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乙麻呂
2023-05-11 02:04:40
10411文字
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賽は投げられた
リクエスト頂いた【風信、南風と3Pな風情】です。ちゃんと3P出来てるでしょうか???とりあえず「大丈夫!」と言う方のみお読み下さい。
菩薺観に窮屈そうに身を屈めて入って来たその姿を見て、謝憐は驚きを隠しもせずに目を丸くした。
「慕情が来たのか」
「何ですか。私が来たらいけなかったとでも?」
苦々しく慕情が唸る。
その目が菩薺観の中をぐるりと見回し、椅子に座って無言で慕情を睨み付けている三郎を捉えて細められた。
「勿論、大歓迎だよ。ただ、てっきり扶揺が来ると思ってたから」
謝憐は慌てて二人の間に割り込みながらにこりと笑った。
三郎と慕情はとにかく仲が悪い。ウマが合わないなんて物では無く、前世からの仇でももう少し理性的かつ友好的に接する事が出来るだろうと言うくらいに険悪な空気が漂ってしまう。
扶揺が相手なら、三郎は嫌悪はするがただただ馬鹿にするだけなのになと思う。
まぁ、慕情だって少年姿の三郎は警戒するだけなのに、花城本来の姿だと殺気が籠るから、ある意味似た者同士なのだろう。
慕情は謝憐の言葉に何とも渋い表情を浮かべた。
不快な表情だけでこんなに色んな顔が出来るなんて、慕情は表情がある意味豊かなんだなと思う事にする。
「貴方まで扶揺の方が良いとでも言うんですか」
「私
まで
・・
?」
「あの小神官の方がまだマシだね。お前はデカくてノロマな上に、役に立った所を見た事が無い」
謝憐が疑問を口にしきる前にも、三郎が笑いながら答えた。笑っているのにゾクリとするような冷気を感じる。
謝憐は二の腕を摩りながら嗜めた。
「三郎、それは言い過ぎだ。慕情だって充分有能だし力になってくれている
………
と思う」
ただ、それをあまり他人の役に立てる為に使わないだけで。
………
渋々ながらも謝憐の命には従うし、何だかんだ南風や三郎とも会話もする扶揺の方が、確かに可愛げはあるし扱いやすいなと頷きそうになる。
が、ここでそんな事を言ったら慕情との仲が更に悪くなるだろう。
思わず弱くなった語尾を笑みで誤魔化すと、慕情は白目を剥いた。
「それは随分な評価ですね?少なくとも小神官に力で劣るつもりはありませんが」
「それはそうだろうが」
謝憐は頷きつつも、内心「ただし、」と続けた。
武力や権力でどんなに秀でようと、それを使う気が無ければ宝の持ち腐れだ。
苦笑を隠し切れない謝憐に、慕情が白目を剥いたまま言う。いつも思うが、アレでちゃんと見えてるのだろうか?
