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ひろっぷ
2023-10-15 10:15:24
1174文字
Public
第五 ハス探
月を見る暇もない
異星×ロナードなハス探🌕
「おや。いつぶりかな、お客神」
『さて、昨年ぶりか。お前であれば知れるであろうに』
満天の星空の中ベランダに腰掛け、ふわりと降り立った来客に視線を向ける。人ならざるものからは瞳が見えないが、確かにこちらを見ているのは明らかだ。そう思えるのは数年この邂逅を果たしているからか。
「そうだったか。
…
流れ星が見える頃にしか降り立てないとは、神の名も随分不便なんだな」
『ぬかせ。そうでなければ自然の摂理が歪む』
「そんなものか」
『左様。今宵は随分囀るな。虫の居所でも悪いか?』
指摘され誤魔化すように白い息を吐く。目を逸らし腕を組むのは昔からの癖のようで、以前にこの怪物に当てられた時は憤慨したものだ。
「
……
さてね、気のせいさ。ところで今年は何をご所望かな、カミサマ?」
毎年月がよく見える夜空の中、人ならざるものは供物を強請る。それは時に物であったり、概念でもあり、ロナードが用意出来そうなものを願う。今年は何だろうかと待っていると意外な答えが返ってきた。
『ふむ。そうさな
…
お前の"声"を』
「声?」
怪物の手がロナードの頬を撫でる。ただ少し冷たいだけで感触は人間と同じだ。ぶるりと震える体を抑え、触れられた手を退けようとすると今度は唇をなぞり始めた。声を、といったのは聞き間違いではないらしい。
『あぁ。今宵は月もよく見える。お前の囀りを肴に"月見酒も悪くなかろう"て』
心臓が早鐘を打つ。意味を聞き返す必要がないほど直接的な謳い文句に思考が止まる。
「
………
僕を口説いているのか?」
『ほう、知れておるか。流石よな』
「茶化すな。何を企んで
……
。いや、あんたにとってそれはない、か。
………………
」
早く、考えろ。文句を。返事を。そう思っても突然の口説き文句に頭が追いつかなかった。今まで星の数ほど口説かれたが、響き戸惑ったのはこれが初めてだ。慣れないことに視線を地面に移せば足元に帯が纏わりつく。返事を促すようにつんつんと突くそれは一つの生命のようだ。
『どうした。疾く顔を見せよ。俯く事は許さぬぞ』
「黙ってくれないか。必死に言い訳を考えているんだ」
『必要あるまい』
「っ!?な、にを」
纏わりついていた触手が足を払い、ひっくり返る寸前で怪物が受け止めた。至近距離に見える宇宙に思わず息を呑む。
『それが答えであると示しているであろう。よもやその面で否定するのではあるまいな?』
「
…
まさか。喜んで"その盃に注いで差し上げましょう"」
『
…
上等よ。して、お前は何を願う』
「
………
そうだな」
見える星はちかちかと光り、急かすように月が2人を照らす。
しかしロナードは毎年決まってこう言うのだ。
「何もない。望むものは何も」
(来年も来てくれるのなら、それでいい)
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