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ひろっぷ
2018-10-10 00:08:31
1833文字
Public
王に慈愛を
自己設定ばりばりなので移します。
ラン剣。
※剣サーの過去は自己設定です。後長い
無理をした行軍続きで兵士の士気が落ち始めた頃、ようやっと賊を完全に鎮圧できたとの知らせを受けた。
これでひと段落。
アーサーは小さく一息つくと皆に帰還の号令をかけるのだった。
___馬を歩かせている途中、湿りスンとした匂いが鼻をかすめた。一目で分かった。
「?アーサー様、如何なさいました」
「降る」
「?」
「雨だ」
「確かに暗くなってきましたが......」
部下が言いきる前に、雨粒一つ。
ポツリポツリと落ちてきたそれは次第に多くなり、部下達も慌てて帰路の足を速め始めた。
ただ二人、上を見上げたまま目を離さない王と、それを横で見つめていた騎士を覗いて。
♦
城へ戻ったアーサーは部下達が目の前を行き来する様を見つめていた。
(雨は嫌いだ)
思い出す、過去の自分の環境。
良いか悪いかと言われれば悪い。
裕福に生まれたが故の居心地の悪さだった。
城の壁側、誰にも見えない場所で一つ屋根の下立ちつくしながら思い出していた。
思い出したくなかったものだが。
ふと自分がはめていた手袋を取る。何時までも治らない過去に受けた傷が生々しく残っていた。
自嘲気味に笑ってしばしの間見つめていた。
思わぬ来客が訪れるまでは。
「王よ、それは何だ」
「!」
ランスロットだった。彼にも見せていない腕を咄嗟に隠してしまう。彼の顔がますます不機嫌に歪む。言い逃れはできないか、とアーサーは半ば諦めていた。
「それは何だと聞いている」
不機嫌な雰囲気を隠す気もないランスロットがアーサーの腕をつかみ上げた。
「昔の傷だよ。気にする事はない」
「隠していたのか、今まで」
「隠すという程でもないが・・・。兵が不安になってもいけないだろう。何しろ・・」
個人的には、決して聞かれて良いものでもないのだから、とアーサーは目で訴えた。
「これは何故できた」
「体罰、というやつだ」
「・・・・」
「私の両親は仕事人だという事は以前話したろう。それゆえか子供に接する方法も知らなかったのだから、私に愛情など注いではくれなかった。メイドなり執事なり雇えばよかったものの、それすらもできない多忙ぶりだった。で、両親がやっと求めてくれたものといえば・・・・能力だ」
「体術や剣術より、頭の方を求められた。しかも出来なければ平手打ち、それは徐々に酷くなって道具まで使うようになった。だが私はそれを愛情だと誤魔化して耐えるしかなかった。たった一人の跡継ぎなのだと言われてしまえば、どこへも逃げる事はできなかったから」
「それが終わったのは体罰を受けてから10年経った頃だ」
「10年だと!?貴公、耐えたというが正気なのか!」
「私は今こうしてここにいる。それが証拠だ」
「・・・・・っ」
「父が病に倒れた事をきっかけに、母も後を追うようにしてこの世から去った。正直地獄から脱出できたとホッとしたよ」
「あれからまた5年ほど経ったが、傷がしぶとく残っているのはこの腕と足、それから背中だな」
「体罰ではない・・・・拷問ではないか!」
「今思えばそうだったろうな。だが、幼い私にはそれが何かは分からなかった。皮肉な事に学校は行かせてもらえていたし、友もいたからまだ耐えられたのだろうと思う」
「・・・・っ!・・・・」
言葉にできない怒り。ランスロットはアーサーの腕に縋りつくように頭を垂れた。
雨がまたいっそう激しくなってくる。
ランスロットの怒りと共に。
「そうやって憤ってくれる者がいる。それだけで私は今まで生きてこられたのだ。」
「昔の友は、政治の中に身を置く私のせいで死んでしまったが・・・・そなただけは・・・・・そなただけは死んでくれるなよ、ランスロット・・・・」
「死ぬものか。こんなに弱い貴公を置いて死ねるものか」
「もう弱くはない」
「どこの口がそれを言う。こんなに傷をつくって。反抗しようと思わないのか」
「思えなかった。思いつかなかった」
「・・・・・全く。忌々しいこの傷をすぐさま消してやりたいぐらいだ」
「ランスロット・・・・。ハハ・・・」
「何が可笑しい」
「私は幸せ者だなと思ってな・・」
「・・・・・・」
(その弱弱しい笑いが、人をどれだけ不安にさせるのか分かっているのだろうか)
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