「謝憐、貴方も言いたい事はハッキリ言ったらどうです」
「ハッキリ言わないのはどっちだか。小神官に負ける程度の存在感しかないお前が悪いし、責めるならお前にそう言った相手にしろ。殿下をお前の下らない苛つきに巻き込むな」
三郎が先程よりも強く挑発と侮蔑を込めてせせら笑った。慕情の青白いカオに冷ややかな笑いが浮かぶ。
「コソコソ少年の姿を偽ってる奴の言葉は説得力があるな。下らない劣等感を抱いてるのは誰の事だか。お前こそ殿下を
………
」
「止めろ、止めるんだ!!お前達、それ以上いがみ合ったら二人とも出て行って貰うからな!」
天庭と鬼界が誇る優れた刀使い二人がぶつかり合ったら、間違いなく菩薺観は粉微塵になってしまう。
謝憐が慌てて割って入ると、三郎と慕情はそれぞれ心底憎たらしげに口を閉じた。
「ごめん、哥哥。こんな奴、相手にする価値も無いのに」
慕情をギラギラとした目で睨んだまま、三郎が撫で付けた声を出す。
表向きは謝憐への謝罪なのに、語尾に蠍尾蛇並の毒がある。
「三郎」
「分かってる。心配しないで」
再度釘を刺そうと呼びかけると、三郎は謝憐を見つめてにこりと笑った。
そして、自身の袖を探ると何かを放り投げる。
慕情は顔面に向かって飛んできたそれを、反射的に受け止めた。
「簡単だよ。これで、白黒つけて貰えば良い」
慕情を見据えて三郎が軽い口調で笑った。
慕情は無言で手の平を見下ろして顔を顰める。
「
……………
何だ、これは」
「お前は知ってるだろう?勝手に使った事がある筈だ。危険は無いから安心しろ」
「
………………
」
確かに知ってるし、忘れようにも忘れられない。
それは、小さな二つの賽子だった。
一見無害に見える賽子だが、慕情は軽くて小さいそれがどれ程危険で厄介な物か分かっていた。
こんな物いるかと即座に投げ返そうとしたが、投げるのは危険だと思い留まる。
不穏な物は、回収してしまうに越した事は無い。
慕情が苦い表情で懐にそれを仕舞うのを、三郎が食えない笑みで見ていた。
◆◇◆◇
上天庭に戻ったのを誰かに聞いたのだろう。
慕情が玄真殿に戻って間も無く、バタバタと足音が近付いて来た。玄真殿にはあんな煩い奴は居ないので、必然的にアイツだと判る。
「慕情!」
犬なら、尻尾をぶんぶん振ってるだろう勢いで風信が部屋に入って来た。
慕情はそれを横目で確認すると、嘆息した。
「何だ騒々しい」
「お前が下に降りるなんて珍しいな。何かあったのか?」
風信は自分の私室だと言わんばかりに椅子に座りながら首を傾げる。
問題でも起きたのかと、心配も含んだ言葉に慕情は眉を上げた。
「別に、殿下の元に顔を出しに行っただけだ」
「え?お前がか!?」
風信が素っ頓狂な声を上げる。慕情は冷ややかに言った。
「どう言う意味だ?私より扶揺の方が適任だって言いたいのか?」
「いや、そう言う意味では
………
ないが
……
ー
慕情は捻くれ者なので、殿下を心配しててもそれを表には出そうとしない。いつも、殿下の所に行く時には扶揺を使う。
まぁ。扶揺の方が立ち回りやすいのは、風信も南風に当て嵌めればよく分かる。
そう言う意味での驚きだったのだが、慕情は最大限に捻くれた意味に取ったらしい。
歯切れの悪い風信を見て冷笑した。
「お前も私より扶揺の方が良いんだったな。将軍が小神官に執心とは高尚な趣味をお持ちだ。流石は巨陽将軍」
何故か、コイツはこの前から風信が慕情よりも扶揺に欲情する変態だと思っているらしい。
一度、そりゃ、まぁ、扶揺とそう言う関係にはなったが
…………
それは“見た目が変わっても慕情を想う気持ちは変わらない”事の証明だと、風信は思っている。大体、
「お前だって『南風の方がマシだ』とか言ってただろう?」
扶揺を慕情を別人として捉えるなら、南風にだって同じ事を言える。
口にしてみると、思ったよりも低い声が出た。
慕情がふふんと笑う。
「そりゃ、お前よりは利口そうだからな」
「俺が馬鹿なら南風も同じくらい馬鹿だ!!」
反射的に怒鳴り、風信は口を曲げて黙り込んだ。いやいや、何を張り合っているんだ??
