ひろっぷ
2019-08-25 22:02:41
691文字
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A Night Come's

魔法使いと何か。





「夜は気をつけろよ」

なんて言われた事が記憶に新しい。言われてから確かに出ないようにはしていたが、急な仕事が入ったため外出せずにはいられなかった。

目の前の光景はなんだ。自分は夢でも見ているのか。いや、この街で『夢』というものは見ない。ではこれは。君の目の前にいるそれは。
深夜近くに、それは大通りで何かに跨って蠢いていた。
正確にはぼり、ぼり、と何かを噛み砕いているような音をさせて。見覚えがあった。
そもそも間違えるはずもなかった。ここへ来てから苦楽を共にしたはずのそれだ。浮かんだ感情といえば、恐怖と疑問が混じったような。
何をしているのか。と尋ねたつもりだったが、口から出たのは吐息のみ。
これ以上近づく事もできず、君からやっと溢れた言葉はラギト、という呟きだけ。それも聴こえているはずがないと思った。投げかけたわけではなかった。

しかしそれは振り返った。

暗闇で赤い目だけがよく見える。ぞわりと毛が逆立つ感じがした。ウィズがいればそうなるだろう。実際、君も冷や汗が止まらなくなった。相変わらずそれはぼり、ぼり、と食べつつ、君を見つめ捉えて逃がそうとはしない。
やっと、君の口からはっきりと何をしているのかと声が出た。何かに操られているのならばこの問答に意味はない。だが君は感じていた。これはそうではないのだと。

………夜は、気をつけろと言っただろう」

立ち上がったそれは食事をやめ、君とは反対の暗闇の方へとゆっくりと歩いていく。ひたひたと歩みが小さくなっていく音を聴き、食後の残骸を見ながら、今後のそれとの接し方に頭を悩ませるのだった。