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ひろっぷ
2021-02-07 00:48:06
2180文字
Public
【腐】君を夢中にさせたい!【trへし】
つるへし。別本丸の長谷部と別本丸の鶴丸の話。※破壊ネタです。なんでも許せる方向け。
「よっ!また来たぜ」
「毎度懲りないな貴様は
…
」
陽気な挨拶に呆れた声を返すのは最早恒例行事となりつつあった。
このやり取りが繰り返される発端は審神者同士の交流であり、鶴丸国永のいる本丸がへし切長谷部のいる本丸に訪問した事。
実は彼らはお互いに初対面。お互いがお互いに顕現していない本丸なのである。鶴丸の本丸には長谷部はおらず、逆もまた然り。そんなこんなで興味を持った鶴丸が、審神者に懇願して巡り会ったのだ。審神者同士元々交流があったようで、話をしている間は自由にしていいという決まりも出来てしまった。
そうなってしまっては長谷部は何も言い返せず、興味津々といった鶴丸の相手をせざるを得なかった。しかし、長谷部には一つ秘密があった。
長谷部のいる本丸に、かつて鶴丸国永はいたのだと。
特に仲が良かった訳ではなかったが、悪戯をし、驚きをこよなく愛する変わった刀という印象はあった。一言二言と言葉を交わすごく普通の本丸の仲間だったように思う。
そして、長谷部を庇い折れたという事実も。
そんな自責の念を抱えたまま、長谷部はしばらくの間他所の鶴丸を相手していた。
いつ話そう、いつばれるのだろう。そんな恐怖も感じながら。だがそれはふとした瞬間に訪れるものである。
「
…
君、なんだかあの時の刀に似ているなぁ」
どきりとした。話しているうち、長谷部自身も既視感を覚えていたからだ。
万屋から少し離れた、寂れた廃屋で一言二言と交わした刀の存在を。知らないと言えばそれだけで済む。だが否定もしたくない、そんな意地が生まれてしまい、きつく拳を握ってしまう。
「
………
」
「な、やっぱりそうだろ。廃屋の刀、君だろう?」
頷く事しか出来ない。
去り際に自分が言った事を覚えているのならば本当に居た堪れなくなってしまう。
『もう、俺の本丸にお前はいないんだ』とそう言ったからだ。それに名を告げずに去ってしまった無礼者でもある。
鶴丸が気にしなくとも、長谷部は気にするのだ。へし切長谷部とはそういう刀だ。だが心の奥底ではどうか覚えていてくれたら、そんな気持ちが芽生えて仕方ない。そしてその気持ちに応えるかのように、この鶴丸はさも自然に尋ねてくるのだ。
「
…
やはり、あれから俺は顕現していないのかい?」
予想できた言葉だ。しかし脳内で復唱するように、しばらくの間響いてしまい返事が出来ない。
今の相手に負い目を感じる必要はないと分かっていても、人に似た心はそう易々と納得してはくれないのだ。
長谷部は静まりかえった部屋の中、畳を見ながらぽつぽつと語っていく。
「俺の、目の前で折れたんだ」
「うん」
「俺を庇って。馬鹿だ」
「そうだなぁ。馬鹿だなぁ俺」
「皆俺を非難すればいいのに、誰も、何も、言わない。いっそ暴言でも吐かれた方が、楽だった」
「そうだろうか」
後悔が雪崩のように押し寄せて言葉が止まらない。何を言っても所詮他所の鶴丸だ。詫びたところでどうともならないし、救われる事もない。なのに何故かどんどんと溢れてくる。それを感じているのか目の前にいる鶴丸は頷き、肯定している。ふとそれが不思議に思い、溢れた言葉がぴたりと止まった。
「
…
お前は」
「うん?」
「否定しないのか、俺を」
「否定する理由が何処にあるんだ?」
「ここの鶴丸じゃない。そう言えば
…
」
「それでも、『俺』だからな」
「!」
畳を見るしかなかった顔を上げ鶴丸を見れば、彼は笑っていた。それは眉を下げて申し訳なさそうに、こちらを心配するような苦笑いの笑みであった。
咄嗟に言い返すべき言葉が見つからず、思わず身体が後ずさる。
「つ、るまる」
「『俺』だったらほぼ間違いなくそうするさ。主が余程の悪人で影響を受けなければな」
「
…
折れた事実は覆らない。お前が許しても、あいつは」
「も〜君はな!」
「!?」
唐突に伸ばされた腕から咄嗟に目を瞑れば、次にあった感触は痛みではなく温もりだった。
思わず呆気に取られ口を開けていると、今度は顔が迫り開いた口を塞がれた。塞がれたのは一瞬で、その直後目の前にあったのは鶴丸の満面の笑み。
かつての鶴丸も放っていた邪気のない笑顔だ。理解が追いつかず疑問符を浮かべる長谷部をよそに、鶴丸は次々に告げていく。
「長谷部。その気持ちは忘れないでくれ。かつての『俺』がした事を。でも、これからはそれを昇華出来る様になるぐらい、俺が君を夢中にさせてみせる!」
「な、なにを
…
?」
興味本位で聞いてしまった事を後悔した、とは後の長谷部の談。
「君に、この俺を好きになってもらう!」
「!?」
この鶴丸には本当に驚かされてばかりだ。負い目を感じ最初こそ邪険に扱っていたものの、彼からの好意は留まる事を知らず、気がつけば絆されていたなどと誰が信じるだろうか。認めたくないと思っても所詮は後の祭り。彼は今後、この刀に振り回されて落ちていくのだろう。
『後ろを振り向く暇があるなら、前を見て歩け』とかつての鶴丸は言いそうだ。そう思える自分は少しだけ救われたような気がした。
しかし口から出た言葉はそんな前向きな気持ちとは裏腹なもので。
「う、うるさい!一生認めてたまるか!!」
渾身の抵抗がいつまで続いたのかはこの本丸の刀たちのみぞ知る。
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