ひろっぷ
2020-01-18 17:54:02
3797文字
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【腐】驚きと主命の小話 -弐-

trhs。ほとんど会話のみ。少しだけ創作審神者が喋ります。



【鶴丸であろう何か、と長谷部】

寒くないか、と頭上から声がする。

「あぁ。お前のおかげでとても暖かい」

どこも痛くないか、とまた声がかかる。

「大丈夫だ。お前のおかげで痛くない」

沈黙。身動ぐ音が傍で聞こえ、こちらを労わるように向きを整えている。なんだかそれが少し癪に触って羽であろう場所を少し引っ張る。
冗談交じりに痛い、と笑って返された声からは緊張感がまるでない。そしてそれに触発されこちらも笑みが零れる。

(普段のこいつがこれほど紳士なら俺はどうなっていたのやら)

しかし、思っていても言わないことにした。




【余計な世話は焼かない】

「長谷部、少しいいか」
「膝丸。どうかしたか」
「この書類どうも昔の仕様のようでな。君なら分かるかと思って」
「見せてくれ。なるほど確かにこれは
……ん?長谷部、生ける趣味でもあったか?」
「あぁそれか。最近部屋の中に一輪ずつ置かれていてな。誰かは分かるだろう」
……あぁ。なるほどな」
「手を替え品を替えよくもまぁ飽きないものだ。ほら、こう書くといい」
「ありがとう。そうだ長谷部」
「なんだ」
「偶には押されるより押してみてはどうだ。余計なお世話だろうがな」
……考えておく」




【めんたるけあ】

………
「なぁ長谷部」
……
「君に悲しい顔をさせてしまった覚えがないんだが、どうかそれを教えちゃくれないか」
「お前のせいじゃ、ない。気、にするな」
困ったな。そんな顔を前にしてはいそうですかで帰る俺じゃないぜ。そうだなそら」
「!」
「言いたくないならそれでいいさ。だがその顔が晴れるまではこうしててもいいだろう?な!」
……ふん。仕方ない
「おうおう。助かるぜ」




【可愛いのが悪いのさ!】

「なぁ長谷部、いつになったら俺の愛は届くんだい?な〜あ〜」
俺は、可愛くない」
「ん?うん、長谷部は格好いいな」
「他の刀のように愛想よくもない」
「そんなの長谷部以外にもいるさ」
「積極性もない」
「知ってるぜ。君は一振を好むんだろう」

「そんな俺でもなのか。そもそも俺は女人でもない」

「あのなぁ!」
「鶴丸?」
「男だとか女だとかそれよりも!君だからだぞ!」
……
「戦場で速く駆ける君が好きだ。敵を屠った時の微笑みが好きだ。しかし帰城した後の穏やかな笑顔も好きだ。君は俺を魅了するのがとても得意なんだろ。後は
「も、ういい!分かった!何故そうもつらつらと言葉が出てくるんだお前は!あぁあぁ熱い」
「伝わったかい?俺がどれだけの気持ちで伝えてるか」
……あ、あぁ。だが、その」
……
「本当に俺でいいのか」
「君に邪険にされても諦めなかった俺だぞ。いいも何も、俺がそうしたいんだ」
………
「な、長谷部!ん!」
「?」
「ここにこい!嫌なら後ろに逃げてくれてもいい。だが俺は諦めの悪い刀だ。どこまでもいつまでも追いかけてやるぞ!」
「う、ええい!責任はとれよ!!」
「任せておけ!わぶっ」
「お、おい!」
「へし切長谷部ー!愛してるぞー!!」
「大声で叫ぶな馬鹿者ー!!」




【平安ジョーク】

「君の交友関係に口を挟むつもりはない。ないのだが
「なんだ。随分歯切れが悪いな。遠慮せず言ってくれて構わん」
「では言うが。何故鶴丸なのだ?」
「何が?」
「何というのか生涯を共にする仲だと」
「言ったのか、あいつが」
「まぁ」
……そうだ。不思議だと思うだろう?」
……まぁ」
「俺も何故だと自分に聞きたいぐらいだ。あいつには理由はあるらしいがな。この前主が仰っていた、『好きになるのに理由がいるか?』というのがまさにそれだ」
「ほう」
「結局、奴も俺も物好きというだけだろうな」
「元物だけに」
………
……何か言ってくれ」





【名を呼んで】

「鶴丸ー!鶴丸ー」
「どうされましたか主。鶴丸に何か」
「あぁ。少し部隊の変更があって連絡をしておこうと思ったんだけどどこにいるか分かる?」
……少しお待ちください」
「?」
「鶴丸。主がお呼びだ。早く来い」
「ふぁ。すまんすまん」
「!?さっきまでそこ誰もいなかったよな?」
「ん?俺はずっと『ここにいた』ぜ」
「え、ぇえ?」
「俺の声にしか気付かないそうですよ、こいつは」
「??そうか」
(諦めたな)




