ひろっぷ
2019-09-08 02:00:42
2145文字
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かくれんぼ

弟丸がじぇらしっちゃって主をしまっちゃうお話。



「隠れんぼをしよう、主」
「え?かくれんぼ?なんで?」
「なんとなくだ」

そういってこいつは笑う。目が笑えていないように感じるのは気のせいだろうか。

「どちらが鬼でも構わないぞ。どうする」
「う〜ん。お前偵察苦手だったよな。俺隠れる」
「あいわかった。では十数えるから何処かへ隠れてくれ」

膝丸は一、二と数を数えていく。慌てて分かりにくそうな、しかし本丸に住んでいる者であればそこかと納得出来そうな所を急ぎ足で探す。ふと疑問点が浮かんだ。
あれ?いつ俺はかくれんぼを『する』と言った?
考えながら厨の収納箱へ足を入れる。
それにどうして誰もいない?ここは台所だ。
誰かいるはずだろう。でも今はかくれんぼを始めたばかりだ。もう十は数え終わっているだろうし、声を出すとすぐ居場所が分かってしまう。

「もういいかい」
……もういいよ」

聴こえているか分からないけど、とばれないように細々と答えた。

「十」

あ、膝丸の声。まだ遠い。

「九」

ん?近いけど膝丸のことだ、分からないだろう。

「八」

あれ。また近くなった。

「七」

あれ?

「ろく、……おや、ここにいたか」

お前は普段そんな顔だったか?そんな声だったか?知らない。知らない。

………っ!」
「む。まだ続くのか。良いぞ」

「なんでっ誰もいない!」

本当に、あいつの兄ですら見かけることはなかった。無我夢中で走ったが、あいつと俺以外本丸にいない。真昼間なのに、誰もいない。

「五」

なんのカウントダウンだ。なんなんだ!

「ここに、誰もいないと思っただろう」
「!」

あいつは、また、笑って言う。

「そうした。俺が、そうしたのだ」

あいつは嘘を言っていない。俺はそう悟った。震える足は言うことをきかず、不自由な足が更に不自由に感じてもどかしかった。

「四。君は、……。いや、何を言っても過ぎたこと」
「あ……待て、膝丸。なんだ、なんで」

かくれんぼ、するんじゃなかったのか。

「三。そうとも。隠れんぼだ。二。兄者とて譲る事はしない。必ずだ」

なんの、話なんだ。

「一」

目の前、俺は見上げ、こいつは見下ろし恐怖の時間が過ぎていく。カチカチと時計の音がうるさいが、何秒とも動いちゃいなかった。そして目の前に黒の手がかざされ。

「主」

真っ暗になる俺の目が見たあいつは、どんな顔をしていたっけかな。

…………

「さぁて。弟といえど鬼は斬ってしまわねばならないね」

僕が散々言っていたろうに、お前がなってしまっては元も子もないだろう。嫉妬は見苦しいとはよく言うけど、お前のそれは一等綺麗なものだ。

「だから、まぁ」

斬られる頃には、言葉に出来ない程尊いものに昇華していておくれ。

……

主。政府から通達だ。その膝丸を解体せよと」
………
「今回、前もってこの通達があること自体が稀だ。普通なら問答無用で押し入って実力行使になる」
………
「主。政府は待ってくれないよ」
「まだ、聞いてない」
「何を」
「あいつからの言い訳だ。どうしてこんな事したのかって何も聞いてない。何となくだったのでもいい。答えがない」
…………
「会わせろ。あいつに。あいつだって分かってる」
……ふふ」
「真面目に言ってるのに」
「真面目なのは承知の上さ。さすが、俺が認めただけはあるなと思って」
「?」
「政府はここの所やりたい放題な輩が目立つのでね。ひと泡ふかせてやるか。さぁ、近侍くんと会うといい」

……………

「行ったかい?」
「あぁ。貴方もお疲れ様」
「あの子達のためだもの。火の中でも水の中でもなんだってするよ」
……本音は」
……弟があれほどになるまで溜め込んでいたと思うと、兄ながら申し訳なかったなと思った。感情は人の身である以上逃れられないものなんだって改めて感じたよ」
………そうだね。政府の元で働いてた頃は、心が壊れた刀をたくさん見たものさ。それこそ『心が折れる』。感情なんて早々制御出来るものじゃないし、だからこそ過ちを犯すんだろう」
「うん。うん」

…………

「獅子王くん、聞いたかい?膝丸さんが戻ってきたって話」
「戻ってきたも何も。元からいただろ?」
「え?」
「ん?」
「ご主人様もいなくなってた話だよ?」
「おう。お前達はいなかったかもなぁ」
「え?何?どう言う事なんだい!?」
「知らない方がいいぞ」
「えーっ!」

………

「結局、俺達他の刀は一時的に目くらましさせられていたと。一瞬の感覚であればそりゃあ違和感はないな」
………
「膝丸。お前を責めているんじゃない。もし俺達がお前と同じ状況に陥れば、大体似たような事をすると思う」
「し、しかし」
「あー!やめやめ!誰も責めてないんだ。それでいいんじゃないか」
「鶴丸
「真面目な一期一振ですら何も言わないんだぜ」
「それは思っていてもただ黙っているだけでは
「聞いた」
「聞いたのか」
「『まぁ、はい』って濁されたがありゃ肯定だな」
……
「とにかくさ。気負うなよ。またやらかしそうなら兄が事前に動くだろうよ」
「そうだな」