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乙麻呂
2021-12-23 18:53:57
7102文字
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茶番誘拐
殿下と三郎が人さらいに遭っていちゃいちゃする話。頭空っぽにして見てください。
さて、どうした物かと謝憐は思案した。
詳細を語るまでも無い。
謝憐は誘拐されていた。
手足を縄で縛られ、柱に繋がれている。
とりあえず、謝憐は割れた木の床に座ったまま辺りを見回した。
元は、それなりに立派な屋敷だったのだろう。
民家にしては広く、しっかりとした造りだ。それなりに地位のある人物が住んでいたに違い無い。
窓は塞がれ、空気が篭っている。カビの臭いがした。
謝憐の他に誰もいないのが、不幸中の幸いだろうか。
隣の部屋からガタガタと物音がする。どうやら、誘拐犯はあっちにいるようだ。
(ふむ
………
)
右の手首に意識をやると、そわりと何かが動く気配がした。
「若邪、頼む」
殆ど声に出さずに指示すると、待ってましたとばかりに手首に巻き付いた白綾が伸び、謝憐の手足を縛る縄を断ち切った。
(やれやれ)
暫く縛られた体勢でいたせいで強張った体を解しながら、謝憐は改めて周りを見回した。
と、不意に頭の中で声がした。
『
………
んか
………
でんか
…………
太子殿下!?』
『南風?』
指を2本こめかみに当て、謝憐は頭の中で答える。
通霊陣による通信だ。
『どこにいるんです?いきなり居なくなったりして』
『まったく、子どもじゃ無いんだから動き回らないで!探すこっちの身にもなって下さい!』
扶揺の声もする。謝憐は真面目に言った。
『うーん、それが
………
誘拐されたんだ』
物凄い沈黙が満ちた。
『ハァ?』
『ふざけて無いで早く帰ってきてください』
身も蓋も無い反応だ。
『君達なぁ
……
』
『だって貴方なら、手足を縛られてようが簡単に相手をノせますよね?相手が凶の鬼だろうと逃げて来れますよね?馬鹿やってる暇あったらさっさと逃げて来て下さい』
『逃げられない理由でもあるんですか?』
扶揺の呆れ果てた言葉と入れ違いに、南風が嘆息混じりに訊いてきた。
『ああ、どうやら人を拐って金儲けを企む集団らし
………
』
『早く帰って来て』
皆まで言わせても貰えなかった。
『何なんですか?まさか、貴方、自分を売ろうとか考えてませんよね?売るのはガラクタだけにし
……
』
唐突に扶揺の声が途切れた。
『扶揺?南風?』
こめかみに指を当てたまま呼びかけるが、何の反応も無い。
法力が切れたのだ。
「
……………
」
今頃怒り狂ってるに違いない。
正直、人拐いの元よりも扶揺と南風の所へ戻る方が余程怖い。
「ハァ
……
」
謝憐は嘆息した。
しかし、自分だって遊んでいる訳では無いのだ。もしも人を攫って売るのなら、他にも被害者がいる可能性が高い。
助けない訳にはいかないだろう。
その時、隣の部屋が騒がしくなった。
人拐いの仲間が帰ってきたらしい。
やはり、他にも誰かを拐って来たようだ。
(
…………
)
じっと耳を傾けていた謝憐は、こちらにやって来る気配を感じて慌てて元いた位置に座り直した。
しかし、どう見ても拘束が解けているこの状態はマズイだろう。
(若邪)
小声で呼びかけると、シュルシュルと白綾が手首と足首に巻き付いた。
同時に、部屋に男が入って来た。謝憐を拐った男とは別人だ。危惧した通り、同時に複数箇所で誘拐をしているらしい。
拐われた人も一緒だ。
「
………
あ」
『拐われた人』を見て、謝憐は思わず目と口を丸くした。
その人は、仏頂面を一瞬で甘い笑みに変えて謝憐を見返した。
見るからに質の良い紅い衣に、赤い紐で結いた漆黒の黒髪。
(三郎!!)