【冬に鶴を呼ぶ】

「主が雪降らせたってか。こりゃ壮観だ!」
「お前が庭に立つと見にくくて仕方ないな」
「お。なんなら消えてみせるかい?」
「いらん。そもそも俺が呼べばお前はすぐばれるだろう」
………違いない!」




【飴のような瞳】

「つ、鶴丸……
………
……まだか?」
……もう少し
…………うぅ
…………

「あー」
「!?つる、ま!痛ーーーっ!!」
……………
「どうした長谷部。光忠のような眼帯をして」
…………菌が入って腫れただけだ。じきに治る」
「?そうか」

(歯形など見せられるか)





【結局は】

「昔の長谷部は可愛かったなぁ。料理だって拙い動作で堪らないと俺の中で評判だったってのに」
「何を言ってるんだお前は。そもそもいつの話だ」
「そりゃぁ創設初期の頃の厨事件だろ」
…………あれか。いやあれは不可抗力だろう」
「そういえば僕が来る前って長谷部くんだったっけ?」
「まぁそうだが。光忠、お前は初め鍋を爆発させただろう」
「うっ言わないでよ恥ずかしい」
「俺はもっと酷かった」
「えっ」
「長谷部はな、厨部屋を燃やしたんだ。半分な」
「えっ……えっ!?」
「もうどんな原因だったか覚えていない。だが確かに記憶しているのは燃やした事だ」
「その瞬間厨にいたのが長谷部だけだったってのは俺も覚えちゃいるが騒ぎを聞いてすっ飛んでったら燃えてたんだよな。ありゃ驚いた」
「や、火傷しなかった!?手入れで治るって言っても限度があるからね!?」
「大丈夫だった。皆が消火作業を手伝ってくれたからな。あれは早いものだった」
もう。心配するだろう。でも今は見違えるほどだね。僕が担当するようになって余り立たなくなったろう?上達する機会あったのかい」
……こいつがな」
「ふふん」
「?鶴さん?」
「俺が厨に立たなくなってからもこいつは何かと俺に作れと強請るんだ。包丁での傷は増え、火傷も適度にして、涙を流しながらだぞ」
「えっ!泣いてたのか!!惜しい事をした!」
「玉ねぎだ馬鹿」
「結局惚気かぁ」





【小悪魔】

「君から愛の言葉を聞いた事がないな。あぁ困っちゃいないが、聞けりゃ嬉しい限りだ」
……聞きたいのか」
「えっ」
………
…………
「やはりやめておく」
「そんな!」
「なんてな」
「!?」
「お慕い申し上げております。いつまでも、いつまでも、この身果てるまで」
…………

……長谷部くん、鶴丸さんが夕餉からずっと放心状態なんだけどどうしたの?昼は一緒にいたんだよね?」
……さぁな」




【君を、見つける】
※現ぱろ

物心ついた頃からずっと一人だった。もちろん両親がいなかった訳じゃないし、友人がいなかったわけでもない。
ただ、『一人』だなと常々思っていた。
何もない部屋に一人いるような、そんな感じ。
そしてその感覚のまま高校、大学へと問題なく進学し、めでたく社会人デビューを果たした頃、異変が起きた。

「なぁ!!」

会った事もないはずの、しかし聞き慣れた声が背後から聞こえ振り返った。
透き通った白の髪、今にも消えそうな見た目をした男が、俺の腕を掴んで引き留めたのだ。
普通ならどちら様ですか、と聞くだろう。
しかし口から出た言葉は俺自身も驚く程柔らかい声と共に滑り出た。

「なんだ。………?」

何故だろう、と思うと同時に、男を見て泣きたくなった。遅い、だとかやめろ、だとか軽い罵倒が頭の中につらつらと浮かぶ。
それを見た男はにっと笑って掴んでいた手を離す。男の行動に何一つ頭がついていかない。

「すまないな。余りにも君が俺の連れに似ていたもんで、つい叫んでしまった」
……いや」

混乱する頭で怒る気になるはずもなく、俺は男の行動の末を見ているしかなかった。

「俺は五条国永。ここで出会ったのも何かの縁だ。一つ、俺の探し人のために話をしようじゃないか」
…………

差し出された右手。知らない相手のはずなのに、どこかその手を拒否する事が出来ない。そして今まで生きてきた中『一人』だった感覚が、この男といるとまるでない事に気付く。もしかすると、この人ならば、あるいは。
襲いかかる不思議な既視感と共に、応えるように俺も右手を差し出した。

「長谷川だ。力に……なれれば、いい」

………………

なんて事もあったな!」
「あぁ。お前完全にあの時不審者だったぞ。髪は地毛だからまだしも、戦装束の時みたく服も白は浮く」
「ええ〜?癖だしな
「まぁ人混みでもすぐ見つけられていいが」

(やめろとは言わないあたり、やっぱり好きなんだよなぁ)