「同じ馬鹿なら、南風の方が可愛げがある」
慕情は何やら勝ち誇った顔で言った。
いつの間にか、立場と話題の矛先が逆転している。
それを論破出来る程風信は話術に長けてはいないので、単純かつ重大な南風との違いを叫んだ。
「南風じゃお前を抱けないだろう!?」
「別に、私はどちらでも良いけどな」
余裕綽々な顔で慕情が風信の顔を覗き込む。これ以上押し問答するくらいなら押し倒した方が早いと、風信は慕情の肩を掴んで長椅子に引き倒した。
慕情は踏ん張る事もなく、柔らかい椅子に背中から倒れる。
慕情の上衣を解いて脱がせると、風信はそれを無造作に床に放った。
「おい、シワにな
………
」
慕情が投げやりに苦言を口にしようとした、その時。
カンッ
床に落ちた慕情の上衣からやけに固い音がした。
いや、正確には、慕情の上衣から溢れ落ちた物が床を跳ねた音だ。
「何か入ってたのか?」
「
………………………
ッ!」
首を傾げる風信の下で、慕情はサァと青褪めた。
血雨探花の賽子だ!
声を上げようとした瞬間、ぐらりと視界が揺れた。
◆◇◆◇
目眩が収まり、慕情は恐々と目を開けた。
次はどんなに悪趣味な場所に飛ばされたのだろうか。
しかし、意外にも、そこは人喰い鰐の沼でも女湯でも無かった。
いや、そもそも移動すらしていないようだった。
慕情は相変わらず自室の長椅子に寝ており、その上に覆い被さるように風信の困惑した顔が二つ並んでいる。
二つ?
慕情はまじまじと自分を見下ろす顔を見上げた。
太い眉の上げ具合、眉間の皺、訝しげな目付き、瞬きをするタイミングまで寸分違わない、全く同じ顔が二つ並んでいる。
その顔が異変に気付き、バッと見合わせられた。
「うわぁぁぁ!?」
「うわぁぁぁ!?」
二人の風信は同時に叫び声を上げて同時に飛び退き、互いをわなわなわと震えながら指した。
「何だコレは!?どうなってるんだ?」
「何だコレは!?どうなってるんだ?」
一人でも煩いのに、二人同時に叫ばれれば立派な騒音だ。
壁がビリビリと震える。慕情は耳を塞ぎながら吐き捨てた。
「煩い。同時に喋るな!」
「わざとじゃない!」
「わざとじゃない!」
風信達はまたも叫び、同時に酢を飲んだような表情で顔を見合わせる。
慕情はそんな二人をじぃと見つめた。
偽物を見分けられない程ポンコツな目はしていないつもりだが、微塵も違いが分からない。
どちらも偽物と言う可能性を考えるのが馬鹿馬鹿しくなる位に、感じる霊力、一挙一動、筋肉の動かし方一つに至るまでどちらの風信も“風信”と言う男その物だった。
「とりあえず、その紛らわしい顔をどうにかしろ」
原因は考えるまでも無い。あの血雨探花の嫌がらせだ。
まともに騒ぐ気すら失い、慕情は白目を剥きながら風信の顔を見上げた。二つの顔がそっくり同じ困惑を浮かべる。
「どうにかしろって」
「どうすりゃ良いんだ?」
今度は言葉を分担して喋り始めた。自分自身となら、統制が取りやすいんだろうか。
下らない事を考えながら、慕情は向かって右の風信を見据えた。
「南風になればいいだろ」
「
…………………
分かった」
少し嫌そうな顔をしつつも、右側の“風信”が頷いた。その体が薄く発光し、次の瞬間には黒髪の小神官が立っていた。
「ふん、少しはマシだな」
並び立った“風信”と“南風”に、慕情は満足げに鼻を鳴らした。
「にしても、どうすりゃ良いんだ?」
南風のボヤきを受け、風信が眉を上げて慕情を見る。
「そう言えば、慕情。さっきお前の上衣から落ち
………
」
たのは、まさか血雨探花の賽子か?
