ひろっぷ
2019-03-02 22:15:03
2144文字
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病弱だったさにわのはなし

※細かい審神者設定はないけどうちさに
※書きたいとこだけ書いた感


どんな病気だと明言された事は一度としてなかった。

常に体が怠く、おかげで歩くこともままならない。昔からそうだった。
両親は健康体で自分の見た目も健康そのものなのに、と色んな医者から何度も聞かされた。幸か不幸か耳だけはよく聞こえている。

(いっそ聞こえない方がよかったのに)

なんて思ってはいるが消して両親を恨んでいるわけではない。

恨んでいなかった。おかしな所へ連れて来られるまでは。

「審神者?」

「はい!主さまには政府からの依頼として、歴史の歪みの調査をしていただきたく!」

最初は初めて聞いた単語ばかりで驚いたが、刀の付喪神という存在が顕現されるとある程度察してしまった。
綺麗だと思う。自分と同じ男子とは思えぬような容姿端麗さ。
だが同時にこうも思う。

両親は神頼みという名目で厄介ごとを投げたのかと。

「主、大丈夫?」

顔を覗き込まれはっとなり申し訳なく目を伏せた。今はまだ何も分かっていない。もしそうだとしてもはっきり決まったわけではないのだと。そう言い聞かせて心配してくれていた彼に笑って返した。
上手く笑えているといいが。

「俺は加州清光。よろしくね」

「あぁ、よろしく」

加州の手が添えられた時自分の手が暖かい光を放ったのを不思議に見ながら、これからのことを少し考えていた。



数日経ち彼らの存在にも慣れてきた頃、更にまた一本の刀が顕現する。

「ぼくは亀甲貞宗。名前の由来?……ふふっ。ご想像にお任せしようか」

書物を読み漁ると彼は徳川家由来の国宝だという。今までの刀剣達も同じ国宝としての存在が多かったが、こと彼に関してはとても印象的だったように思う。

「俺は見ての通り病気で動くことが出来なくてな。色々と呼んでしまうかもしれないがそこはよろしく頼む」

「病気なのかい?分かった。ぼくに何でも命令してくれると嬉しいな!」

加州の時と同じように手を添えられ、またも淡い光が見えた。偶然にしては出来すぎているとは思うが、前回も今も、どことなく身体がいつもより軽く感じる。

「亀甲。もう一度してくれないか、それ」

「それ?」

「手を握って欲しい」

「分かったよ。あぁ、初めての命令だね!」

性格が少し個性的なようだがそれは置いておいて、審神者が感じた違和感はやはり間違いではなかった。刀剣達が触れるとこちらの体調が良い。それは一時的なものではあるが、怠い時と比べれば雲泥の差というもので。欲を言えばずっと握っていてほしいと思ったが、顕現したばかりの者には先輩の他の刀剣達に教えを請うことが決まりと化していた。

「ありがとう。さぁ、他の奴に色々教えてもらうといい」

……………

じいと黙ってこちらを見つめる亀甲はまるで芸術品のようで。直視出来なくて思わず明後日の方向を見てしまう。誤魔化すように行けと催促をしても動こうとはしなかった。

「亀甲?」

「ご主人様。ぼくは分かるんだ。何となくだけど体調が良くなったろう?」

「!!なんで

確信が持てるまでは黙っていようと思っていた矢先だった。もしかすると一時的なただの自分の幻覚なのかもしれないと。だが当の本人の一振りから言われてしまえば認めないわけにはいかなかった。嬉しさと未だに信じられない気持ちとでせめぎ合って握られた手が震えている。

「あぁ、あぁそうだ!でも、一時的なものかもしれない。だから!」

「違う。これも何となくで申し訳ないけれど、前より悪くなったことはないだろう?」

「あ……………

否定が、全くできなかった。
審神者としてここに就任した時より、遥かに体調は良い。寝たきりになっているより、座っていることが増えたように思う。徐々の変化だったためか意識をすることがなかった。

神頼みなんてと両親を恨みかけた。
治るわけがないと一人で諦めていた。
こんな非現実な所で生きられるわけがない。

まさかそれが全て覆されるなんて思わなかった。浮き足立つ気持ちが溢れて手の震えが止まらなかった。握られた手を見つめぼんやりと景色が滲む。あぁ泣きそうだ。

「俺………俺は……!」

「うん」

「治るのか……本当に?」

「ご主人様に頑張る気持ちがあれば。なんならほら」

亀甲が立ち上がって再び手を差し伸べてくる。

「立てっていうのか?」

驚いた声に亀甲は笑って返す。

「ご主人様次第、だよ」

差し伸べられた手を力強く引っ張りよろけながらも布団から立ち上がる。ここまでは病院で今まで出来ていたことだ。ただ、立つことはできても歩くことは出来なかった。
遠慮がちに一歩、と足を引きずるように動かす。

「嘘だろ……嘘だろ!」

畳の上をまた一歩、動かした。何の補助もなしに自分が歩いている。側には亀甲が控えてくれているが、いざという時以外は手を貸さないらしい。それが逆に頼もしく感じた。

「加州!加州!」

「なに主ぃってぇえ!?歩いてんだけど!?」

「ふふ」

「しかも誰!」


それが、この本丸の審神者の人生の起点となるのだった。
就任して一年が経った頃には、元気に動き回る審神者の姿が見られたという。