞いた限りだと、その「黒い人」たちは神や人を模しているらしい。
そして、神の能力をも。
大きな堕神は、手の内側からその黒い人たちを生み出しているようだった。
「あれか
……
。デカいな」
透司がぽつりと呟いた。
宙に浮いているから、透司の武器では届かない。けれどすぐに「あいつらからやる」といった。
あいつら。黒い人。
模造品
コピー
。
「うん。分かった」
「
……
? 真珠。大丈夫か?」
透司は油断なくまわりを見渡しながら、真珠の身を案じた。そう、たしかに「恐ろしかった」。
堕神が、ではなく
――
いや、結局は堕神なのだけれど、「コピーされた真珠」がいるかもしれないと思うと、恐ろしかった。
あの、不気味な凹凸が。
間違いなく、誰かのコピーではあるのだが、真っ黒のそれは真珠には遠い過去の自分のおもてのようで、恐ろしかった。
うん、とうなずくけれど、手が震えていた。
やしろにいたとき、
泥鰌汁
どじょうじる
が夕食として出たことがある。
味噌を湯で溶いた中に、泥鰌が浮いていた。
まるでその泥鰌になって、今にも喰われるような気がして、真珠の体は萎縮した。
黒闇無間阿修羅の本性は醜い。
醜い怪物だ。
焦げたような茶色の肌に、むき出しの牛の頭蓋。のっぺりとした白い仮面。その目は空を見ることもできずに伏せられている。うつくしいものを見ることがない。目を開くこともない。
「怖いのか、真珠」
重力に従って、宙から巨大な、3メートルはある棺桶が降ってきた。
地面に叩きつけられた直後、見知らぬ
模造品
コピー
が炎を吹いた。真珠の盾は決して万能ではない。このまま攻撃を食らうだけではなににもならない。
盾が溶けるにおいがする。音がする。
「大丈夫だ。俺がいるからな」
「とーじ、本当のぼくを見ても嫌わないでね」
真珠は顔を手のひらで覆って、囁いた。ぢりぢりという音が聞こえてくる。透司は一度炎を防いでいる盾を見てから、真珠に視線を下げた。
「ぼくはとーじに死んでほしくない」
「死ぬつもりは微塵もねぇよ」
「嫌われたって」
真珠のわき腹から何かが突き出た。焦げ茶色の腕だった。
ばき、ばき、と、骨と骨がこすれ合う音と、真珠の皮膚を突き破る音が重なって、透司はすこし、呆然としている。
真珠の体はあっという間に、異形の化物に変貌した。その化物は体長おおよそ5メートルはある。白い仮面はのっぺりとしていて、ただ目の部分だけすこし、切込みが入っていた。
盾を呼んだ。
棺桶の顔をした盾は地上5メートルから落ちてきて、透司を守っている。
化物の腕は3対あった。地を這い、黒い人たちを地面に叩きつけて固定した。これなら透司の槍で黒い人たちを殺せるはず。
黒闇無間阿修羅は、美綴透司の自信家なところや、野心があるところが好きだった。
人間の気持ちを、心を、あまりにも黒闇無間阿修羅は知らなかった。
洋服のまま湯船に入って、透司に叱られた。
けれどそれも楽しかった。
それが「楽しい」ということを、黒闇無間阿修羅は初めて知った。
嫌われたくないと思った。
それでも、透司は生きなければいけない。
黒闇無間阿修羅は、その思いと正反対に、薬を飲む透司になにも言えなかった。
すべては自分のため。
この地に存在するため。
けれどもし真珠が堕神になったら。
「そのときは、とーじがぼくを殺してね
……
」
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