ひろっぷ
2019-05-29 20:23:24
1756文字
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認知閾

にんちいき。思い込みはメリットもデメリットもある、ということ。※創作審神者♂






刀と刀が擦れ合う。演練の場ではそんな金属のぶつかり合いが常に響いている。それは早朝であっても夜中であっても絶えることはなく、まさに血湧き肉躍る戦いというものである。ある者は道場、またある者は闘技場と呼ぶのは的を得ていると審神者は一人頷いていた。

(またか)

観客の視線が集中する先、その刀剣男士達はいた。審神者が有している源氏の重宝の二振。髭切と膝丸だ。
ほとぼりが冷めた今なら出ても構わないだろうと政府からの許可がおり、我先にと申し出たのはもちろんこの二振だ。待っている間も他の試合を見て堪らなかったのだろう。順番がくると走り出すように審神者の先を歩いていった。

「俺もあいつらと同じ時代の刀だけどさ、あそこまで血気盛んじゃねぇな」

審神者の護衛として連れて来ていた獅子王が顔を引きつらせて声を震わせる。

「はは」

乾いた笑いしか出ないのは事実だ。実際、予選だなんだというものを軽々と突破していくのだから期待しないはずもない。

しかしここ最近、演練では不可解な刀達と遭遇するという噂が立っていた。

不思議な雰囲気がある刀らしきもの。
斬っても当たった感覚を得られず、戸惑った隙を狙って斬りつけられる。そして陣形が乱れ敗北。
そんな部隊と我々が当たらなければいいが、と心配した矢先それは起こるものであり。
先に進んでいた膝丸や髭切が戻って来ている。心なしか先ほどより更に落ち着きがなさそうだ。

「主、いるぞ」

「おやおや」

……なんだあれ」

二振の視線の先、それはいた。
姿は人の形を保っているが雰囲気は禍々しく、まるで検非違使や遡行軍のよう。けれど、それらに該当するのでもない謎の存在。
噂の出所は出向く前に肥前や長義からある程度聞かされていたが、どこかで政府に仇なす者が動いているらしい。そんな噂がある中で政府が許可を出すというのは上手く出来すぎている。
審神者はここに来て、ようやっと自分達の存在意義を見出した事にため息をついた。元凶は政府に任せるしかなく、ともかくは目の前の悪を排除せよということらしい。

「膝丸」

隊長に任命していた刀を呼ぶ。振り返らず肩を僅かに動かし応えた。それと同時に目前の格子が開いていく。まるで猛獣を開け放つ檻のよう。間違ってはいないし、今なら好都合な環境だろう。

「ここは演練の場だ。思い切りやって構わない」

……承知した」

口の端が避けてしまうのではないかと思うぐらいに笑う。隣にいた髭切はその弟の様子を見て肩をすくめるが、同じ気持ちなのだろう、弟とまではいかないが口が笑みの形を作る。

ふと、どこからか人の声が聞こえてきた。

『なぁ、あの膝丸と髭切、なんであんなに強そうに感じるんだ』

(練度の問題じゃないのか?)

『うちのとこじゃこんな雰囲気出しませんよ。何か使ってるんですかね』

(使う訳ないだろ)

『では何故』

『いくつもの魂を感じるのか』

(?何を言ってる?)

『まるで蛇のようにしなやかだ』

『まるで獅子のように猛々しい』

矢継ぎ早に囁かれていたが、最後のその二言で審神者は腑に落ちる。横の獅子王が不思議そうにこちらを見るが知ったことではなかった。

「あ、あぁ〜」

「主?」

彼らはただ知らないだけだ。刀自らが明かす事がないため、普通は気にならないのだろう。
しかしこの審神者は興味があった。刀と仲良くなぁなぁに、なんて軽い気持ちではなかったが、知らなければ失礼になると思った。そんな行動理由があった。
だから調べた。鬼切、友切、姫切、蜘蛛切、薄緑、その他色々。もちろん諸説ありきだが、特にあの源氏の二振は名前が幾度となく変わっていた。その名前にもきちんと由来があったし意味もあった。名は体を表すとはよく言うが、それが審神者の知識と繋がって彼らに影響を及ぼすというのなら、強くなるのなら。

(他の審神者がまだ、知らないだけだ!)

「あれはもう救えないらしい。存分に、試合ってくれ」

「あぁ、あぁ!またとないこの昂り!」

「やらせてもらうよ。今日は斬りたくて仕方ない!」

目の前の不可解な敵が灰になるまで、あと何秒か。
誰も予想が付かないまま、二振りは地を駆けた。