ひろっぷ
2017-01-06 23:43:39
1902文字
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農夫と魔法使い※

ヒビキ×魔法使い(+もある)。小話4個ぐらい。




♦︎君の知ってること、教えてよ

焚き火を囲んで座る面々。君もならって座るが特にすることもなく、強いてすることならばダンケルから借りた魔道書を読み直すぐらいだ。ウィズは胡座をかいた君の足の間で丸まっていて話し相手になりそうもない。
「何読んでんだ?」
隣に座っていたヒビキが君に声をかけてきた。
魔法の本だよ、と一言を添えて彼に渡してみるとやんわりと突き返された。顔を見ると眉間に皺が寄っているようだ。
「読めるんだけどさ、理解できないっていうか」
頭を無造作にかいて照れているその仕草を見て可笑しくなった君は少しだけ吹き出してしまう。
「笑うことないだろ。じゃあ俺に分かりやすく教えてくれよ。な?」
突然な提案に君はきょとんとする。教える事が得意でもなければ君自身も彼同様感覚で覚えているようなものだからだ。教え方が分からない、と言うと彼は未だ引き下がる様子もない。
渋々、君は首を縦に振った。どうすれば彼に理解してもらえるか、どこまで砕いて話そうか。など悩みが瞬時に増えていく。だが楽しそうな彼の顔を見るとその悩みがちっぽけなように思えてしまうのだ。
「あ、これは分かるぞ。火の魔法だな!」
そうだよ、正解。
子供に教えるような、なんだかこちらが歳上になった気分だった。




♦︎暇の末路

キュッキュッ。キュッキュッ。
「でね、あの子ったら本当に可愛いのよ。ちょっと聞いてる?」
聞いているよ。返事をしていても声の方に顔を向けない君に愛想を尽かしたのか、彼女は諦め同性に意見を求めに向かったようだ。キュッキュッ。周りの雑音も気になることはない。
……………
「おい魔法使い」
手を止めずに顔を向ければ少しげんなりしているダンケルが上から見下ろしていた。正確には君が座っていることになるが。黙々と動く手を見つめ、ダンケルは大きなため息をつく。
「それをやって何になる」
当然の疑問だった。
君が向こうの立場なら同じ事を聞いていただろう。そして君の答えは実に単純なもので。時間があって、暇だったから出来心でやっている、と。予想していた答えそのものだったのだろう、再び大きなため息をつくと踵を返して他の仲間の元へと戻っていく。一言、警告を零して。
「仕返しされても知らんぞ」
なんのことやら。そう思いつつ未だに彼の髪の毛を弄る手は止まらなかった。

後日、うたた寝をしている間に髪の毛を三つ編みにされたヒビキが怒り、警告通りの仕返しがきたかは2人のみぞ知る。





♦︎なんてことない時がいい

ヒビキは隣の魔法使いを見る。それは笑っている時であったり、怒っている時であったり。中でも好きなのは少しはにかんで笑う所。なんてことは心の奥にしまっておくけれど。どうしたの、と笑みが消えた魔法使いがこちらを見上げる。
あぁ、見上げてくる目も好きだな。
1人心の中で呟いて、なんでもないと前に視線を戻した。変なの、と首を傾げる魔法使いを横目に、にやけそうになる口を引き締め一歩を踏み出す。

なんてことないあんたをもっと見たいなんて言ったら、どんな答えが返ってくるかな。



♦︎好きを収めたい

「魔法使い」
何、と振り向きざま、目の前が真っ白になる。咄嗟に目を瞑り、ぎゅっと口も引き締まってしまう。恐る恐る目を開けるとヒビキが何かを持って満面の笑みで立っているではないか。それは?と君が指をさすと君に差し出してくれた。
「カメラって言ってな、そこを押すと目の前の風景とか人を紙に残せるんだと!うちの子たくさん撮ってさ」
なるほど。下に向けてみたり上にあげてみたりしてみるが、不思議なものだと思ってふと気付いた。先程のあの光もまさか?
「そうだ!あんたも撮ってみたくなってさ」
自分なんて撮っても。と少し恥ずかしくなってきてしまった君。少し俯いた矢先、先程のカメラの効果音がまた響く。ぎょっとした君がヒビキを見ると今度は少しいやらしくニヤニヤしている。もうやめて、撮らないで。とむっとしてカメラを取り上げようにも、彼がカメラを持ち上げてしまえば没収すら出来ない。もたれるようにして手を伸ばす君の瞬間も、再びカメラの音が聞こえ撮られてしまった。大きすぎるヒビキを恨むように睨む。
「あぁ悪かったって。でも参ったな
まだ何か撮る気なのか。怒り沸騰前の君がカードを構え防ごうとした時、彼からとんでもない言葉が飛び出るのである。
「うちの子より、お前をもっと撮りたいって思っちまう」

怒りよりも羞恥心が沸騰してしまった。
真っ赤になった君は、構えていたカードを振り落とし走り出した。