ひろっぷ
2016-09-17 19:59:19
1050文字
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農夫と魔法使い

ヒビキ×魔法使い。心持ち腐。小ネタ2本。


農夫と魔法使い

にぎにぎと指を絡められ握っては緩め、握っては緩めを繰り返される。こそばゆい。この一言に尽きるが、いかんせん相手が満足しなければ手を離した所でまた戻るのだろう。けれど君は思わずいたたまれなくなって掠れたような声を出した。そろそろ、やめてくれないか。
「ん?あぁ悪い。こんな手で魔法使ってるんだなと思ってさ。つい」
ついで済まされる行為なのか。君は天を仰ぎたくなったが、この天然さがあの副会長に受け継がれているのだと思うと憎むに憎めなかった。そして未だ離そうとしない彼に再度催促すると。
「もう少し」
そう言って犬のような目で君を見つめるのだった。



♦︎

「俺じゃ駄目なのか、魔法使い」
駄目とか、そういうのじゃない。君はひたすらに首を横に振った。亡くなっているとは言え、彼には妻がいた。"いた"というその事実だけは今もなお彼と共に歩いていて、それが酷く魔法使いを悩ませる原因となっている。
ではどうすればいい。彼はこちらに気があって、君も少なからず気にはなっている。だがそれだけだ。それだけに止めなければならない。今の現状維持をするのなら時間の問題がある。ダンケル達とのこの旅が終わるのはいつか、などと君にも誰にも分かるはずはない。だからこそ厄介なのだ。
ごめん、ごめん。ただそう言って逃げるしか出来なかった。
「魔法使い
彼もやはり君が負い目を感じているのを知っている。だが、知っている事を分かった上でなお君に迫るのだ。彼も、やはり分かっている。妻が"いた"という事実の壁が。
「俺が奥さんの事忘れたら、お前は笑って頷いてくれるのか」
そんな事!許す訳ない!思わず感極まって大声が出てしまった。少し驚いたヒビキの顔が途端にはにかむ。なんで、どうして笑うの。萎んでいく君の声に、彼ははにかんだまま君の頭を撫でる。頭1つ分ぐらい違う、その高さから。
ありがとな」
撫でられている手の上で、ヒビキはどんな顔をしているのだろう。声が酷く寂しそうで、かつ嬉しさも感じられて、魔法使いは心がもやもやとした。手が離れた途端に晴れる景色、顔を上げたと同時に。
(!)
「俺、割と諦め悪くてな。さぁ、そろそろ行くか」
何もなかったかのように君の横を通り過ぎる。君は触れられた頬を思わず2度3度擦った。幻覚ではなかった。そう気づくと顔に熱がどっと集まる。なんでなんでなんで。働かない頭を冷まそうとしても、光景を思い出して泣きたくなった。