そう問う筈だった言葉が途中で止まる。
「
………
いりょくを二分する部屋?」
風信はどこか一点を凝視し、唖然と呟いた。
「は?」
「何だって?」
南風と慕情も訝しげにその視線を辿る。
壁に、見慣れない紙がこれ見よがしに貼ってあった。
そこには綺麗な文字で大きくこう書かれているのが見えた。
【精力を具現化する部屋】
成る程、つまり、風信は有り余る霊力が具現化されて分裂したのか。
仮にも上天庭を代表する武神なのだ。膨大な霊力は、一人分の器には収まらないと言う事なのだろう。
全く意味が分からないが。
とりあえず、自分に実害が無いなら何でも良い。
投げやりにそう結論付けた慕情の前で、南風が顔を赤くして怒鳴り散らした。
「何だコレは!?何なんだ精力って!?」
「俺に聞くな!大体精力って具現化する物なのか!?
……………………
おい、慕情。何だそのカオは?」
「
……………………………
俺はどんな顔でお前らを見れば良いんだ?」
気付きたく無かったが、どうやら“霊力”では無く“精力”らしい。
意味は考えたくも無い。
巨陽殿の主が、“一人分の肉体に収まらない程の精力の持ち主”と言うのが無駄に納得出来るのが余計に腹立たしい。
慕情の殺気に同時に青褪め、南風と風信は咳払いをすると真顔でその紙を見据えた。
「と、とにかく、具現化と言う事は分身みたいな物なんだよな?」
「あ、ああ。最悪、血雨探花を問い詰めれば
……………
いや、ちょっと待て。この紙、まだ何か書いてあるぞ」
神妙な顔をしていた風信が、ふと何かに気付いて目を凝らす。
慕情と南風も紙に近寄った。
紙の下の方に、取ってつけたように小さく文章が付け加えられていた。
【分裂した精力は〇〇に注ぎ込み交わらせる事で元に戻るそうです】
見やすい几帳面な字だが、〇〇の場所だけ滲んだように歪で読み取る事が難しい。
血雨探花は文字が風信よりも独創的(だと殿下が最大限に濁しながら言っていた)らしいので、これは血雨探花の直属の配下だと言う鬼面の青年が書いたのだろう。
こんな事を書かせるなど、正に鬼の所業だ。風信は、自分の字がどんなに見苦しかろうと、自分の配下にこんな苦行は強いるまいと心に誓った。
滲んだ文字は、鬼界でも高い地位に在りながら殿下に引けを取らないお人好しだと言う青年の、せめてもの情けに違いなかった。
つまり、滲んだ部分には、鬼でも告げる事を躊躇うような内容が記されているに違い無かった。
風信と南風は無意識に同じ方向を見た。
そこには、間違い無く風信と同じ結論に達した慕情が土の気色で硬直していた。
「あー
……………
その
………
“受け”だと決まったわけではないし」
風信が精一杯慰めのような事を口にする。慕情はそれをギロリと睨み付けた。
「“受け”だろうが“伴侶”だろうが“相手”だろうが“恋人”だろうが、どう取り繕おうが意味は一緒だろう!?お前のその、無駄に溢れてる、精力のワリを、何で俺が食わないといけないんだ!?」
一語一語強調して吐き捨てる慕情に、風信は思った。
(自分の事を受けとか伴侶とか恋人とか認識してるんだな、慕情は)
当たり前ではあるんだが、普段は決して意地でも口にはしないし、されるのも嫌がるので、その事実だけで胸が張り裂けそうだ。
いや、実際に張り詰めた。物理的に。
そして、風信が反応して南風が反応しないと言うわけが無く、二人は同時に何とも言えない顔をした。
何とも言えない顔をしているのに、口元がピクピクと動いてにやけているのまで一緒だ。
慕情は呆れ果ていっそ無表情で二人を見ていた。
それは、自分の身をこんな事に捧げるくらいなら、このまま放置して風信と南風に個別に生きて貰った方が良いんじゃないかと言う目だった。
しかし、風信と南風が同時に存在する方が厄介だとすぐに思い直したようで、これ見よがしな溜息を吐いた。
