ひさね
2023-05-24 00:08:55
2471文字
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タグでやったSSっぽいのの寄せ集め

リハビリみたいなもの。長さはバラバラ。視点を明記したり、ツイートのやつからちょっと文章足したり変えたりしたのもある。

(ある人視点)
 巡る巡る何が金木犀の香り死の匂い。甘ったるくて胸焼けがする腹が熱い喉が焼けるむせ返る。視界が回る、ピンクの象が見える。一体何が何故どうして。纏まらない纏まらない、が。
 ひたり、と青黒い軍靴が止まる。靴に絡みついた金色の線を辿る。自分と全く同じ銀髪が揺れた。
「詰まんない生き物」と嗤われた。暗転。

(ソウ視点)
 何故惹かれたのかと、よくある世間話の一環で、恋のきっかけを問われたとして。
 そこで、鶏を屠る悲哀と白い手に惹かれたとは。
「口が裂けても言えない、よなあ」と口の中で転がす。
 期待するような親友の真っ直ぐな目線が、酷く痛い。

(シオン視点)
 紙コップを3つ、横に並べる。そしてボールに1つ、コップを被せる。他と入れ替える。
「で、相手に当たりを選ばせる。古典的だな」
「スラムでもやってた?」
「誰でも出来るから良くやってたよ」
「なら話が早いね」
 つらつら話を滑らせながら、手元のカップを手早く入れ替える。相手はくるくる入れ替わる器には目もくれず、わたしをじっと見据えていた。
 もうタネは割れているのだろう。アテはついていたものの、予想以上に堂々と看破するものだから、ひたりと手を止める。
 一瞬の沈黙の後、口を開く。
「これの肝は外見が余り変わらない所だよね。だから中身が替わっても誰も気が付けない。そういうのを利用するのは、ままあることだと思うよ」
 それから、カップを順にひっくり返していく。
「つまんない皮肉を言うために手品を?」
「ま、そういうこと」
 コインだけが残ったテーブルを眺めながら、さて、と言葉を継ぐ。
「一応聞いとこっか。ボールの場所」
「右手の袖」「大正解」

(レノ視点)
 忘れるってこわいな、と思う。
 大事な日は覚えていても、何でもない日は殆ど覚えていなくて。そうやって何でもない日の沢山のボクが大事な思い出に埋もれて、忘れて、緩やかに死んでいく。
 それらを踏みつけて成り立つ今日のボクも、いつかボク自身の脳の底で死んでいく。誰にも見つけられないまま、ただ呻いている。
 それが、堪らなくこわい。
「生きるのは難しいねえ」
 写真の少年に呟いても、彼はぴくりとも動かなかった。

(マリィ視点)
……本当に戦略的なゲームが得意だね、全然勝てない」
「謙遜なさらないで、ソウさん。今までの勝率は大体五分五分ですよ」
 そう返せば彼はへなりと眉を下げた。
 お茶請け代わりにゲームでも、といつも誘っては、確りと相手をしてくれるので少々熱中しすぎてしまう。冷たくなった紅茶も飲み慣れた。
「でも、宝の持ち腐れですよ。平和な世には一番必要ないですから」
 盤上に散らばる、兵隊を模した駒を始めの場所に戻していく。嬉々として架空の戦略を描く幼いわたしを見つめる先生が、驚いて、ほんの少しだけ微妙な表情をしたのを忘れられない。
「もっと言えば不得意であるべきでしょうね。こういった事が得意なトップは誰かが手綱を握らなくてはなりませんから」
……大層な卑屈をなさる」
「本気ですよ」

(マコト視点)
 人生は不条理だ。求めれば与えられず、ただ憂き憂きと過ぎる時間をそういうものとして諦める他なかった。
 朝焼けの中、もう体の中身を全部吐露して、鈍い頭痛に眉をしかめていた。すると、ずっと隣に居たひとに手紙を1枚、ペーパーナイフと共に差し出される。
 見覚えのある封蝋。親愛なる師匠のものだった。宛名には最早誰にも知られてはいない、オレ自身の名字が綴られていた。
 封を開ければ、言葉があった。昔の自分には与えられなかった、その言葉だった。
 何もない今までに、漸く中身が注がれた気がした。
 また滲んだ視界の中、笑いがこみ上げる。
 何時だってそうだった。求めれば与えられず、ふと諦めた時、密かに与えられる。そういう人生だ。多分、そういう、不条理な奇跡で成り立つ人生だ。
「手紙、どーも」
 漸く、心から笑い飛ばせた。

(ミカ視点)
 与えられた側から取りこぼすなんてこと、よくあると思うの。手で掬った側から零れ落ちる水みたいに。
 与えられても上手く受け取ることができなくて、不意にしてしまうことがある。それが普通なんだと、わたしは思っている。いや、信じている。
「信じることが大事なんだよ」
 目を瞑ってでも言い聞かせないと、眠れそうにない。

(カキ視点)
 恋する人の横顔は美しい。誰かの持論にまんまと引っかかって、同じ土俵に立てないまま思いを重ねている。
「宙ぶらりんにして、誠意がないな。あの吸血鬼。言葉にすれば早いのに」
……始めからそうするつもりがないんだろう」
 そういうひとだと言えば、ケントは露骨に舌打ちをした。

(ニア視点)
 母はよく、「梅を見ると死にたくなる」と白い月とその花を眺めては嘆いていた。そうして自力で立つことすらままならないあたしの足を見やるのだ。
 そうして罪悪感に満ちた眼差しを浴びる度に、屹度国ごと全部、燃やしてやろうと考えた。
 もう済んだ、昔の話だよ。

(ハチ視点)
 昼下がり。じめついた路地をのろのろ進む。
 苔をなぞりながら昔の自分を考える。倫理を捨てて、複製される自我と無限のエネルギーと、その他諸々を無責任に作って。その末路の一つが自分だとすれば。
「中々風刺も面白いですね〜」
 目の前に開けた通りの石畳も燦々と輝く。じきに午睡の時間になるようだ。

(レクス視点)
「人の体貰ったこと後悔してる?」
 けばけばしいネオンを背景に、出し抜けに問われて閉口した。
「急に何を」
「や、何となく。こっちが勝手に決めたようなものだったからさ」
 やたらと感傷に染みた横顔に雨が吹き付ける。運命論者が何を、とは心に留めておく。
「まるで後悔してる口振りだ」
「はは。何を選んでも思う所はあるもんだよ」
「そういうものか」
 選択しないことも選択になるような世界で、その性状を抱えるとは何とも難儀だ。