ひろっぷ
2023-02-05 14:50:57
1390文字
Public 第五 リ探
 

Stop and smell the roses.

"なんでも楽しんで"
夜ロナ(リ探)お風呂話。事後。




ふう、と小さく息を吐く。
辺り一面は白く湯気で一杯だ。仄かに香る薔薇の香りは湯船に浮かぶ薔薇そのものからで、その持ち主は自分の後ろにいる男である。共に浴槽に浸かり至福のひと時を堪能していた。
まず成人男性二人が裸で同じ浴槽に入っている、というのも可笑しな話だった。だが二人が入るスペースは十分にある大きな浴槽であることと、夜来香との情事の直後で疲弊していること、そしてとどめは彼からの願いで断る理由が無かったのが大きかった。何もするな、という条件付きで。

「湯加減はどうですか」
「丁度いい。薔薇は無くともよかったんだが」
「何もないというのも味気ないじゃないですか」

不満を溢しても、彼には一つの話題として掬われるだけ。普段ならあしらう所だが、風呂の気持ちよさからか言葉の応酬をしてもいいだろうとさえ思ってしまう。
夜来香が掬った湯が肩にかかる。少し驚いて見上げれば揶揄いの混じった笑い声が返ってきた。

「すみません。余りにも暇なもので」
……はぁ」

ほら、と後ろに凭れさせようと引っ張られ倒れ込む。
先程までは羞恥故かロナードは縮こまって距離を離し座っていた。密着するのは先程までの情事で十分だったし、何より近づけば何もない、というのはこの男相手に嘘な話。というのをここ最近でよく身に染み付いているからだ。

おい」
「何もしませんよ、えぇ」
「ではこの手は何かな」

後ろから首筋を撫でるように髪を梳き始めた夜来香に、ロナードはピクリと肩を震わせた。だから拒んでいたというのにこの男は口約束もできないのかと思うが、肝心な所では確りと守る。それ故かロナードは強く言えないのだ。
湯気と共に耐えるように息が漏れる。触れる指を払うが、今度は耳に触れるように髪を梳き始めた。何をしても夜来香のペースになり、ロナードはまたかと悟る。
響く水音も重なり余計に感じてしまう。夜来香は何も言わないが確信犯だ。

っ、……やめてくれ。何もしないと言っただろう」
「梳いているだけですよ。まぁ、こんな魅惑の肌が目前にあれば耐えられるかと言われると、まぁね?」
「!、口先だけの男だな、っう貴方は!」
「心外な。守る時は守っています。全てを守っていたら生きていけませんよ。貴方もそうでしょう?」
「貴方と違って必要以外の約束はしないものでねっ!」

約束は破るためにあるようなもの。そう言わんばかりに枷を外して夜来香はよりロナードを引き寄せた。
するりと撫でる手はゆっくりと下へ、ロナードの腹を優しくさすり始めた。先程まで彼のもので満たされていた腹部が不思議と疼く感覚がして混乱していく。

っ、う?
「フフ。失礼、悪戯が過ぎましたね。しませんよ、安心してください」
「加減というものを知ってくれ
「ううん善処します」
(しないな、これは)

ぐったりとして身を委ねたロナードを見た夜来香は変わらず髪を梳き始める。曰く、自分の髪の毛は柔らかく触り心地が良いのだという。触り方も酷く優しく、ここ数年と撫でられる事のなかったロナードは、薔薇の香りも相まって久方ぶりに微睡に落ちていく。

「寝ても構いませんよ」

何もするなよ、と再度釘を刺す。
夜来香が髪に口付ける感覚を覚えながら、ロナードはゆっくりと意識を手放した。