「
……………
今回だけだからな」
風信と南風は隠しようも無く表情を輝かせた。
◆◇◆◇
そもそも、ここは本当に玄馬殿の自室なんだろうか。
それとも、よく似た別の部屋に飛ばされたのだろうか。
どちらにしても、易々と上天庭の神官の私室に干渉されたと言うのが薄ら寒い。
そんな事を考える慕情の前で、無駄な喧嘩が繰り広げられていた。
「俺が脱がす」
「俺だ!お前はさっきやっただろう!?」
「それを言ったらお前もだろう!?」
「「慕情!!」」
ギャンギャン吼えていた二人が同時に目をかっぴろげて慕情を見た。
「「どっちに脱がされたいんだ?」」
この怒声が二人分響くと言うだけで立派な公害だ。慕情は耳を押さえながら眉間を寄せた。
「無駄な喧嘩をされるくらいなら自分で脱ぐ」
「「それはダメだ!」」
息ぴったりである。
拮抗していた二人の睨み合いだが、ふと南風が何かを思い付いたように眉を上げ、にまりとした。
「玄真将軍」
それまでの盛った駄犬じみた間抜け面を引き締め、南風は慕情に向かって拱手した。
低く落ち着いた声で呼びかけられ、慕情は思わず目を丸くする。
南風は頭を垂れたまま恭しく言った。
「失礼ながら、お身体に触れる無礼をお許し頂けるでしょうか」
慕情よりも風信がしてやられた表情を浮かべる。
以前に自分が扶揺に侍従され、その何とも言えない快感を知っているからだ。
扶揺を気に入った様子の風信にイラッとした慕情であったが、自分がされてみると風信相手では味わえない優越感と面白さがあった。
「許してやる」
笑って頷いてやると、南風は見るからに嬉しげな顔をした。
「ハ、ありがとうございます」
南風は風信を横目で見ると、いそいそと慕情の衣に手をかけた。
既に上衣を脱いだ軽装だったので、少し解くだけで慕情の上半身が空気に晒された。
面白く無いのは風信だ。
「おい」
低く、小神官の姿をした自身へ向けて釘を刺す。
「まさか、仕える将軍を差し置いて、良い目を見ようなどとは言わないよな?」
言いながら、南風の手を払い除け慕情を自分の元へ引き寄せる。
更に、慕情が文句を言う前に口で口を塞いだ。
一瞬呆れを滲ませたが、慕情は大人しく
……………
いや、むしろ普段よりも積極的に舌を絡ませた。その口元が悪戯に緩んでいる。
それを間近で直視する事になってしまった南風は、酢をひと瓶一気飲みしたような顔をした。
「ちょ
………
おい
…………
」
止めるにも、相手は自分だ。否定したら、
南風
自分
の行為も否定する事になる。
何より、慕情はすっかりスル気の顔をしていた。
下手に気を削いで、慕情の気分を害したら困るのは自分である。
「
………
ックソ!
南陽将軍
じぶん
に仕えるもクソもあるか!」
南風は実際の主君相手には絶対にとらないだろう態度で吐き捨てるに留めた。
そうしている間に風信は素早く慕情の下衣を解くと、南風が付け入る隙など与えないとばかりの早急さで慕情の腰に手を伸ばした。
「んっ」
ピクリと慕情の肩が跳ね、頬に赤みがさす。
それだけで、風信の手がどこをどう触ったのか理解出来てしまい
……………
何故なら、風信がしてなかったら自分がしてたからだ
……………
南風は目元を歪めた。
慕情の手が風信の首に回る。
下界から帰ってきたばかりで、流石に“準備”はして無かった筈だ。
まだ十分に解されていない場所が押し広げられる感覚に、慕情の眉根が寄る。
ハァと吐息が漏れる。
「
…………………………
」
“自分に蕩けさせられる慕情を客観的に観察する機会”など、普通なら有り得まい。
その光景は、当然南風を興奮させる方向に働いた。
しかし
…………………
やはり、見てるだけなど御免だ。
