ひろっぷ
2017-06-23 23:25:04
1122文字
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生き血を啜る

獣の傭兵が魔法使いをズルズルする。




「キミ、もう少しにゃ。頑張るにゃ」

意識が朦朧としていく。溶岩を間近に構え、君は覚束ない足取りで出口らしき場所へ歩いている。思ったよりも屍の数が多く、予想していなかった君は魔法を放ちすぎた。そして、灼熱地獄の中に長くいすぎたのだ。並みの人間ではもう立つ事も出来ないだろう。だが君はなんとか意識を保って足を引きずっていく。
途端、地面にポツポツと赤い斑点模様が浮かぶ。ぎょっとしたウィズが君の顔を見て慌てふためく所を見るに、自分はおそらく鼻血を出しているのだろう。なんて呑気な事を考えていると躓き転びかける。思わず手で鼻を擦ってしまい、その反動かさらに鼻血が流れ落ち止まる様子はない。血が、どんどんと出ていく。血の気が引いていくとはまさにこのことか。

「にゃぁぁぁぁ

小さなウィズではどうする事も出来ない。屈んだまま動く事も出来ない君が先へ行ってと促したその時、前方から男が現れた。ラディウスだ。

「おい、大丈夫か!」

帰ってこないのを怪しいと見たのか、ラディウスは君を追って来たのだという。いつもならすぐに帰れるはずだった、と思ったが異界では何があるか分からないのだ。今後は単独では控えようと1人で反省していると急に顎を掴まれる。目前にはラディウスの整った顔が。
数秒の沈黙。その間にも君の体力は減っていく一方で、何かあるなら早く言ってくれと目で訴えた。

………悪く思うなよ」

何が、という間も無かった。鼻に噛み付かれたかと思うとズルズルと音がする。朦朧としていた意識が覚醒すると共に吸い取られているのだと悟ると、君は後ずさろうとラディウスの腕を掴んだ。だが彼の力はかなりのようでびくともしない。しかし君は反射的に抵抗してしまう。
ズルズルと音がすると共に僅かながらの振動、どことなく背徳的なその行為に君は震える。決して覚えてはいけないそれに抗うように尚も彼の腕を力なく握る。これ以上は。
そもそも!と君はこの非常事態に疑問が浮かぶばかりだった。他に方法があるだろう、と。
うーうーと唸っているとラディウスが鼻から離れていく。さすがに飲み込むことはしないようで、溶岩の先へ吐いて捨てた。しかし次の言葉がまた君の意識を消そうとするのだ。

「お前の血、意外と甘いな」

喋ることも億劫な中でこれだけは目で訴えた。馬鹿なのかと。正直に感想を述べる人物は今後永遠にきっと彼だけだ。ウィズも何が起きていたのか分からないと言わんばかりに固まっている。それはそうだ。君自身も分かっていないのだから。
ぐるぐると脳内の処理をしているうち、へたり込んでいた君はラディウスに担がれあっという間に溶岩の間を通り抜けるのであった。