ひろっぷ
2017-10-30 23:34:06
600文字
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お菓子はいいから

悪戯させてくれ。
ヒビ主♂。ハロウィーーン。

「なんで逃げるんだよ!お菓子持ってないんだろ!」

後ろから投げかけられた言葉に応えられる余裕はなかった。彼との終わらない追いかけっこ。
『お菓子をくれないと悪戯するぞ』
生徒の何気無い一言で始まったそれは、君の背中を震わせるのに充分だったからだ。
もちろん追いかけてくる相手がヒビキなので危険はない。

ないと思っていた。
ヒビキが生徒に尋ねる瞬間までは。

「何やってもいいってことか?」

不思議に思った君が彼の顔を見れば獣のような瞳で口の端を釣り上げている。君は躊躇する事なくその場から走り出し、現在の状況に至るのである。
彼と親しく接してから、時々あのような表情を見る。そしてそれを見ると必ず君自身の本能が危ないと叫ぶのだ。

「キミ、私が向こうへ逃げるからここで身を潜めておくにゃ」

頷くと同時にウィズは奥へ走り出して行く。バタバタと過ぎ去る騒音。遅れてやってきた静寂に安堵する。


「やっぱりここかぁ」

頭上でゆらりと動く影。見上げれば先ほど通り過ぎたであろう彼の姿。どうして、などと聞くのは野暮だ。彼ならば魔法使いだから分かると答えるのだから。しゃがみこんで同じ目線になったヒビキはにっこりと笑って呪文を唱えた。

「トリックオアトリート」

震える君はこう答えるしかなかった。
お菓子、ないです。
言葉を拾った彼は待てを解除された猛犬のような笑みをしていたという。