南風も当然慕情の私室の事はよく知っており、机の引き出しに隠すように入っている香油を取り出した。
さて、風信は当然南風に譲る気など微塵も無かった。
一万歩譲って南風の姿で慕情を蕩けさせる時が来るとしても、その感覚を余す事なく堪能するのは自分である。
南風と同化した時に、感覚の記憶はどうなっているのか知らないが、今ここで傍観者として経験を終えるのは嫌だ。
慕情の力が抜ける場所もやり方も熟知している。
熱い慕情のナカに、風信の指はすぐに馴染んだ。
さて、もう一本
…………
と考えるのと、慕情の中にぬるりともう一本入り込んでくるのは同時だった。
首に回された慕情の腕に一瞬力が入り、その力を逃す慕情の熱い吐息が耳元をくすぐる。
しかし、風信は挿れていない。
いつの間にか慕情の背後に位置取っていた南風が、チラッと風信を見上げてにまりとした。
風信の指では無い、しかし自分と太さも長さも、爪の形や体温に至るまでそっくり同じ指が慕情のナカに香油をたっぷりと塗り込み、風信の思うやり方そのままの動きで解していく。
「あ
……………
ハァ
……………
ンッ」
それでも二人の指が入り込む感覚はまた普段と違うのか、慕情がやけに甘ったるい声を漏らした。
「「
……………………
」」
慕情のよりエロい顔を、声を、仕草を見たい。
それだけは正に“思いは一つ”だった。
風信と南風は互いの動きを阻害しようとする事も無く、むしろ最大限に協力して指を締め付けてくる熱い壁を、宥めるように解し始めた。
気がつくと、風信が慕情の胸を弄り始め、南風は反った背中に舌を這わせていた。
「ヒィ
…………
や、やめ
…………
ンンッ
………
」
慕情は喉をわななかせたが、すぐに顔を真っ赤にしたまま未知の快楽に悶え始めた。
三箇所を同時に責めるのは、流石に初めての事だった。
普段より悶える慕情に、単純な風信と南風はこの状況も悪く無いかも知れないと思い初めていた。
だが、流石に挿入は同時とはいかない。
既にややぐでんとした慕情をベットに運んだまでは一心同体の動きを見せていた風信と南風であったが、ここで少し睨み合った。
二人とも、陽物は既に巨陽の名を体現していた。
そうで無くても、慕情の尻に同時に
…………
なんて暴挙に出たらヤバいのは分かりきっていた。
何がどうヤバいのかは分からないが、どう転んでもヤバい。
コホン、と風信が咳払いをした。
「当然俺からだよな?」
コホン、と南風も咳払いした。
「将軍が先陣を切るのは、どうかと思いますが」
「おれのしりは
…
合戦場
かっせんじょう
か?」
掠れた声で慕情が呻いた。
風信と南風は数秒黙り込んだ。
結局、風信が先陣をきる事となった。
南陽将軍とは、後陣に秀でた弓使いでありながらも自ら真っ先に戦場を突き進む武神であるからだ。
つまり、下らない押し問答をする余裕など無いくらいに、二人とも色々と限界だった。
それに、南風は慕情は“二回目”が美味しい事を知っていた。
一度達した慕情は、より乱れやすくなるのだ。
ベッドに四肢をついた慕情の背後に膝立ちになり、風信はそそり立った巨陽を、南風の目の前で、慕情の尻にあてがった。
風信の顔も赤く染まる。
ゆっくりと風信が慕情のナカに沈み込むと、慕情の表情が変わっていく。
南風がその様子をじっと見ていると、慕情が目を開いて小さく笑った。
「ン
……………
なんふぉん」
甘ったるい口調で南風を呼ぶのは、思えば初めての事だった。
目を見開く南風に、慕情は掠れた声で言った。
「しかた
……………
ンッ
…………
ないな。そんなカオをされたら」
服の下で“マテ”をさせられている南風の仔犬
……………
と呼ぶにはあまりにデカいが
…………
を見遣り、慕情はほんの少し
将軍
上司
のカオになる。
「なぐさめてやる。
……………
きなさい」
