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倉木
2024-01-02 21:36:06
2683文字
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Rot
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LD
Rot亀
繁華街のネオンは遠く、月明かりでかろうじて成り立つようなビルの上。
もっとも今夜はスモークでも炊かれたような曇り空、自らの足元も視認するには朧気だ。
べたついた湿気は、この後も天気が良くないことを容易に予想できる。
肌に直接まとわりつくような不快指数はかなり高い、そんな夜だった。
「もう帰っていい?」
そうぼやいた途端ドナテロを誘った張本人は逃がさないとばかりに、握られた手に力がこもる。
身体が一瞬浮き上がるほどの勢いで引き上げられ、ひとり楽しそうなレオナルドは笑顔を見せた。
「まーまーいいじゃん!」
屋上の地面は雨の名残か乾ききっておらず湿り気を帯びている。
躊躇っている間も促す手は止まらず、しょうがないのでセーターの後ろの裾を引っ張り腰かけた。
直に座ることは防げたものの、じわりと濡れた感触に溜息が漏れる。
「はぁ、なんでこんな生産性のないこと
…
」
部屋に籠ろうとしたドナテロを連れ出したいレオナルドとの攻防に折れたドナテロも悪いのだけれど、目的があればまだしも特に意味もなく連れ出されればそう文句も言いたくなると言うもの。
誰にも言わずに出てきたから、ばれればどうせまたうるさく言われるに決まっている。
いざとなったら全面的に責任を押し付ける気だが面倒なのは変わらないのだ。
吹きつけた風は強く、首元まで覆うセーターでも隙間から冷気が入りこんできて身を縮ませる。
「さむっ」
そう聞こえたのは隣から、そして目の前に飛び込んできた布が視界を覆った。
伸びてきた手が掴んだが、強風にあおられて波状にはためくそれは見覚えのあるマフラーだった。
寒いからと顔の半分も埋もれるように3重にも巻いていた筈だが見事に剥がれてしまったようだ。
忙しなく出てきたせいで巻き方が緩かったらしい。
「何やってるんだよバカ」
ちょうど目の前を泳ぐ先端を掴み、レオナルドの首周りを2周くぐらせる。
外れないように喉元で軽く結おうとしたら、にやにやと笑う顔が目に入ってそのまま力を込めた。
呼吸を圧迫したらしく慌てて手を叩くのでおとなしく離してやると、苦しそうに咳き込んでいた。
それに少しだけ今までのイラつきがおさまったものの、突如背後に回っていた手で引き寄せられた。
体勢を崩してレオナルドの胸に抱き込まれてしまう。
「っおい、くっつくなって!」
「だって寒いし、こうしてた方があったかいじゃん」
耳元で聞こえる心底楽しそうな声。
離れようともがくが、両手の上から抱えられたせいで身動きが取れない。
「ふたりきりでデートも悪くないだろ?」
背後の装備からアームを出そうとしたところで、そう言われて思わず動きが止まってしまった。
「
……
ロケーションは最悪だけど、こういうのデートっていうの?」
わざわざ天気の悪い日に外出なんて予定がなければしないだろう。
実際ドナテロだって他の兄弟だってそのつもりだったのだ、わざわざ外に出ようなんて発想思いつくのなんて目の前の馬鹿だけだ。
「だからこそふたりで出れたじゃん。じゃあ今から映画でも行く?ピザ食いにいってもいいけど」
そんな無茶苦茶な理屈でを、ものすごいドヤ顔でそんなこと言ってきた。
冷たい風が吹き荒れる中でのんびりするようなシチュエーションではないはずなのだけれど、そんなことは気にしないらしい。
ご機嫌なようでドナテロにひっついたままで、冷えた頬を指先が撫ぜる。
触れ合っている箇所が異様に熱が持っている気がするのは、外気との温度差のせい。
近いせいで聞こえるハミングは最近流行のラブソングな筈だけれど、本来の曲よりずっとアップテンポだ。
「
……
ひっ!?な、なに」
唐突に首元を擽られて、ぞわぞわとした感触に飛び上がりそうになった。
反射的に逃げようとしたけれど、しっかりとホールドされた状態では腕をばたつかせるくらいしかできない。
「んー?なんで隠してんのかなって」
セーターの首元をを指で引っ張る。
顎下を掠める指先に、出そうになる声を飲み込んだ。
「それはっ、今夜は冷えるって聞いたから引っ張り出してきたんだよ」
まっとうな返しだったはずなのに、レオナルドは意地悪気な笑みを崩さず顔を寄せてきた。
吐息を吹きかけるような囁きは、唇が触れそうな距離でなければこの風に吹き消されてしまっただろう。
「嘘つき。だってココ、見えたら困るもんなぁ」
柔らかな生地を摘まんでいた指が離れ、今度は布越しに指を滑らせる。
首筋を辿り、バトルシェルに触れそうなとある箇所で指は丸を描く。
その意図を理解して、ドナテロは頬が熱くなるのを自覚して目を逸らす。
それを間近で見たレオナルドは満足そうに熟れた頬を柔らかく食んだ。
そしてようやくレオナルドが過剰なまでに上機嫌な理由に気付いてしまった。
思い出したのは昨晩のこと。
目を合わそうと覗き込んでくる視線から必死で逃げる。
変にスイッチが入ってしまった自分がしでかしたことは、できれば記憶から消したい出来事だった。
その名残の跡に何があるのか、わかるのはレオナルドとドナテロだけ。
「釣れないねぇ、昨日はあんなに甘えて可愛かったのにさ」
そしてその追い打ちに、外の寒さとか一気に飛んでしまった。
背中から伸ばした金属製の腕がレオナルドの四肢を掴み無理矢理引き離す。
「イテテテテッ!ちょっ落ちる落ちる!」
「元はと言えばお前がこんなところにつけたせいだ!」
首元だけじゃない、うっ血痕やその他明らかに事後とわかるような形跡はドナテロの全身あらゆるところについている。
熱に浮かされて途中から記憶が曖昧だった為朝起きて愕然としたし、隣で健やかに眠っていたレオナルドを叩き起こして放りだした。
その後であらゆる手段で見えないように努力する羽目になったのだ。
息を切らして立ち上がると、その瞬間突風が吹きつける。
身体が傾きそうなくらいの煽りに視界すら奪われ、ドナテロは再び地面に手をつく羽目になった。
その手に一粒の水滴がひとつ落ちる。
どうやらまた一雨降りそうな兆しに見上げれば、真っ黒に覆われた夜空には月も浮かんでいなかった。
そしてそこでようやく、アームの操作を怠っていたことに気付く。
人口腕は先ほど巻いたマフラー一枚だけが引っ掛かり、靡いていた。
それを手に取り。
「
………
まあいっか、帰ろ」
雨に濡れるのは嫌だったので、ドナテロは首元の衣服を口元まで引き上げさっさと屋上から飛び降りた。
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