謝憐同様後ろ手に縛られているが、その表情は余裕そうだ。
男達は、謝憐の様子に違和感を感じたのか一瞬首を傾げたが、何も言わなかった。
……………
縄が白綾になっていれば、やはり目立つか。
「おら、そこで大人しくしてろ」
人拐いに柱の側に押しやられ一瞬殺気を滲ませたが、三郎はいつになく素直に柱の側
……
謝憐の隣に腰を下ろした。
男が三郎を縛った縄を柱に繋ぐ間も、三郎はニコニコと謝憐を見ていた。
謝憐も笑みを返す。
今にも厄命が飛び出して人拐い達を一掃するんじゃ無いかとヒヤヒヤしたが、そんな事もなさそうでホッとした。
男達がいなくなると、謝憐は小声で話しかけた。
「三郎も拐われたのか?」
言いながら、あまりの滑稽さに目眩がしそうだった。鬼王はこの世で一番『拐われた』なんて言葉とは無縁な存在だろう。
そして、それはさっきの南風と扶揺も同じ気持ちだったに違いない。
三郎は世間話でもするような軽い口調で言った。
「うん、哥哥を探してたら絡まれてさ。ぶっ潰して帰ろうと思ったんだけど、哥哥の気配がしたから付いて来たんだ。何かの任務中だったら、邪魔しちゃ悪いと思って」
「それは
……
気遣わせてしまってすまない」
話している間に、謝憐の手足に巻き付いていた若邪が解け、三郎の縄を切るとスルスルと謝憐の右腕に戻る。
三郎は自由になった腕を振りながら笑った。
「それで、哥哥は何をやってるの?」
「私も、南風達と任務帰りに絡まれてな。他に被害者がいたら大変だから、付いて来てみた」
扶揺と南風がいたら、何をしてるんだと両脇から怒鳴りつけられているだろう。
三郎は笑うでもなく、気楽な顔で「ナルホド」と呟いた。周囲に、ふわりふわりと何匹もの銀色の蝶が舞う。
謝憐の目の前で数回羽ばたいた後、蝶はどこかへ飛んで行った。
暫く黙っていたが、三郎は笑みを浮かべた。
「大丈夫。他にはいないみたい」
「そうか。じゃあ
………
」
そろそろ帰ろうか、と謝憐が口にしようとした時、荒い足音が近付いてきた。
「る、若邪!」
慌てて謝憐が呼びかける。若邪は謝憐と三郎にシュルルと巻きついた。
「くそ、目ぼしい奴がいねぇ。これだから田舎は
………
」
謝憐を拐った男だった。
男
………
人拐い其の一とでも言うか。人拐い其の一は、謝憐と三郎を見て眉を顰めた。
「ァア?何やってんだ、お前ら」
「
………
捕まってる」
「そうだね、捕まえられた」
神妙な顔で謝憐が言い、三郎はにこにこと同意する。何かが微妙に違う気もするが。
謝憐と三郎は密接していた。
二人は背中合わせに座っているが、その二人を纏めて白綾がぐるぐる巻きにしている。
別々に縛った筈の二人が一纏めになっている事に、人拐い其の一は怪訝な顔をした。
「
………
こんなだったか?」
「こ、こんがらがったんだ」
謝憐が慌てて言った。背後で三郎がぷっと笑う気配がして、謝憐はムッと眉を寄せる。
「他にどんな言い訳があると言うんだ!」
小声で言えば、三郎は小声で「ごめんごめん」と笑った。
「別に、言い訳なんかしなくても良い。もうここに用は無いでしょう?」
そうだった。ここで縛られているフリをする必要も無いんだった。
「若邪、もう良い
………
」
謝憐は若邪に縛るのを止めるよう指示しようとしたが、ドシドシと足音が近付いてきて思わず身を固くした。
一瞬解けた若邪も、謝憐の動きに反応して慌てて巻き直る。
そして、狭い部屋にもう一人の人拐い
………
三郎を拐ってきた方だ
