ひろっぷ
2018-07-11 14:00:31
644文字
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夏の農夫と魔法使い

まだヒビキ→←魔法使いの両片思いな頃。




バシバシと地面を叩く音がする。正確には砂浜を何かで叩く音。朦朧とする意識の中、君はどうにかその音を拾って手離すまいと耳をすませていた。頭上から乾いた笑いが響き、目だけを向けるとヒビキが隣に座っている。

「休めよ。後でスイカ取っとくからさ」

君の額に触れた手はほんのり冷たく、彼が無意識ながら魔力を注いでくれているのだと分かった。若干ながら火照りも緩和されたように感じる。
それを言うなら君も。そう言えば彼が困った顔をして君を見下ろす。まずい事を言ってしまったのだろうか。

「あんたが倒れたのを見捨てると思うか?暑くたって冷や汗かいたぜ」

失言だったようだ。

「他人を気にするのもあんたらしいが、自分あっての他人だって事忘れないでくれよ。な?」

人々の奉仕者たれ。この言葉が真っ先に思い出される。他人に奉仕するためには、まず自分を。彼はそう言いたいのだ。上手く言葉が浮かばずごめんとだけ告げると、充分だといわんばかりに彼は深く頷いた。

「それでいいさ」

行かないの、と気力のない声で尋ねると彼がまた困った顔をする。また、何か。

「そんなあんたをほっとけないし、それに一緒にいたいんだよ。な、いいだろ」

断れない空気。日影なのになんだか身体が暑いままだ。寝転んでいた君は思わず逃げ出したかったが、身体はもちろん言うことをきかない。海辺の歓声を遠くに聴きながら、君と彼はまた誤魔化すように一言二言と言葉を交わしていった。

これからの夏は耐えられるだろうか。