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倉木
2024-01-02 21:37:22
2569文字
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Rot
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LD
Rot亀
「ふあぁ
…
」
大きな欠伸が零れて、思わず一緒に声も出てしまった。
気が付いたらさっきまで一緒に映画を見ていたはずの兄弟もいない、液晶も真っ暗。
集中していたのか居眠りしていたのかいつのまにか部屋には独りになっていた。
ひとまず時間を確認しうようと手探りで携帯電話を探すが見当たらず、しょうがないのでソファに沈んでいた身を起こす。
背もたれの裏に落ちていたので身体を伸ばして手に取ろうとしたが、バランスを保てず携帯電話に触れた途端ソファからは落ちてしまった。
表示された時間はすっかり深夜。
しかしその数字がぼやけて見え、どうやら先ほどの大きな欠伸のせいで目元に涙が溜まっていたらしい。
邪魔で拭ってから再度携帯電話に目を向ける、しかし画面が再びぼやけて見えなくなった。
どうやら再び溢れた涙で阻害されたようだ。
「え、あれ」
それを何度か繰り返して違和感に気付く。
確かに拭った筈なのに、目元からあふれ出るそれは止まらない。
両の手で擦ってみても止まる様子はなく。
痛いわけでも痒いわけでもなく、ただ湧き出すように涙が浮かんできていた。
どうしよう、このままだと水分なくなって死んだりする?
そう困惑していたところで、突然電気が消え真っ暗になった。
驚いて声を上げたところで再び点灯。
「なんだ、誰もいないのかと思った」
呆れたような声はドナテロのものだった。
どうやらソファに隠れてレオナルドが見えなかったらしい、夜更かし常連の彼にとっては日常茶飯事なのだろう。
輪郭がおぼつかない視界のまま顔を覗かせると、リモコンを手に取ったドナテロと視界はぼやけていたけど目があった気がする。
現にドナテロが一瞬息を呑んで、いつになく狼狽えた様子で駆け寄ってきた。
「
……
は、えっ」
見るからに動揺した様子で目の前に座りこむドナテロに、少しずつ冷静さが戻ってきた。
そりゃ偶然通りかかったら、突然泣いてるレオナルドに遭遇したらびっくりするよな。
「なんか、止まらなくなっちゃって」
そう笑いながら言ったんだけど、ドナテロの表情は一層歪んだ。
なんか儚く見えたのかな、涙って偉大だ。
こっちは欠伸しただけなんだけど、温度差にちょっと面白くなってくる。
「どこかぶつけたりとかした?」
控え目に触れた手が目尻をなぞる。
少しだけピリッとした感触は擦り過ぎたせいなのはわかるので、レオナルドは笑ったまま首を傾げる。
「なにもー?」
欠伸しただけ、ていうのは今のこのあれこれが一気に豹変しそうなので黙っておいた。
そんな中でも涙は未だ止まらないままで、ドナテロの手を濡らしていく。
普段くしゃみでもしようものなら飛んで逃げるくせに、優しい手つきで透明な粒が取り払われていく。
眼を細めて覗き込む様は恐らく症状を観察しているんだろうが、そう迫られると悪戯心が沸いてしまって。
そのままキスでもしようとしたんだけれど、直前で掌が飛んできた。
「ふぐっ」
「バカレオ、とりあえず検査するからついてきて」
もう優しいターンは終わってしまったらしい、呆れたような口調は額をこずかれた(でも涙が浮かぶくらいの痛みではなく、控え目な強さだった)。
しょうがないと立ち上がったところで、レオナルドはひとつ困ったことに気付く。
何せ涙がどんどん出てくるので、見渡してみると思った以上に視界が制限されるのだ。。
見えなくもないんだけれど思っていたよりも煩わしい。
先を行っていた筈のドナテロも動かないレオナルドに気付いたらしい、振り向いてひとつ溜息。
面倒そうな態度で戻ってきたが握られた右手はもどかしいくらいに控え目だった。
そうして導かれるまま歩を進めてラボに到着。
まるで小さい子を連れて歩くようだったと、促されるまま椅子に腰かける。
何やら準備しているらしいその後ろ姿にねぇ、と呼び掛けた。
「良い子にしてたんだからご褒美に頭撫でてよ」
振り向いたドナテロの目は絶対零度という言葉がぴったりだった。
しかし見上げるレオナルドの左目から、ちょうどよく溢れでた一筋涙が頬を伝う。
それにたじろいだドナテロはしばしの沈黙のあと、憮然とした顔のまま手を伸ばした。
「
……
こんなの何が良いの」
控え目に乗せられた手がゆっくりとした動作で頭を撫でる。
「へへっ」
どうにも嬉しそうにされてることに気まずいのか、恥ずかしそうにしているドナテロは強く出れない様子だった。
そういえばミケランジェロも喜怒哀楽問わず泣く時はドナテロに構ってもらっていたような気がする。
この戸惑いがちな所作を独り占めしてたのなら、ちょっと面白くないなって思った。
ミケランジェロがそれに気づいていたかどうかはわからないけれど、意外とちゃっかりしているところあるのだうちの末っ子は。
「
………
ねぇ、涙治ったんじゃない?」
言われて目元を指で擦る。
「あれ、ほんとだ」
先ほどまで感じていた濡れた感覚はなく、いつの間にか涙は止まっていた。
最後に掌で擦って数度瞬き、そうして改めてあたりを見回してみると残滓はあれどはっきりとした輪郭を象っていた。
結局原因はなんだったんだろうと思うけれど、とりあえず治ったからいいか。
止まったら止まったらで跡がむず痒くて触ろうとすると、その手を掴まれた。
「触るなって、赤くなってるから冷やさないと」
そう言っててきぱきと冷たいタオルを用意したドナテロがそっと目に被せてくる。
ひんやりとした感触が気持ち良かった、鏡とか見てないから思っていたよりも腫れていたのかもしれない。
タオルがずり落ちないように上を向くと平衡感覚が崩れ後ろに倒れそうになったが、両の手で引っ張られて元に戻った。
視界が覆われているせいで見えていなかったけど傍にいてくれたらしい、今日のドナテロはやっぱり優しい。
そしてそうなると、どうしても悪戯をしかけたくなるのがレオナルドだった。
「あ、ちょっと痛くなってきたかも」
そう言うと握っていた手がぴくりと反応して。
離れていった手の代わりにゆっくりと開けた視界に映りこむのは心配の表情を貼り付けたドナテロだった。
覗き込むその頬に触れ、今度こそその唇に噛みついてやった。
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