………
が入って来た。
「チクショウ、誰も捕まりゃしねぇ!」
吐き捨て、男は謝憐達を見て目を丸くした。人拐い其の一を見遣り、眉を顰める。
「
…………
おい、何でこんな縛り方をした?」
「ハ?俺じゃねぇよ。お前だ
………
ろ
………
」
『其の一』は吐き捨て、謝憐達を見て言葉を途切らせた。
謝憐と三郎は相変わらず密接していた。
背中合わせから、向かい合わせになって。
もはや抱き合っていると言うべきだろう。
「若邪
…………
どうしてこうなる?」
「いいんじゃ無い?こっちの方が兄さんと近いし、顔も見れる」
「もう、三郎、楽しんでいるだろう?」
「うん、楽しいね。兄さんが狼狽える所も見れて」
「三郎!」
「お前ら、自分がどう言う立場か分かってないようだな?」
『其のニ』がのっそりとこちらを睨みながら歩み寄って来た。
その瞬間、三郎の目から温度が抜けた。
「さ、三郎。いいこだから、な?」
謝憐は三郎の体ごしにカタカタと振動を感じ、慌てて三郎の腰の辺りを宥めるように撫でた。
三郎の目から険が抜け、困ったように眉を下げる。
「兄さん、そんなトコ撫でられると、どうして良いか分からなくなる」
「えぇ!?私は今どこを撫でた?」
縛られていて腕は上手く動かせないし、顔は三郎の肩口に押し付けた状態で状況を見る事は出来ない。
三郎はクスクス笑うと、謝憐のうなじに唇を付けて囁いた。
「冗談だよ、もっと触っていいよ」
ボンッと謝憐の首筋が赤くなった。
「さ、三郎!?」
三郎の腰(と思わしき所)で、またカタカタと何かが振動した。
今度は殺気ではなく、『いいないいな、僕も撫でて』と訴えるような揺れ方だった。
「おい、聞いてんのか?ガ
……
ギッッ」
近寄ってきた『其のニ』の顎に白綾が炸裂した。
泡を噴いてひっくり返った仲間に『其の一』が仰天する。
「お、お前どうした?何があった?」
「僕たちは何もしてない。お腹でも空いてたんじゃない?」
確かに、三郎も謝憐も直接手は下していない。
「
………
まさか外に誰かいるのか?」
『其の一』は部屋の外を警戒し始めた。
シラッとした三郎の言葉に苦笑し、謝憐はハッと目を見開いた。
「そうだ
………
!」
「どうかした?哥哥」
「南風達と通霊の途中だったんだ」
「
…
する必要ある?」
あからさまに三郎の顔が拗ねた物になった。謝憐は苦笑する。
「話の途中で私の法力が尽きてしまってな。心配
………
はしてないと思うが、怒ってるかも知れない。いつまでも帰って来ないと、探しに来てしまうかもしれないしな」
「そんなの勝手にさせとけばいいじゃない」
「しかし、二人とも忙しい身だ。こんな事で煩わせたら悪い」
三郎は口を尖らせていたが、ふと悪戯を思いついたような笑みを浮かべた。
「分かった。僕の法力をあげる」
「すまない、三郎」
「だから、頑張って」
「
…………
」
謝憐は顔を上げた。三郎に向かい合わせで密着したこの体勢で、謝憐は三郎の肩口に顔を埋めた格好で縛られている。
顔をあげると、目の前に三郎の弧を描いた唇があった。
薄く色付いた唇が目の前にあると言う事は、謝憐の唇とは高さが合わない位置だと言うことだ。
「頑張って」とは、つまり、「頑張ってキスしてみせて」だ。
「
………
額じゃダメか?」
「ダメ」
小悪魔ならぬ、小鬼のような笑みで三郎は唇を舐めた。
額を舐められるんじゃないかと一瞬でも身構えた謝憐を心底楽しそうに見つめ、三郎は「ン」と唇を突き出した。
