乙麻呂
2022-02-13 01:28:16
7863文字
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『ナイショの冒険』

ツイネタを書き起こしてみました。
○現代AU
○仙楽組が全員小学一年生


○現代AU(ふわっと設定)
○仙楽トリオが児童(小1くらい)


誰もいない筈の丸太小屋に、バタバタという足音と、甲高い子どもの笑い声が響く。

………いや、笑ってるのは一人だけで、後の二人は怒っていた。


ときどき後ろを振りかえりながら木の床を走るのは、謝憐だ。
肩まで伸びたくり色の髪がふわりと揺れる。
有名な、ちょっと良い子ども服の店のシンプルだけど品の良いシャツとズボンを着ているけど、今は薄汚れてやや残念な姿になっていた。
しかし、謝憐がやんちゃ盛りだと言うことを両親や使用人が知らない筈もなく、汚して帰っても「またですか」と家政婦にため息をつかれるくらいだ。

それを追いかけるのは、風信と慕情。二人とも謝憐と同じ小学校の同級生で、家もとても近い。
いや、『ほぼ一緒』と言っても良いかも知れない。風信は両親と謝憐の豪邸の離れに住んでいるし、慕情は母親とその敷地にある、使用人の為の寄宿舎に住んでいる。
謝憐の家はとてもお金持ちで、風信と慕情の親は謝憐の家で働いているのだ。
謝憐と風信は赤ん坊の頃からの友人だし、一年くらい前に母親と一緒にやって来た慕情も、年が同じとあってすぐに打ち解けた。…………風信とはやたらとケンカをしていて、二人ともお互いに「友だちじゃないと」喚くけど。

埃と泥だらけの木の床には無数の小さな足あとがついている。
それと、はじっこに真新しいランドセルが2つ転がり、少し離れた壁の側にもう1つがきちんと置かれていた。




この春にそろって小学校に入学してから、3人は毎日いっしょに登校して、毎日いっしょに下校している。
二人といっしょを条件に、謝憐は車じゃなくて歩いて学校に通うことをゆるしてもらった。
今までどこに行くにも大人がいっしょで、車ばかりだった謝憐にとってこれはとてもとてもオモシロイことだった。


小学校から家に帰るのと反対の道を行くと、小さな林がある。
7つになったばかりの謝憐にとって、そこはとてもミリョク的な場所だった。最初は「ダメだ」と言ってた風信と慕情だったけど、2人ともさいごは好奇心に負けてしまった。


