わからん
2022-09-04 19:44:27
545文字
Public 五夏
 

【五夏短歌】夏の終わり

「夏」をテーマに詠んだ五夏短歌です。全19首。縦書き表示推奨

融点も飽和も知らぬまま混ざり合えると信じていたあの夏

起きた時の足の怠さや胴に絡みついた腕の温さが好き

暑さのせいと言ったけど正しくは「口実を与えずに済む」でした

悪い夢見て怖かったってきみがねじ込んでくる汗ばんだ腕

昔見た悪夢が恋しい 葬った男は僕の顔をしている

頬を打つ土砂の冷たさを怖れておまえに縋る夜すらも夢?

親友と夏の終わりに海へ行く 凭れた肩で見つけた寝癖

痕が目立つと言うけど日焼けよりは地味だろ多分……「ただの虫刺され」

さざ波で洗う足を包む砂がまるで炎のように熱くて

柔らかな足跡に足重ね知る おまえという存在の重さ

わだつみに金魚はいない その脆さ、弱さに波が嫉妬するから

実家で飼う金魚を思う ましらに飼い殺される未来の私

「次の機会に」なんて無理 無理だった ひとりぼっちの朝を数える

自己嫌悪止まらなくてマジしょーもな 夏って聞くと思い出すとか

砂浜を歩き、歩いて、影法師ふたつ、伸びゆく、陽に逃げを打つ

落陽の緋色を惜しみ揺らぐ青 瞼閉じれば夜は短い

青いまま綺麗でいてね翳りゆく瞳の中で思い出だけは

世界が海にのまれるのならくらげのように生きるあいをたゆたう

夜明け待つ闇の深さを藍と呼び、分け合えぬ孤独を愛と呼ぶ