「はい!」
南風は即座にその命令に従った。
あまりの従順さに、慕情がくっと笑う気配がする。
南風が跪くと、慕情は南風の衣を寛げてすっかり硬くなった陽物を取り出した。
「ふぅん」
赤らんだ慕情の目がまじまじと南風のモノを観察する。
指先が感触を確かめるように竿を撫で、手の平で包み込む。
「なかなかじゃないか」
慕情が笑い、赤い舌が唇を舐める。
その唇が開き、先端をぱくりと咥え込んだ。
「
………………
ッ」
それはよく知った感覚の筈だ。
なのに、南風の体だからだろうか。
慕情の舌がゆっくりと先端を割り、先走りを舐める感覚が、未知のモノに思えた。
南風の動揺する気配に気を良くしたのか、慕情はいつもより機嫌良く、勿体つけるように南風のを喰み、舐め、甘噛みする。
風信に深く突かれる度に、慕情の熱い吐息を、喉の震えを、漏れる嬌声を生々しく感じる。
下半身の快楽からか、慕情の舌の動きが普段より辿々しいのが余計にそそった。
南風は慕情の頭を掴んで腰を振る衝動を何とか堪えた。
それを察したのか、竿に密着した慕情の舌が「良い子だ」と紡いだのが分かった。
この状況に慕情のナカがいつもより締まるのか、風信が「うっ」と声を漏らした。腰の動きが常より遅い。と言うか、動いたらすぐさま出そうなのだろう。風信のチンコの具合なんて、察するまでも無い事だ。
南風も、少し舐められただけでもうイキそうだった。
どちらからとも無く、ハァと荒い息を漏らす。
風信が突いた刺激が慕情を介してそのまま南風に還ってくる。
慕情も常にない刺激に、絶頂寸前の蕩けた顔をしていた。
その様子が更に興奮を呼び、それぞれがそれぞれの快楽に耽った。
そして。
風信と南風は同時に達した。
前からも後ろからも注がれ、その衝撃に慕情自身も吐精したのを、風信はぼんやりと認識した。
今までに無く良い気分であり、真っ白になった頭はいつまでもふわふわと夢の中を彷徨うような心地だった。
慕情が「ンッ」と喉を鳴らして、口の中のモノを飲み下す、その舌の動きを、風信は自身の陽物で感じた。
「
……………
!?」
我に返った時には、風信は慕情を組み敷いていた。
いや、さっきから組み敷いていたのだが、同時に口淫されていた記憶もあった。
慕情はゆっくりと振り返り、自身に覆い被さったままポカンとしている風信をとろんとした目で見つめた。
その目が数度瞬きをして、フゥと息を吐いた。
「もどったな」
その口調がどこか残念そうなのは、気のせいだろうか。
次は南風に抱かれるのを、期待してたのだろうか。
そう思うとかなり面白くなく、同時に胸が震える程に嬉しかった。
南風は消えて、風信一人になっていた。
風信一人なのだが、慕情に挿入した風信の陽物には、慕情の舌の感覚も残っていた。
南風の受けた感覚と風信の受けた感覚は重なり合い、風信の南陽に飛昇せんばかりの衝撃を与えた。
南陽はその衝撃のまま将軍となった。
つまり、慕情のナカで一気に膨張した。
流石にここまでの復活速度を見せた事は今まで無かった。
気を抜きかけた慕情が小さく呻いた。
「お前
………………
少しは落ち着きを
……………
」
思わず目を瞑った慕情が目を開き
………
そのまま目を見開いた。
「玄真将軍」
黒髪の青年が微笑む。
いつの間にか、南風が背後に居た。
「約束です。次は
南風
おれ
の番だと」
慕情の目に呆れと、同時に興奮が浮かぶ。
「許す前に挿れるなど、不敬にも程があるだろ」
ボヤきながらも、慕情はやけに大人びた顔で笑んだ。
「まぁ、良い」
おいで、と囁き、慕情は体の向きを変えると南風を抱き寄せた。
その後、最高に盛り上がったのは言うまでも無い。
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