映画館で食べるお菓子が割高であることなど知っている。だが、それは上映料金だけでは経営が心許ない映画館に対する投資だ。だからコンビニで買うペットボトルの方が高いと知っていながら、コーラを買う。そしてポップコーンを買うのだ。
いつも同じ味だと飽きるから、期間限定の味だとか甘いのだとかしょっぱいのだとか、たまに酸っぱいものになったりする。
期間限定のポップコーンの酸っぱさに、上映中にむせそうになりながら飲み物で喉を潤す。たまに聞こえてくる声を殺した咳き込む声に、きっと同じものを食べているんだろうと妙なシンパシーを感じたりする。
ロードムービーの主人公は、見ている方が羨ましくなる大雑把さで自分の車を扱う。依頼人に対して忠実な運転手とは言えない彼は、職務中に飲食をすることを躊躇わない。
ちょっと腹を満たそうとかいうレベルではない。
海外サイズの、映画館で売っているものよりもよほど大容量のポップコーンの袋をばりと開けて、運転席に座る膝の上に置き、ばりばり貪るのだ。そして油のついた手で、借り物の車のハンドルも握る。ずご、と音を立ててジュースも啜る。
その音がいいごまかしになるので、映画を上映している最中なのに、ポップコーンを食べる音があまり気にならなかった。口の中でそっとふやかして音が鳴らないようにしてから噛むという気遣いをしなくていい。
あのくらい大胆に生きたら、きっと気持ちがいいだろう。
物語の中の主人公に憧れる。ポップコーンの食べ方一つでだ。
それに倣って、私も少しは雑に大胆に生きてみたらいいのだろうか。
だが私は、映画の主人公のように生きることはできない。とことん向いていないらしい。痛感した。
なぜなら空のゴミを出口で回収された私は、油で汚れた手でスマホの画面にふれるのがいやで、ウェットティッシュが手元になかったからトイレに手を洗いに行くような、そんな人間なのだから。
きっとあの主人公ならばピザやフライドチキン食べたあとだって、構わずに指紋認証で画面のロックを解除しただろう。
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