学校帰りに冒険に出かけた3人は、林の中でボロボロの小屋を見つけた。
ボロボロだけど崩れそうと言うわけではなく、ボウボウに伸びた草の中に立つ、ツタの絡んだ立派な丸太小屋は、6、7の子どもの目には最高のダンジョンに見えた。
入りたくてウズウズしている謝憐を見て、風信は困った顔をした。止めなければいけないと頭では分かっているけど、入ってみたいのは風信も一緒だった。
「ダメだ」
ムッとした顔で慕情が謝憐の腕を掴んだ。
「おこられる」
この場合、怒られるのは謝憐よりも風信と慕情だ。二人は謝憐の面倒を見るように謝憐の両親から頼まれているし、それぞれの親からは危ない事をしないようキツく言われている。
特に慕情の母親は家政婦の一人に過ぎず、何かあれば仕事を失ってしまう。
そしてそれは住む場所を失うのと同じ意味だ。だから、慕情は二人より慎重だった。
元々、幼いクセに可愛げが無いと評判の冷めた性格だ。それをつまらないとは思わない。
そんな性格のせいで幼稚園の頃から謝憐と風信以外の子どもとはまるで仲良くなれないが、別にそれで構わないと思っている。
むしろ、周りの奴らがガキ過ぎて、付き合うのもバカバカしい。
その点、運動能力も頭の回転も『天才』と称される謝憐は、たしかに他の子とは違う。
「むぅ」
慕情の言いたい事を全部分かりながら、謝憐はそれでも諦めきれないように頬を膨らませた。
迷う素振りをする謝憐から目を逸らし、慕情はじっと小屋を見つめる風信を睨んだ。
「お前も止めろ、ガキ」
「誰がガキだ!」
「そうだな………こーゆーのは、ダレか持ち主がいるかも知れない。タヌキとか、ネコとか、クマが住んでる事もある」
ケンカを始める慕情と風信の前で、謝憐は腕を組んでぶつぶつと呟いた。
「ネコならやっつけられる!」
「クマが出たらコイツをエサにする」
お互いに服を掴んで殴ったり蹴ったりしながら、風信と慕情が言った。
「なんだと!お前が食われろ!」
「ことわる!」
…………
謝憐は振り返ると、殴り合う二人の手を片方ずつ掴んだ。
慕情と風信の右手を無理やり重ねて(二人とも絶対に相手の手を握ろうとはしないから、代わりに謝憐がぎゅぅぅと握った。ねんどみたいに、二つの手を一つにしようとしてるようで、二人は「いたいっ」と声を上げた)上下に無理やりブンブンと振った。
「な・か・な・お・り!!………ほら、もうケンカしちゃダメだ」
……………
……………
痛む手を振りながら、二人はそっぽを向いた。
こんな子ども騙しで仲直りする程子どもじゃないが、これ以上ケンカする気も無くなった。
二人が大人しくなったのを見てにっこりし、謝憐はまた小屋の木の扉をじっと見上げた。
「つまり、誰のものでもなかったら、入っていいって事だな」
……………?」
……………?」
慕情と風信はそれぞれ眉を寄せた。
でも、『入ったらいけない』理由をきちんと説明するコトは出来ず、そもそも何でダメなのかも分からなくなってきた。
考えれば考える程、それなら良い気がする。
だって誰もいなければ、入っちゃダメだと言う人も、入って良いと言う人もいないんだから、勝手に入るしかない。
そうと決めた謝憐の行動は早く、もう木のドアをノックしていた。
「だーれーかぁ、いーまーすぅーかぁ?」
大声で呼びかけ、三人はじっと耳を澄ませる。しかし、何の音もしない。
「いない!」
謝憐は嬉しそうに叫ぶと、木のドアを開けた。
なんと鍵はかかってなくて、木のドアは簡単に開いた。
「うわぁ」
謝憐は思わず目と口を丸く開いた。
中を覗き込んだ風信と慕情も目を見開く。
その頬が微かに興奮で赤く染まった。

一面、何も無いただの空き家だ。
ベッドもテーブルも無いそこはただ木の床があるだけだったけど、それでも未知の空気は6歳の子ども達を興奮させる魔力のような空気があった。
人が住んでいなければ、ホコリというのは溜まらない。
だから、見た目は『誰も住んでないのにいつまでも綺麗な、魔法の家』のように見えた。
謝憐は中に向かって駆け出すと、ランドセルを適当に隅に投げ捨てて部屋の中央でくるくると回った。
「すごい!すごい!秘密基地だ!」
「ひみつきち……
風信も煌めく目で小屋を見回すと、中に入って謝憐のランドセルの側に自分のランドセルも投げ捨てた。
慕情は最後まで入るのを躊躇していたけど、結局中に入った。
壁の側にそっとランドセルを置き、じっと小屋を見回す。
木の板は歪んだり割れたりしていて、うす暗い小屋の中から見ると外の光が漏れてそこら中がキラキラと輝いて見えた。
ふぅん、と呟く慕情の肩を叩いて、謝憐がすぐ側を駆け抜けた。
「むーちんがオニだぞ!」
「え?……はぁ!?」
いつの間にか鬼ごっこが始まっていたらしい。
立ち止まり、その場で足ぶみしながら手招きする謝憐の横で、風信がふんと険しい顔をする。
「はやくはやく!」
「だから、むーちんはやらないに決まってるっていっただろ?コイツ、汚れるのいやがるから」
「あぁ?」
いつもなら、好きこのんで汚れたい奴なんかいないだろうと笑ってやる所だが、それよりもムカつきの方が大きかった。
風信の言うことは、他の奴より5倍はムカつくのだ。
「つぎはお前をオニにしてやる!!」
慕情は走り出した。
「つかまえられるモンならつかまえてみろ!」
風信はあっかんべーをして走り出す。
謝憐も甲高い笑い声を上げながら走り出した。



