望月 鏡翠
2024-01-01 14:04:18
866文字
Public 日課
 

#1225 「露」「盗む」「棺桶」

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 最近、畑に泥棒が出る。一日や二日のことならば耐えられたが、もう一月も続いている。流石に我慢できなくなったので、盗人を捕まえてやることにした。
 まずは自分が隠れるための小屋を設置する。設置してすぐは警戒されるに決まっている。だからそのまま放置して、小屋の存在に慣らすのだ。
 最初は盗人もぴたりと止む。だがそのうち盗むことを我慢できなくなるのだ。何もないとわかると、我慢しているのがバカらしくなるのだろう。一日だけ。二日連続。そうしてまた毎日に戻っていく。
 そうして連中がすっかり慣れきって油断したあたりで、小屋に隠れるのだ。夜の間に移動しておけば、あとは寝ていたって構わない。朝になってから隙間から外をそおと観察する。夜のうちに来ないことはわかっている。
 何しろ連中が狙うのは朝露なのだし、陽の光がないところでは活動できないのだから。
 夜明けを迎えると、鳥の声に混じってパタパタと小さな羽音がする。
 盗人がやってきた。
 何匹もいる。
 葉っぱを揺らして朝露を落としてしまわないように、慎重に羽ばたきながら葉や花の縁に近づく。器用なものは枝に止まる。そうして腰に下げた爪の半分の大きさもない小瓶に朝の一番綺麗な露を詰めていくのだ。
 冗談じゃない。うちの妖精のために育てている草花だというのに。
 私は小屋から飛び出して、虫取り網をふるった。何匹か撮り逃したが、盗人はほとんどが捕まった。腰に下げていた朝露は取り上げた。集めるのはなかなかに手間だったからちょうどよかった。
 さて捕まえた野良妖精どもはどうするか。そのまま食べるには野趣が強すぎる。
 少し迷ったが、息ができなくて真っ暗で狭い、棺桶のような場所に閉じ込めてやった。これだけ量がいれば、悲鳴を紡いで糸にすることができる。妖精を弱らせてしまうから、飼育しているものを使って糸を作るのは難しいのだ。
 その悲鳴を聞いて、きっと仲間が取り返しに来るだろう。それをまた捕まえればいい。
 これは新たな収穫物になるかもしれない。野良妖精の糸紬。悪くないだろう。