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納豆
2021-08-09 14:08:23
2884文字
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眠りのかいなは巣穴
乱暴にドアが開く音がした。
どたどた兎角足を進めるためだけに動く音が続く。
最後の音は俺が振り返る前に、もすんっと背中にくっついて立てられる。
「ちょっとえっちなこと、しろ」
キッチンで盛り付けに勤しむ背中にぶつかる塊はそう呟いた。
肩越しに振り向けば、俺の王様が疲れた顔でこちらを見上げる。
三日ぶりに家に帰ってきたと思ったらこれだ。
思わず苦笑が浮かぶ。
ここの所、ダンデは急な案件が重なって篭りきりだった。
バトルタワーのシステム改修、委員会での次年度予算検討会、その他諸々溢れた案件を拾い集めれば全てダンデに集約される。
積み上がった業務量がやっとこさ落ち着いたのは今日の夕方のこと。
ようやく帰れると、よぼよぼした声の電話を受けたのが三十分前。
頑張って帰っておいでと笑う俺に、幼くもか細い声が、うんと答えていた。
可愛らしいお返事だ、そんな風に笑ってしまいながら風呂を準備し軽く食べられる食事をこさえた。
思い切り甘やかしてやる心算ではいたのだが、ちょっとってなんだ。
普段は、えっちなことをするとなれば、しこたまし通すのがダンデである。
中途半端は嫌なのだと、のしかかってくるくらいの勢いはある。
さて、どうしたのか。
思考を巡らせる間、ダンデの手が腹に回ってそのままするする上に向かう。
ぐわし、俺の胸を掴んだ無骨な掌に目を丸くした。
「ちょっと、えっちなこと、しろぉ」
「ん、ふふっ、なぁダンデ、それ擽ったい」
「んんんん」
ぐずるダンデはぐりぐり俺の背中に顔を押し付けて、胸筋をむにゅむにゅ揉む。
掌が不器用にわし掴む仕草は色気もない。
俺の筋肉も気持ちいいのだろうか。
ダンデの胸は力を抜いているとふわふわなので、俺はとても大好きだ。
散らかる思考に、早くと急かすダンデは呻く。
そんな様が可愛らしくて、どうにもいけない。
盛り付けた軽食を見下ろして、それから小さく息をした。
ま、ご飯は後で食べさせよ。
くすくす笑って俺はダンデの手を掴む。
胸から外させ、そのまま列車ごっこでもするみたいに握りしめたまま歩き出す。
ダンデは俺の背中に顔を押し付けたまま、無言でついてきた。
そうして辿り着く寝室、ダンデはぐりぐり俺の肩甲骨の間に顔を擦り付ける。
痛い痛い、けらけら笑いながらそっと手を引く。
ダンデは俺の横を抜ける。
俺の腕の動きに合わせてダンデはくるりと身を翻しベッドに背中から落ちて行く。
ぱっすんと沈むダンデの四肢、その上にゆったりと乗り上がった。
ダンデの髪をさらさら触っていれば、くすぐったそうに首を竦める仕草が愛らしい。
久々のダンデに嬉しくなって唇を寄せ付ける。
顔を傾ける俺にダンデはくすくす笑って受け止めてくれた。
「んぅ、たつくらい触るのは、なし?」
「うん」
「声出ちゃうのは?」
「
……
いい」
可愛い俺の王様、甘え方が随分と上手くなった。
ダンデの頰に口付けながら、よしよし、額にかかった髪をかきあげてまろい形のそこにも唇を寄せた。
ちゅっちゅっと繰り返すキスにダンデの顔中を愛でる。
疲れた目元も、少しかさついた頰も、ふるりと揺れるまつ毛の先まで吐息に唇にと触れて行く。
名前を呼びながら、体のラインを辿った。
ふっくら膨れる胸板から、きゅっと引き絞られた腰の辺りまで、大ぶりな俺の手はしっかり包む。
「ダンデ、ダンデ」
「あっぁう、あ、ふぁ」
