軒先の風鈴の音を聴くと不思議と涼しげに感じる。音を聴きながら家を目指して歩いていた水木は、ふと向かいから妙齢の女性が歩いてくるのに気付いた。その女性と目が合うと「水木さん」と鈴のような声で呼ばれる。
「ええっと…」
「鬼太郎さんの同級生だった…」
「ああ!」
その言葉で記憶が蘇る。彼女は少女の頃の面影を確かに残していた。今は二十歳かそこらだろうか。なんと腕に赤ん坊を抱いている。そんな年月が経っていたとは。
「私の子です。良かったら抱いてください」
「幼い頃の鬼太郎を思い出す」
「今日は子供が生まれた報告を鬼太郎さんにしてきたのです」
彼女は幸せそうに笑う。暫く立ち話をしてから別れた。高揚感を抱えながら自宅へ帰ると、息子の鬼太郎が背中を向けて横になっている。その小さな背中は小学生の頃から変わっていない。
「具合でも悪いのか?」
「いいえ」
声ははっきりと否定した。道で会った女性を思い出す。
「途中であの子に会ったぞ。立派になって」
くいっと何かに服を引っ張られる。下を向くと目玉の親父が居た。
「鬼太郎は当時あの子に惚れていたんじゃよ」
「なるほど…鬼太郎は不貞腐れてるのか」
「ちょっとお父さん!!」
珍しく声を荒らげた鬼太郎に、父二人は笑い声を上げた。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.