「
…………
」
謝憐は精一杯頭を上げてみるが、三郎の口には届かない。
「さ、三郎も下を向いてくれないと!」
「こう?」
三郎は素直に首を下げた。さっきより近付いた謝憐の鼻先にチュッとキスを落とす。
カァと赤みを増した顔を悔しげに歪め、謝憐は何とか唇を合わせようと上を向く。
「ん
………
ふ
……………
んんっ」
必死になり過ぎて時折声が漏れるが、謝憐は気付いていない。
三郎はフルフルと震え始めた。
「
……………
三郎?笑ってないか?」
「笑ってない笑ってない。哥哥、可愛いなぁって見てるだけ」
「私は必死で!」
「お前ら何やってる!?」
「邪魔するな」
一瞬三郎の目が殺気じみて、同時に白綾の端が飛んだ気がしたが、謝憐はそれ所では無かった。
謝憐が身を起こそうとすれば縛られている三郎の体も一緒に持ち上がってしまうし、何度やっても三郎の唇は謝憐の目元だとか鼻先だとか、頬だとかにチュッと口付けられるばかりで唇には重ならないし、終いには何重にも体に巻かれた白綾の中で三郎の手が謝憐の腰を撫でて悪戯までし始めるし。
ここに第三者が
………
それこそ扶揺達がいれば、若邪を解除すれば良いと怒鳴ってくれるのだが、その扶揺達に通霊する為にこんな事になっているのだ。
三郎は気付いていないわけないのだが、面白いから黙っていた。
面白くない筈がない。
法力目当てだとしても、謝憐からキスをしようと必死になっているのだ。
若邪は緩むどころか、よりギュッと二人の体を縛り付ける。
重なった胸越しに、謝憐の心臓の音が肌を震わせる。
(ああ、まずいなぁ)
三郎は心の中で笑った。
やはり、あの中天庭の家来共への連絡は、「謝憐は拐われ、今夜は戻らない」になりそうだ。
拐う相手は人拐いではなく、鬼王だが。
そんな三郎の胸の内など知らない謝憐は、角度を変え、身を乗り出し、とうとう三郎の薄く開いた唇にチュッと口付ける事に成功した。
「どうだ!」
ドヤ顔で謝憐が見上げる。
三郎はそれはもう良い笑顔を浮かべた。
「うん、でも残念」
「え?」
「一瞬じゃ、法力は渡せない」
「
………
確かに」
謝憐は難しい顔になると、覚悟を決めた顔になった。
「もう一度!」
「何度でも」
ふふっと三郎が笑う。
そして、また顔の至る所に三郎のキスが落とされ、ようやく謝憐の唇と三郎の唇が重なった。
「ん
…………
ふぅ
…………
」
やや無理な姿勢なせいか、首を一杯に仰け反らせた謝憐は苦しげだ。
今にも離れそうな唇を補うように、いつもより互いに舌を伸ばして絡め合う。
口の端から垂れた唾液が謝憐の口元に垂れて伝う。
「ふ
……………
ん
…………
ぁ
………
」
吐息の合間に、謝憐の喉から声が漏れる。無意識なんだろう。
舌を限界まで伸ばして絡めるのは、そう言えば初めてかも知れない。
ずっとやっていたいが、謝憐の首と舌を痛めてしまうのは本意ではないので、三郎は最後に唇を啄んで口を離した。
「どう?通霊は使えそう?」
酸欠と快楽でとろんとした目をしていた謝憐は、三郎の言葉に我に返ったようだった。
「ああ、ありがとう。三郎」
言うなり、謝憐は左手をこめかみに当てた。
………
若邪が緩んで二人を解放したのだ。つくづく空気の読める法器である。
『これで良い?』と言うように三郎の手元に巻きついて揺れる白綾を、三郎は指のハラで撫でて労ってやった。
謝憐は解放された事に気付いていないのか、三郎に向かい合わせで抱き着いたまま通霊をしている。
