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ひろっぷ
2017-06-20 23:27:27
977文字
Public
知らないこと、優しいこと
アーサーとマイア。戦の顔を見たマイア。
茶会を開いていた最中、ガウェインが早足で向かってきたと思えば王に耳打ちをする。すると今まで穏やかだった彼の顔が途端に戦の顔へと変わる。
「敵?」
「いや
…
。悪いがマイア、隣の部屋へ行っていてくれないか。すぐに終わる」
ここで駄々をこねることができないのはいくらマイアでも分かっていた。頷くと急かされるように隣の部屋へ。閉められた直後、少しながら怒声が聞こえる雰囲気に驚きつつもマイアは言われた通りに静かに時を過ごした。途端、衝撃の音が城中に響き渡って落ち着いていたマイアが肩を震わせた。
「何
……
?」
もしや襲撃があったのでは。自身の聖剣を携えつつ、衝撃で少し開いてしまった扉から顔を覗かせた。しかし、それは見てはいけない光景だったのかもしれない。マイアはその場から動く事が出来ずにいた。
(あれは
………
あれはアーサーなの)
稽古をしていた時の勇ましいアーサー。先ほどまで開いていた茶会の時のアーサー。そのどちらでもなかったのだ。白煙が消えた先に見えたそれは確かに紛れも無いアーサーだったが、人の首を鷲掴み、剣の切っ先を喉に突きつけているその人物は果たして。
(私の知ってるアーサーじゃない)
聖剣を持つ手が僅かに震える。道理で今まで勝てないのだとマイアは悟った。
(でも)
彼の覚悟、王として死と隣り合わせな恐怖と、民を守らねばならぬという覚悟が、今までのマイアと出逢えなかっただけだ。
「やはりお前は黒だった」
「ひ、ぃ」
しかし彼は優しいのだ。掴んでいた首を離し、むせる人をじっと見下ろしながら臣下に目配せをする。
「残念だよ」
寂しそうな目は嘘ではない。マイアは知っている。彼がやはり優しいのだと。昔からずっと共にいたマイアだからこそ、それだけは。
臣下に連れていかれて行った扉を見つめた後、アーサーはこちらに向き直る。彼女の気配も、何もかもを見透かした目を見せて。
「マイア、今日は帰るといい。こんな所では茶会も出来ないだろう」
「ううん。茶会はいいから、アーサーの話をもっと聞かせて」
「
…
俺の?」
訝しむようにこちらを見る彼をおかまいなしに、マイアが笑って彼の腕を取る。
「ね。いいでしょう?」
こうお願いすると、彼は決まってこう返すのだ。
「
…………………
分かった。少しだけ」
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