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ひろっぷ
2022-03-28 14:04:53
3626文字
Public
第五 探探
【腐】絆されないからな!!【探探】
【腐】最悪だ、こんな奴!【迷ロナ】
https://privatter.net/p/8616962
の続き。
探探な迷ロナ。おまけで小話。
1
2
3
「やぁ。今日もお疲れ様。調子よかったみたいだね」
男の一日の始まりの挨拶はいつもこんな感じだ。
ロナードが楽屋から出ると必ず待ち構えている。
しかも必ず一人の時を狙ってだ。そもそも大人数で絡んで帰ることを良しと思えないロナードであるからこそ、この現状があるのだが。
「
……
いつも御苦労な事だな。他にする事はないのか」
男の穏和な挨拶とは真逆に刺々しい言葉を返す。
今日は稽古も朝のみ、昼からゆっくりと出来るはずであろうロナードの身は、この男が現れてから一気に疲れた感覚になる。休む暇がないとはまさにこのことだ。
そんな悪態をついても堪える様子のない男はいつも通りに、にこにこと笑みを崩さず橙色の花一輪をロナードの髪に挿した。
「辛辣だ。けど媚び諂うよりそっちの方が僕は好きだよ。この後はオフなんだろう?」
「
………
僕の勝手だろう」
午後のオフの計画を立てていたというのに、今からはこの男が片隅にチラつくのかとげんなりした。未だ触れられている手を払い除け早足でその場をあとにする。
するとこちらを見つめていたであろう男から声がかかる。いつもの穏やかな声のようであり、しかし人を戒める声色となりロナードの足を止めた。
「なんだ」
「ここ最近、また変な人が増えてるから気をつけて。君は夜中に帰る事が多いから、いい格好の餌だよ」
「
……
。忠告をどうも。お前以上に変な奴はいないだろうがな」
役の癖で帽子を掴む動作をしてしまい、手が空を切る様子を男が笑って見ている。ひと睨みした後羞恥を隠し誤魔化すようにより早足になっていく。
男が困ったように苦笑いしているとも知らずに。
そんな男との会話が走馬灯のように蘇ってくる。
(どうする。どうするロナード。考えろ。あいつはいない。考えろ、考えろ考えろ考えろ!)
息を切らせて路地裏を走る。必死に解決策を作ろうとするものの、酸素の回らない頭では何も浮かばず、ただただ右へ左へ相手を撒くために走っているだけだ。
あの男の気配ならばどれほどよかっただろうか。
ここ最近あの男とは別に、ロナードはまた奇妙な存在に付き纏われている。それも一つだけでなく二つ三つと。
しかも今回は殺意を感じて身の危険が迫っている。
今回こそモグラや雀舌に頼ればよかっただろうか、と己の危機感を他所に二人の顔を思い浮かべていた。
(いつまで追ってくるんだこいつら!)
いつもの緑の男ならある程度で気配が消える。それが今この場の変人達はそうではないらしく、こちらが歩こうが走ろうが追いつこうとする。殺されるのか攫われるのか定かではないが、どちらにせよ身の危険だ。しかし、撒けたとしてそこからどうするのかが問題であった。
今は深夜。どこの店も家も明かりは点いておらず、唯一の拠り所は数カ所に点在している街灯だけ。
いっそ叫んでしまえば誰かは出てきてくれるだろうか、と少し血迷った考えが出てくるぐらいには気が滅入っている。こんな気持ちはあの男につけ狙われた時以来だ。
ぐるぐると目がまわりはじめる。頭もまわらない。走る足が止まってしまう。
(息が、できない)
「は、
……
ヒュ
……
」
背後に気配がする。声がかからないあたり殺されるのだろうか。逃げる最中、あの男を思うなんて実に滑稽だ。死にたくなかったな、などと振り向く気力もないまま、どうせならと男について色々と思い出していこうとした。
「邪魔だよ」
誰かが誰かを殴打する音が聞こえる。
地面を見ることしかできなかった景色に影が差し掛かった。靴も見え確信した。
あの男がここにいるのだ。何故、と思うことは色々あったが、過呼吸気味なのもあり喋る余裕もない。
すると急な浮遊感に襲われ、気がつけば抱き抱えられ走りだした男が眼前に見える。抵抗をする力もあらず声も出せず、出来ることといえば睨むのみ。その視線に気付いたのか男は息を切らせることもなく笑顔で応えた。
頼もしいと一瞬でも思ってしまった自分が心底気持ち悪いと思えたほどに。
「君の家までお邪魔するけど、いいかな?」
「
…
知っているだろう。好きにしろ」
「オーケー。仰せのままに」
言葉通り、男は迷うことなくロナードの部屋の前に移動する。抱き抱えたままなのは深夜だから許される事であって、本来ならぶん殴ってでも降ろさせるところだ。
それに降ろせと言って聞く状態ではないのもある。
「さぁどうぞ。僕はこれで」
ようやっと降ろされたかと思えば、男は初対面の時のようにロナードの手を掬って口付けた。
暴力に訴えてもよかったが、今は満身創痍の身。手をとったままにこりと微笑んでこちらの返事を待っている。否、待っていないのかもしれないが。
ロナードが何も言えないままなのを知ってか知らずか、ゆっくりと手を離して踵を返す。はく、と口を数回動かし戸惑ったロナードだったが、ようやく意を決して男の背中に静止の言葉を投げた。
「
……
待て」
先日の頃とは逆の立場で男を呼び止めた。
今回ばかりはこの男に助けられたのだ。つけ狙われていた相手とはいえ、感謝はせねばならない。
「今回ばかりは助かった。礼を
…
言う」
「
………
」
「
…
?おい、何か言っ
……
!?」
男を見たロナードは体が跳ねた。
笑顔はそのままに、しかし張り付いたような笑みで目を見開いている。驚いているのだろうが、今まで見た人間の反応とはまるで違い、どこか人間ではないように思えてしまった。例えるならそう、驚いて動きを止めた猫。そんな感じだ。
「お礼を
…
言われるとは思わなくてね」
「お前のような奴が?山ほど言われていそうだが」
「いいや、誰にも。寧ろ気味悪がられた方だよ」
(否定できないのがなんとも)
話を変えるようにロナードは咳払いする。
「なぁ。僕が好きだと言ったな」
「あぁ。言ったね」
「僕を見るのが好きだと言ったな」
「そうだね」
「僕を護衛する気はないか」
「
……
うん?」
失敗したか、とロナードは内心焦る。不定期にとはいえ雀舌に任せているものの、常日頃は彼本人も拒否している。なら彼よりもこちらの男がいいと思えてしまったが故の提案であったが、この男には予想外だったようだ。
「
…
今のは無かった事にしてく、」
言い切るよりも前に男に手を取られ顔面が目前に迫る。驚きつつも手を取られているため殴ることもできず、しかし男は目を輝かせているため言葉を呑み込むしかなかった。
「いいのかい!?より君を傍で見られる!本当に
…
本当に僕でいいのかい!?」
「あ、あぁ
…
。お前はその手のプロでもないようだから、無理にとは言えないが」
「いや、いいや!是非!」
男のこんな高揚した反応を見たのは初めてだ。初めこそ印象は最悪だったというのに、この一件のお陰でいくらか緩和されたのだろうかというぐらいには、頼っても問題ないとさえ思えてしまっている。しかしロナードは内心必死に否定する。そう、利用するだけだ。こんな邪魔な感情は必要ない。
(気のせいにすれば、大丈夫だ)
認めるものか、絶対に。
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