しかし、気がつくと慕情と風信はいっしょになって謝憐を追いかけていた。
慕情と風信がお互いに6度目の『おに』をなすりつけ合っていたら、謝憐が頬を膨らませて文句を言ったのだ。
「なんで二人とも私をおっかけてこないんだ!」
2人は思わず顔を見合わせた。
謝憐の事を忘れてた。いや、忘れてはなかったけど、風信と慕情はお互い、相手より速く強く相手を引っ叩くかに夢中になって、謝憐を追いかけるのを忘れていた。
オニだった慕情はすぐに謝憐を追いかけ始めた。


謝憐はすばしっこくて、全然つかまらなかった。
ギシギシと鳴る床を笑いながら走る謝憐はどう見ても本気じゃないのに、慕情の伸ばした指先をスルリと抜けてしまう。
最初は慕情をはやし立てたり、謝憐を応援していた風信だったけど、あまりに捕まらないそれに、風信もおに側についた。
謝憐はいっそう楽しげにケラケラと笑い、何度も後ろを振り返りながら走り抜けた。
ハァハァと息をしながら風信が言った。
「くっそぉ、ふぉんしん、サクセンカイギだ」
「サクセンカイギィ?」
慕情もポタポタ落ちる汗を手で拭きながら眉をひそめる。
「しえりぇんが、こう行くだろ。オレがこう行くから、お前はあっちからこう行け」
……………
何やら指示を出す風信のまっくろな指を見て、慕情は顔をしかめた。
そっと自分の手を見てみれば、同じくらいに汚い。
よく見たら、風信の背中には小さな黒い手型がペタペタと付いていた。
これは、自分の背中も…………
「おい、きいてるのか?」
風信が慕情を睨んだ。
「きいてる。ハサミウチにするんだろ?」
慕情はイヤそうな顔で頷いた。
「よぉし、行くぞ………アレ?」
しかし、その勢いは間の抜けた声に変わった。
「しえりぇんは?」
慕情も気づく。さっきまでそこら中を走っていた謝憐がいない。
………
笑い声はする。
でも、それはさっきまでのアハハハと言う大きな声じゃなくて、クスクスと言うナイショみたいな声だった。
風信と慕情は顔を見合わせて、同時に上を見た。
「ふぉんしん!むーちん!!見て、2階があった!」
天井の端っこから、謝憐の顔が逆さまに覗いていた。
白い顔は真っ黒で、そこがどれだけ汚れてるかが伺える。
「しえりぇん!?」
「ばか!何でそんなとこにいんだよ!」
ギョッとする風信と慕情に余計に気を良くして、謝憐はクスクスと笑いながら天井の中に隠れてしまった。風信と慕情の真上に向けて、天井をパタパタと足音が移動していく。
よく見ると、謝憐が顔を出した天井の近くの壁には平たい木の棒が何本も横向きに打ち付けてあって、それを足がかりにして天井に登れるようになっていた。
あんなモノを見つければ、謝憐が登らないハズがない。
慕情と風信も興味はあるが、それよりもマックロクロスケの巣に突っ込んだような謝憐の姿を想像してしまってウワと呟いた。
「はやく!ふたりも来るんだ!」
頭の上が笑い声とギシギシと言う音がする。
「しえりぇん!そこはダメだ!おりてこい!」
風信が大声で呼ぶ。
…………慕情がふと黙りこんだ。
パタパタ、ギシギシと言う音に混じって、変な音がする。

………ッキ………メシ………ミシミシ………パキ……………

…………われる」
ポツリと慕情が呟いた。
風信もそれに気づいて目を見開く。
パラ……と頭上に小さな木のクズだとかホコリが降ってきて、2人は目を細めていたが、次の瞬間弾かれたように顔を見合わせた。
2人の顔にはそっくり同じ『ヤバイ!』の文字がでかでかと書いてあった。