体中を触って、名前を呼ぶ。
じんわり汗をかき始めてくれたらしい。
不規則な生活をすると、新陳代謝も悪くなる。
じわぁと頰に色が浮かび上がる。
上がるダンデの体温を唇に感じていた。
ダンデは弛緩したまま、はふりと息をつく。
少し眠りに落ちそうな気配にダンデを抱き包み、そのままぽすんっと横抱きに寝転んだ。
ダンデは抱き締めるに収めた俺に、むずがるよう顔を寄せてくる。
薄く開いた唇、歯を見せたダンデはかぷりと俺の唇を噛んだ。
せがむ仕草に目を細めて、ちゅうっと唇を吸えばダンデはもっとと腰を押し付ける。
くすくす笑って俺は額をこすりつけ、宥めるようダンデの腰を撫でた。
「どうしたの?」
いやに積極的だことで。
ダンデは俺の手先にぽやぁとしながら一つ頷く。
ほてほて蕩けた目尻にダンデはほとっと声を落とした。
「つか、れて」
「うん」
「キバナが足りなくて」
「そう」
「いっぱい、触ってほしくて」
「ふふっうん」
可愛いことを言う。
嬉しくてきゅっと抱き竦める俺に、ダンデはすりと胸元に顔を埋めてくる。
旋毛に唇を寄せて、こちらからも甘えつく。
ダンデは嬉しそうに目を細めてすり、すり、と胸元に頰を寄せる。
そっと視線を持ち上げてくる。
伏せた目元に答えれば、ダンデはふるりと瞬きする。
「でも、セックスする、元気なくて」
「ふ、ふは」
「だから、ちょっとって、いった」
幼い口ぶりは我儘にできていて可愛らしい。
別にセックスしなくても、いっぱいくっつけるのにと思う。
噴き出す俺に、ダンデは唇を尖らせる。
少し拗ねた顔つき、ぐりと腰を押し付けられる。
ダンデは少しだけ反応させた場所をぐりぐり押し付け、はふりと息を漏らしていた。
「
……
えっちなことは、したかった」
「やぁだなにそれぇ、かーわいい」
むらむらした感覚を持て余したダンデは人間の温度にできている。
くいっくいっと揺らした腰を撫でてやる。
鼻から抜けた声を漏らして、腰をくねらせたダンデは、けれど、今にも寝落ちてしまいそうだ。
うとりうとり微睡む様子に唇を重ね合わせる。
ダンデはゆったり瞬きしていた。
「眠い状態で、キミとセックスするのは、勿体ない」
「ふっは、勿体ないって」
随分と上等な扱いをしてくれているものだ。
ダンデはにんまりとして、俺の顎先にキスをした。
そうして上目を覗かせるのだった。
「俺、キバナとセックスするの好きだ。ふふっ、キミを沢山堪能できる」
「やめてぇ、手ぇ出しちゃいそうになる」
今はできないと言うから我慢してるのに、その気にさせるようなことを口にして。
ダンデのいじわる。
うぬぅと唸り顔をくしゃりと潰してしまう俺に、ダンデは楽しそうに声を転がした。
そろそろ寝てしまうのだろう。
とろとろぼやけた声音が注がれた。
「明日、起きたら手を出してくれ」
「生殺しじゃん」
「そうだな、キミは我慢のできるいい子だ」
うちゅぅと柔いキスに、宥められる。
むむっと眉を寄せてしまう。
けれど俺はいい子のキバナだ。
ダンデの可愛い微睡む顔に免じて我慢してやる。
溜息混じり、我儘を振るう可愛い人に俺は負けを認めた。
丸ごとくるりと抱き込んで、俺がダンデを囲う殻になる。
平穏とした場所、ここはお前の眠る場所。
ダンデの頭を撫でてやりながら、その瞼が落ち切るまでを見つめた。
「良い夢を、ダンデ」
返事はきっと眠りの底に沈んだのだろう。
曖昧な言葉をダンデの口から聞きながら、その意識が落ちる瞬間を見届ける。
くぅくぅと優しく響く寝息を聞く特権、それを噛み締めて小さく笑うのだった。
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