ひろっぷ
2016-10-13 20:12:58
1851文字
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案内神と魔法使い③

1個。


「ジェスロの旦那〜当たりのいいカジノってどこか知らないか?」
「当たり?僕は行ったことないけど噂ではブティックの横のカジノがいいって言ってたよ」
「ねぇジェスロ、いい宝石店ないかしら?」
「あぁ、それならあそこの角を曲がった先の所が種類も豊富でいいよ」
「本当?助かるわ!」
聞いた事のない単語が飛び交い隣にいた君は完全に蚊帳の外だった。右に左に首を傾げ、肩に乗っていたウィズも同じように首を傾げていた。退屈というよりも、その言葉を理解しようと頭が混乱しているため目がまわりそうだ。焦っている君の気配を感じ取ったのかジェスロが伺うように屈んでくる。
「ごめんね。案内している途中なのに」
気にしないで、と言おうとしたものの混乱した頭が上手く口を動かしてくれる事はなく。
あ。やら、う。やらもはや単語すら出てこなくなっていた。
「本当にごめんよ。ここらへんは君達に満足させられるような娯楽が中々ないみたいだ」
申し訳なさそうに頭を掻くジェスロを見てこちらも罪悪感にかられてしまう。だが普段のジェスロの余裕のある態度とはまた違った顔を見て落ち着いてきているように感じた。気にしないで、と今度はしっかりと言葉に出来たようで、君の言葉を聞いたジェスロはほっと胸を撫で下ろしていた。
「落ち着いてきたみたいだね。ここは少し賑やかすぎるからそうだなあっちでアイスでも食べようよ」
少しねおん(ジェスロが言うには)のビカビカとした灯りから外れた場所を指差して君の腕をとって歩き出した。肩に乗っていたウィズが食べ物であろう単語に反応して身を乗り出す。
「あいす?美味しいのかにゃ?」
「あぁ、それはもちろん。なんてったって僕のお気に入りだからね」
ここ周辺を熟知して、かつ案内係と化している神様なら頼る他にないだろう。美味しい、というその希望を胸に秘めて君は引かれているその腕に並ぶように歩幅を大きく縮めた。




【続きっぽいもの】


「なぁなぁ、お前さん。どうやってジェスロの旦那と仲良くなったんだよ」
先を行くミコト達神様の後ろをつかず離れずの距離で付いていた君の隣に名も知らぬ神様が近づいた。あの神様達とここに来たらたまたまだよ。それからはなし崩し。と思った事を告げれば意外だと驚いている。
「そんな訳ないだろ。あの神さんたち
は神様だからとして、あんたは普通の人間だろ。なんかなんか持ってんじゃないのか」
ずいずいと迫られ余りの勢いに後ずさる。気がつけばジェスロ達の集団から随分と離れてしまって、君は段々と焦りの感情が沸いてきてしまう。もう一度前を見やるとミコト達はいるものの、先頭にいたはずのジェスロの姿が見えない。
まさか、こいつは足止めをしているのか。ますます焦り冷や汗が出る。こんな場所で地理も分からないまま迷子になるのはごめんだ。きっと探しにくるだろうし迷惑がかかってしまう。ごめん、急いでるんだ。とそう言って隣を過ぎ去ろうとすると前に壁が出来る。やはり、こいつら。
「そうはいかないな。お前、なんだかいい魂な気がするんだ。寄越してくれたら返してやるから」
それは単に死ねと言っているようなものだ。君は直感でそう理解した。今ここで火花を散らせては外野が増えて収集がつかなくなる。何よりあの正義を志す神様が黙っているとは思えないからだ。

すると途端に肩を引き寄せられた。思わずギュッと目をつむり大きな体にもたれるようにぶつかる。何が起きたのかと引き寄せられた元を見上げると見失ったはずのジェスロが立っていた。どうして、いなくなったかと。ポツリとそう呟けば彼は笑って答える。
「君の前からいなくなったりしないよ」
目の前の神たちは思わぬ主の登場でオロオロとしている。そしてどうしようもない空気を一喝したのは、顔は笑っているものの地の底から聞こえる悪魔のような声を出したジェスロだった。
「僕のよしみでこの場は収めてよ。…………ねぇ?」
……ひっ!すいませんっしたっ」
悲痛な声を皮切りに野次馬であっただろう神達も散り散りになっていく。
ありがとう。とそうお礼を述べれば彼はいつもの笑みを浮かべて首を振った。
「僕の方こそ、来るのが遅れてごめんよ。さ、ミコト達が待ってる。行こう」
肩は相変わらず抱かれたまま、けれどなんだかそれがひどく安心して君は頷いてそのまま促されて歩いていく。

「いい魂なんて、そんなの僕もあの神様達もみんな分かってる。だから君を皆守りたいんじゃないか」