ひろっぷ
2017-04-02 12:47:49
1228文字
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惹かれる

ヒビキ×魔法使い。惹かれるものがある。



学園で書類整理をしてしばらく、君は体の疲労でふと時計を見上げた。時間は夕刻。もうこんな時間か、と君は大きく大きく背伸びをした。ある程度片付いた書類は持っていかねばならない。君は意を決して出来た束を持ち上げ椅子から立ち上がろうと扉に向かおうとする。
しかしふと何かが目に留まる。蒼々と輝く武器、刀のようなそうではないような不思議な形のヒビキの武器だ。ヒビキは事あるごとに君の自室を訪ね時々こうやって何かを忘れて帰っていくが、こんな大きな所有物を忘れていくのは珍しいことだった。
段々と君の好奇心が疼いていく。しかしふと色んな後悔が押し寄せては返し、押し寄せては返しを繰り返す。このような神秘的な物には必ずといっていいほど憑いている。良いものでも悪いものでも。数々の異界でそれは嫌というほど目にしてきたのだ。だが。
だが、どうしても!仕方がない!
と後悔の念を打ち消し、ヒビキの剣を触る。蒼々とした部分は光り輝く宝石を丸ごと嵌めたかのようだ。しかしそれでいて、水のように流動している。綺麗だ。と君はただ一言その感想に尽きた。見つめていると引き込まれそうな、そんな煌めきがこの剣にはあった。
欲しいな。なんていう名前の武器かな。斬れ味は良いのかな。綺麗だから、よく斬れそうだな。いいな。斬れそう。斬れ、

「魔法使い」

場が凍る。まるで一瞬で凍土になったかのような寒さに襲われた気がした。
壁に立て掛けられた剣を見ながら、君は今なんと思っていた?
君の手の上に後ろから優しく大きな手が添えられる。そして囁くように何度も、何度も君を引き返させるように。

「魔法使い、魔法使い。そっちへ行っちゃ駄目だ。魔法使い」

その優しさに応えた途端、君はやっと恐怖を思い出し、剣を触っていた手を震えながらゆっくりと離した。
申し訳なさと恐怖が勝ってヒビキを真正面から見る事が出来ない。ごめん、と一言伝えると応えというように頭を撫でられる。段々と恐怖が和らいでいくようだ。

「普段使わない力ほど魅力なもんはないよな。俺だってそうさ」

撫でられていた手がふいに頬に移動する。と君の耳元に彼の顔が近づいて囁いた。それはまるで先ほどの恐怖の化身のようで。

「あんたは魔力だ。あんた自身に、魅了されて仕方ない」

ぞわりぞわりとない毛が逆立つ。羞恥ではない、顔が青くなるのが君自身でも感じた。その途端。

「なんてな!冗談冗談」

パッと手を離しいつもの陽気な笑顔に戻った彼を見て君はほっとする。心臓が相変わらず騒いで仕方ないが、いつもの調子の彼なら大丈夫だ。と君は自身を落ち着かせる。

「所でさ、これ運ぶのか?持ってくぞ」

半分以上を引っ掴むように出口に向かっていくヒビキ。追いつこうと君も残りの書類を抱えヒビキの隣へ並ぶ。

「たぶんな、たぶん」

ふと聞こえた呟きを、君は聞こえないフリをして話題を切り替えた。



抱えた書類を僅かに震わせながら。