ひろっぷ
2023-04-02 12:06:14
1241文字
Public 第五 ハス探
 

おめでとう、良い一日を

ハス探。㌧おたおめ話。



今日はノートンの誕生日だ。朝一番仲間が起こしに迎えに来て、そのまま広間へと連れられれば後はお祭り騒ぎだ。
催事になれば追う者も追われる者も関係なく交流して騒ぐ間は平和そのものだ。ただ、自分が輪の中心になるのだけは中々慣れないもので、そこそこに付き合った後は外の空気を吸おうと場を離れるのであった。

『やはり不得意か、ああいったものは』
そうだね。騒がしいのは嫌いじゃないけど、どうにも自分が真ん中ってのがね」

ハスターが苦笑しながら隣に並びこちらを見下ろす。この王だけはいつも通りだな、と安堵のため息を吐いて応えるように見上げた。
目上げた先の数多の瞳は何故、弧を描いているのだろうか。
ゾワリと感じた悪寒に気づいた時には遅く、背中を触手に押されればよろけてハスターの胸にぶつかった。悪寒が消えないため即座に離れようとするが、ハスターの大きな手がノートンの腰を確と捉えて離さない。

……、ハスター」
『どうした。我が寵愛よ』
「っ!?……、あっ!??」

耳を疑った。が、この流れは心当たりがあった。
以前何らかの催事で起こった事だ。その際もこのハスターは悪乗りをしてノートンに囁き弄んだ。忘れるはずもない。
公開処刑もいいところだったため悪い記憶としてこびり付いた思い出は、蘇ると共に再び羞恥で耳までをも赤く染めた。

「や、めて。やめろやめろ!」
『ハハハハ。記憶しておるか。僥倖、僥倖よ』
「忘れられるわけないだろ!っひ、ちょ、っと!」
『誰もおらぬ。甘んじて受けるのも悪くなかろうて』
「だ、からって!あんたのそれはっ、優しくない!」

まるで動物を撫でるような手だ。頭から腰まで、毛を撫でるようにスルスルと触る。その触り方がまるで情事の時のようで、躾けられた自分の体はそれを思い出して更に体を火照らせてしまう。
またこの地獄が始まるのかと身構えたが、どうやら今日はそうではないらしく。

『ではどのようにしたいか望みを言え』
……

目を見開いている間に頬に手が添えられ見つめ合う体勢になってしまった。
以前と違う流れに驚いたものの、猶予を与えられ癪に触ったノートンはかの王のペースに呑まれまいと抗う事を決意する。
両腕を伸ばしつま先で立って彼の首に絡めてみる。挑発するように舌を出せば、それに応えるようにハスターはフードからちろりと触手を見せた。
笑い声はどこかしっとりとしているようで上機嫌だ。

「僕のお願い、聞いてくれるんだろ。邪神さま?」
『あぁ、聞き入れよう。して、何を願う』

目を細めて、いつもの彼のように意地悪に笑う。
どうせ後で仕返しはくるのだ。なら何もしないよりは、と思うあたりこの王に毒されているのだろうか。
でも今はそれでもいいかと思える。

「待て、は出来るかな。ハスター」

自分の誕生日なんだ。やりたい事をしてやろうじゃないか。
その言葉を聞いたハスターはいつもより大きな声で笑い声を響かせた。