2人は走り出した。まず風信が壁の木の足場を使って天井によじ登り、慕情もその後に続く。
屋根の隙間からもれる光でなんとか辺りが見えるくらいの、暗い場所だった。
カビ臭さやこもったにおいに慕情は思わず口元を手で押さえる。
ただの天井裏かと思ったら、そこは意外と広くて、よく見れば木箱がいくつも積まれていた。
謝憐はその木箱をよけて暗やみの中を走るのに夢中になっている。
「しえりぇん!」
近くで風信が大声で呼びかける。謝憐はぴょんと大きな木箱を飛び越えながら、満面の笑みとわかる声で言った。
「ふぉんしん、むーちん!やっぱり来………


バキィィィッッッ


謝憐が着地した瞬間、着地した木の板がとんでもない音を立てた。
足元に空いた大きな光の穴に、謝憐が吸い込まれていく。謝憐のポカンとした顔。伸ばされた手。
全てがやけにゆっくりと見えた。
「「しえりぇん!!」」
慕情と風信は無我夢中で叫んだ。


乾いた木の破片が、いくつも下に落ちる。
はぁ……はぁ……はぁ……
自分と、もう1人の荒い呼吸に、我にかえった。
大きく割れた木の穴のふちに滑り込んだ慕情と風信は、呆然としたまま目の前の惚けた顔を見た。
謝憐の伸ばした両の腕を、慕情と風信が片方ずつ掴んでいた。

落っこちる前に、掴めたのだ。

正直、どうやって掴んだのか覚えていない。
謝憐は何が起きたか分からないって言うような、まん丸な目で風信と慕情を見つめていた。
慕情と風信も思わず謝憐を見つめる。
ぷらんと空中に下がった謝憐の足から、汚れた運動靴が片方脱げた。
………………っ」
「みるな!」
反射的に下を向こうとした謝憐を、風信が叱る。
謝憐はビクッと肩を震わせ、顔を上に向けなおした。
下の方で靴が床に落ちる軽い音がやけに遠く聞こえて、慕情や風信までゾッとする。
「オレらの方見てろ!」
風信がぐっと何かを堪えながら言った。コクコクと謝憐が小さく頷く。
「手につかまって」
慕情が言葉をかけると、腕を掴む風信と慕情の手を謝憐の手の平が握り返した。
我にかえったら、一気に謝憐の体重に引き摺られそうになって慕情は歯を食いしばった。
謝憐は体重が軽い方だけど、それでもやけに重く感じる。
慕情も風信も、同じくらいの体の大きさの子どもをいつまでもぶら下げていられる程、力は強く無い。
二人で掴んでなかったら、今頃一緒に穴から落っこちてただろう。
手のひらからスゥと血の気が引く。
チラッと隣を見ると、風信も青ざめた顔をしていた。
しかし、慕情に気づくと眉を上げた。
「お前、ぜぇったい離すなよ!?」
「お前こそ!」
怒ったように言い合うと、ハラにぐっと力がこもった。
フゥ、と風信が息を吐いたのが分かる。
慕情も息を止めて、腕に力を込めた。
「「せー、のっ!!」」
慕情と風信は声をそろえて同時に謝憐を引き上げた。
ぐんっ、と“ひとりとひとり”よりずっと強い力でひっぱられて、謝憐の体が穴の中にひっぱり上げられる。最後は謝憐がネコみたいに体を丸めて、穴のフチに足をかけて自分で這い上がった。
全部の力を使って引き上げた反動で、慕情と風信はゴロンと後ろにひっくり返った。
その上に、二人が腕を掴んだままの謝憐がべしゃりと倒れる。
「ぶへ
「おも……
思わず呟く二人の上に倒れ込んだまま、謝憐は暫く動かなかった。
風信と慕情も動けなかった。
ハァハァとマラソンをしたみたいな息をしながら、真横の相手の顔を見る。
どっちも、青ざめてて、今更こみあげたパニックみたいな気持ちでちょっと涙目で、ひどいカオをしていた。
風信がぐいっと手で目元をこする。慕情もこっそりと鼻をすすった。
………しえりぇん?どうした?ケガしたか?」
風信が体を起こして、謝憐のボサボサの頭をなでながら言う。
謝憐はむくりと起き上がった。
側に大きな穴が開いてそんなに暗くは無くなったおかげで、謝憐の間の抜けた顔も、泥だらけの顔も、所々擦り傷の出来た頬や手足もよく見えた。
その顔が一瞬歪む。泣くかなと思ったけど、いきなり笑い出した。
「あ、あははははは。はー、こわかった!しぬかと思った!」
ぺたんと床に座り、謝憐はケラケラと笑い始めた。
浮かんだ涙を拭いながら、楽しげに。
そして、唖然としている二人にまとめて抱きつく。
「すごい!2人ともかっこいい!!スーパーマンみたいだ!!」
「ば……
風信と慕情はつられて笑いかけ、しかしものすごく怖い顔をした。
「バカか!?だから止めろって言ったのに!!」
「しえりぇん!!わらってる場合じゃない!!」