三郎はその腰を抱いて、通霊が終わるのを待つ事にした。
『扶揺?南風?』
呼びかけると、すぐに返事が返って来た。
『殿下!?何を遊んでるんですか?上天庭に報告だってあるんですから早く戻って来てって言ってるでしょう?』
『あれ、ちょっと待ってください。法力が尽きたんじゃ無かったんですか?何で通霊出来るんです?』
南風の吠える声に、扶揺の怪訝な声が重なる。
南風も黙る気配がした。
『それが、あれからすぐに三郎も拐われて来て』
謝憐の説明に、また沈黙が落ちた。
話を続けるのも面倒臭そうな間があり、扶揺が言った。
『前世でどんな罪を犯したら、うっかり太子殿下と血雨探花を誘拐するような目に遭うんですかね』
『被害者は私達だぞ?』
『被害があったんですか?』
冷め切った口調で南風が尋ねる。何があっても大丈夫だと、信頼されているようで何よりだ。
『被害
…………
』
謝憐は考えてみる。にこりと笑った三郎の顔と目が合って、思わず口籠った。
(三郎にここぞとばかりに揶揄われたのが一番の被害だ
…
!)
しかし、そんな事を言えるわけも無いし、扶揺達も聞きたくも無いだろう。
一気にぞんざいになった口調で扶揺が言った。
『で?その人拐いとらやらはどうしたんです?生きてます?』
『え?』
そう言えば、肝心の人拐いはどうしただろうか。すっかり存在を忘れていた。
謝憐が辺りを見ると、『其のニ』に折り重なるようにして『其の一』も倒れていた。
「哥哥がやってたよ。と言うか、若邪が」
視線を向けられ、三郎がにっこりと言う。
無意識にのしていたらしい。そう言えば、体がやけに軽いと思ったら、若邪はすっかり緩んでいた。
謝憐が三郎から身を引く動きに合わせ、若邪は完全に二人から離れると謝憐の右手に巻きついた。
『
……
気絶してるな?』
報告すれば、扶揺と南風が疲れ切った溜息を吐いた。
鄙奴の群れを退治した時より余程疲れた様子だ。
『なら、今度こそ戻ってきて
……
』
頭の中で扶揺の声が響くと同時に、三郎が謝憐の耳元で囁いた。
通霊の会話が聞こえる筈も無いのに。
「今度は僕が拐うから、帰れないって言って」
普段より低い
……
でも花城の姿に比べるとやや高くて、その分甘い言葉に謝憐の首筋に熱が這い上がった。
『っ
…………
』
『殿下?』
『どうかしました?』
訝しげな南風と扶揺の言葉に、謝憐は慌てて言う。
『す、すまない。また天庭には明日改めて報告に行くから、二人は先に帰っててくれ!』
『
……………
』
微かに焦りと熱を帯びたその声に、何かを察してしまった二人は今度こそ黙り込む。返事もしたくないと言わんばかりである。
更に、
「もう良いでしょ」
三郎の手が謝憐の手を掴み、こめかみに当てていた指を自分の元に引き寄せてしまった。
ぷつりと切れた通霊に、謝憐は眉を下げる。
「三郎」
「こんな茶番に大人しく付き合った三郎に、ご褒美をくれませんか?」
片手を謝憐の腰に手を回し、片手で謝憐の腕を掴んで自分の胸に触れさせ、こてんと首を傾げた三郎に、謝憐は唸った。
「
………
まったく、仕方の無い子だ」
そして、今度は自然な動作で二人の唇が重なる。
カラン、カランと賽子が転がる音がして、二人の姿はその場から消えた。
その後、二人がどうなったかを察した神官や鬼はいたが、誰も言及しなかったと言う。
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