ひろっぷ
2019-04-04 01:42:37
971文字
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膝丸と審神者と奇跡の話

前の話の続きっぽいもの。尻切れとんぼ感。まだ病持ちだった頃。
※創作審神者(名前なし)

膝丸と審神者と奇跡の話



亀甲貞宗が顕現しひと月経った頃、膝丸が鍛刀された。兄を探しているようでここにはいないと告げると残念そうな顔をしたが、いつか来るのだろうと気持ちをすぐに切り替えていた。

「ごめんな。兄さんもすぐに見つけられるようにするから」
「構わない。兄者のことだ。どうせふらりと来るに違いない」

笑って返す膝丸。しかしふと真顔になりじっと審神者を見つめだした。何か失言してしまったのだろうかと慌てる審神者だったが。

「ど、どうした。何か」
「主、失礼する」
「え?」

座っていた審神者の目線に合わせるように屈み、彼も亀甲と同じように身体の隅々を優しく撫でていく。
くすぐったいだとか痛いだとかは一切感じず、ただ割れ物に触れるような手つき。聞くと彼らはただ"触れているだけ"といい、それ以上の答えを返してくることはない。これは神の力ではないのか、と政府に問うても返ってくるのは答えられないとのことだった。
実際、触れられてからじわじわと審神者の体調は回復している。というより寧ろ成長しているとさえいえるその効果は、審神者本人でさえも少し恐ろしく感じてきているほどだ。このまま、何か異形の物にでも変えられてしまうのではないかと。

「主」

静まった空気の中はっきりとした声が審神者を呼び戻す。

「俺たちはただ本当に触れているだけだ。主が回復してきているのは、きっと主の治りたいという気持ちも大きいからだろう」
………

見透かされているように、顕現されたばかりの刀が審神者を見つめてくる。
側では亀甲が笑って審神者を安心させようとしているのが分かり、それだけが救いだった。

「怖い、だろうか」
「こんなとんとん拍子になんて今までなかったんだ……。そりゃそうだろ」
「では触れる事は」
「それも駄目だ」
「何故だ。恐れるのであれば」

ぎゅっと服の裾を握る。
確かに怖いが、それは知らない誰かに施された場合に比べればだ。今自分が鍛刀し、顕現させた刀剣達ならば例え何かをされようと悪い方向には働かないはずだろう、と信じたいのだ。

「信じるよ。俺のためだろう」
「ただ触れてるだけなのだが君がそう言うなら了解した」

その問答を最後に、それは本丸での暗黙の了解となっていくのであった。