それからそっと床に降りて、家に帰った。
下校時間を過ぎても中々帰ってこない子ども達を心配していた使用人達は、全身真っ黒の傷だらけで帰ってきた3人に泡を吹いて倒れそうになった。
風信と慕情はそれぞれの親からこっぴどく怒られた。
謝憐も父親から説教され、しばらくは車での登下校になった。



「あはは、今となっては良い思い出だな」
笑う謝憐をジトリと睨み、慕情が吐き捨てる。
「どこが良い思い出ですか。私の人生における最悪な出来事にランクインする思い出ですよ」
「慕情、お前は最初からここに入るのを止めてくれていたな」
近くの高等学校に入学し、ふと思い出して訪れた林は、今も変わらずそこにあった。
しかし、その雰囲気はまるで違って見える。
手入れのされていない林はただ鬱蒼としているだけで、怪しくもなんともない。
その中程に建つ木の小屋も、今となっては何であんなにはしゃげたのか分からない。
「今も昔も止めましたね。貴方は相変わらず私の苦言など聞きもしませんが」
「制服は汚さない。見るだけだ。何の危険がある?」
「まったく
言いながらも、慕情も本気で止めようとしている訳ではない。
しかし、中に入ると色んな感情が胸に込み上げた。
謝憐が中に入ると、風信と慕情がスマホのライトで辺りを照らした。
それはただの荒れた木の小屋で、天井の大穴もそのままだ。
その穴を見上げ、謝憐は苦笑した。
………あの頃は、本当に死んでしまうかと思ったんだが」
「貴方なら骨折もしなかったでしょうね」
慕情も穴を見上げて肩を竦める。
天井はせいぜい3メートル程度で、身長180を超える風信が手を上げて跳躍すると、穴のフチに手が届く。
やや身長が劣る(あくまでこの前の測定では、だ。今は成長期だ。絶対抜かす)慕情も無言で同じ事をした。
2人の剣呑な目線がかち合うが、それを謝憐の笑い声が遮った。
「ふふ、2人とも、あの時もあんなに喧嘩してたのに、いざとなったら息が合うんだからな」
「コイツと協力したのは成り行きですから」
「今なら謝憐1人くらい、余裕で引き上げられる」
そもそも、運動神経の鬼の謝憐はそうそう危険な目には………
腕を組んでボヤいた2人が、ふと表情を変える。
謝憐もハッと上を見上げた。
天井からパラパラと木屑が降ってくる。
「何かいる」
「狸かネコか?」
「いや、もっと大きい。猿かも知れない」
小声で言葉を交わす間に、天井にビキリと大きな亀裂が入った。
そして、ドサリと何かが降ってきた。
……………っ!!!」
謝憐の動体視力はその影を捉えた。僅かに目を開くのと、反射的にそれを受け止めるのは同時だった。

……………………謝憐の伸ばした腕に収まったのは、幼い人間の子どもだった。
ボロボロの服に、艶のない黒髪。
顔の右半分を覆う、薄汚れた包帯。
それでも、ぱちりと開いた黒い目はとても美しい。
慕情と風信が唖然とそれを見つめる中、謝憐は丸くした目を細めてゆったりと笑った。
「驚いたな。君も降ってきたのか」



(廃屋の小屋で寝泊まりしてた少年が謝憐達の気配に慌てて天井裏に隠れて、脆くなった天井の板踏み抜いて降ってきたのを謝憐が抱きとめるとこから始まる花怜パロに続くのを見たいな)