groggy
2016-11-04 23:13:01
1497文字
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さんまde相席

たろうけワンライ お題「さんま」でじろたろ
花丸本丸をうっすら意識

「兄貴!!」
「おや。どうしたのですか・・・・・・それはなんです」
スパーーーーーン!!!と子気味いい音を立てて障子が開く。
太郎が目をやると、次郎太刀が喜色満面といった笑みでこちらにどたどたと歩いてきた。
そのまま視線は次郎太刀が小脇に抱えた物体へと吸い寄せらせる。
「ああこれ?七輪だよ」
「それでどうしようというのですか。また酒盛りですか」
やや呆れた視線を寄こされても、次郎太刀はどこ吹く風といった体で、ニヤニヤ笑いを浮かべる。
「ちょっといい肴を手に入れてね~~♪兄貴も一杯やらない?」


パチパチ、と目の前で脂が弾けるのを、太郎太刀はしげしげと見つめた。
次郎太刀が持ってきたのは、秋刀魚という細長い魚だった。漁が始まったのは江戸時代だそうだから自分が知らぬのは当然だが、多少なり下界を知る次郎太刀は、ずっと食してみたいと思っていたらしい。
確かに、炭火で炙られ、皮の合間からジワリと脂が漏れ出す様や、香ばしい皮の焼ける匂いに網目の跡、これで不味かったら詐欺もいいところである。たかが数分のうちに、太郎太刀の心は秋刀魚に奪われてしまった。
「ふむ・・・次郎、まだ食べられないのですか」
「あははっ。兄貴もすっかり秋刀魚の虜、だねぇ。もうすぐだよ」
隣で大根おろしを擦りながら、次郎たちは一心に秋刀魚を見つける兄の顔を見つめた。
最初は現世になれることができるだろうかとか、顕現した本丸の慌ただしい様に馴染めるだろうか、なんて心配していたけれど。次郎太刀の心配を、兄は瞬く間に吹き飛ばしてしまった。縁側で茶をたしなむこともあれば、小さな短刀達に纏わりつかれ現世の物品お弄っていたりする。鍛練場で勝負に興じている時はうっすら笑みさえ浮かべている。こうして物欲しそうに食べ物を見つめる姿なんて、天上に居るときには想像も付かなかったのに、今では全く違和感を感じなくなった。
だからこそ、兄が自分から離れていくようで、時々さみしくもあるのだが。
自分だってしょっちゅう他の奴らと酒盛りをしたり、兄の元を離れて好き勝手にしているというのに、やや我儘な感情を持っている自覚はある。それでも、自分たちは刀匠が違えども、生まれた順がちぐはぐでも、同じ大太刀として同じ主のもとに集ったが故の縁と絆で兄弟になった二人だ。兄弟が他の者と縁を結ぶことに、自分だけが知る兄の姿から少しずつ離れていくことに、ちょっとくらい嫉妬したっていいと思うのだ。
だから、次郎太刀はなるべく兄と二人の時間を作るようにしているし、その時間を大切にしている。

「ほぉ~ら。できたよ~」
用意した更に大根おろしを盛り、すだちを添え、焼き上がった秋刀魚を乗せる。秋の味覚の堂々たる様に次郎太刀も思わず顔がほころぶ。
と、その時。
『ぐぅ~~~♪』
「「????」」
盛大に腹の虫が鳴く音が響く。
それがお互いの腹から同時に発せられたものだと気づくのに数秒要した。どちらからともなく、笑いが漏れ、しばらく二人して笑いあった。
「っ、あはははは!参ったねぇ、・・・・まあいいか、冷めないうちに食べよ」
「・・・・ふふっ。そうですね」
太郎太刀が、少し恥ずかしそうに、次郎太刀に笑いかける。この表情だって、今見ているのは自分だけだ。
兄も自分も、この本丸で少しずつ変わっていくけれど、少しでも自分と兄だけの思い出を作っていきたいと思う。
「はい、一杯どうぞ」
「頂きましょう」

二人きりで食べた秋刀魚の味は格別で、1匹2匹では足りずに二人して厨房に忍び込もうとしているところを歌仙に見つかって怒られたのは、また別の話である。